月刊経営情報雑誌「マスターズ（MASTERS）」（国際通信社）、「アンカー（ANCHOR）」（報道通信社）、「センチュリー（CENTURY）」（USPマネジメント）対談取材記事掲載の経営者が参加する国際通信社グループ運営の異業種ネット

島田　『多田工作所』さんのご創業は、いつですか。

多田　1975年に父が創業しました。以来、産業機械用の金属製品やフレームなどの熔接加工を請け負ってきたのです。私も学生のころから父を手伝い、楽しく一緒に働いていましたから、後継する意識が芽生えたのも自然な流れなのです。学業修了後に入社してからも父と共に現場に立っていましたが、意見の食い違いがきっかけで、他所で働くことになってしまいました。

島田　戻ってこられた理由とは？

多田　父が病に倒れたのです。それを機に当社に戻り、同時に後を継ぎました。ただ、それから最近まで、幾度となく父と事業方針について話し合いを重ねてきましたね。従来の方向性を貫きたいと望む父と、もっと事業を拡大したいと意気込む私との間では、経営方針に大きな隔たりがありましたから。それが、ここ数年で父も随分譲歩してくれるようになり、少しずつ私が理想とする形で事業を推し進められるようになったのです。

島田　社長のご成長ぶりをご覧になり、お父様もそろそろすべての判断を委ねていいだろうと思えるようになったのでしょう。

多田　「応援してやるから、好きなようにやれ」と言ってくれてから、父は私にとってとても心強い存在になりました。結果的に現在、新分野にも着手することで事業規模は徐々に大きくなっていますし、そのことを父に認めてもらえたことを何よりもうれしく思っています。

島田　ただ、事業規模を拡大するとなれば、苦労も伴うでしょう？

多田　おっしゃる通りです。値段と納期についてはいつも悩まされています。ただ、たとえ予算に見合わなくても未知の分野に挑戦することで技術力が磨かれていきますし、納期が厳しいからこそ、最善を尽くし無駄を省くことでその難題をクリアできると考えています。当社の従業員たちは、必ず期待に応えてくれますし、彼らがいるからこそ無理難題と思える依頼でもお請けできるのです。姉も妻も2トントラックを運転して配達業務を手伝ってくれていますし、子育てが忙しいながらも、とても頑張ってくれているのですよ。皆には感謝の気持ちでいっぱいですね。

島田　会社全体が心を一つにしておられることが社長のお言葉からひしひしと伝わってきます。最後に、今後に向けての抱負を。

多田　熔接に限定せず、塗装など他の技術やノウハウも備えていき、自社で加工工程を全て網羅できるようになることが理想です。そのためにも、工場の規模を拡大すると同時に、リーダーとなり得る人材、そして彼らに続く職人たちをしっかりと育成し、さらなる飛躍に向けての足固めを行っていきたいと思います。