2023年02月13日更新
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(有)マルテツ 対談取材記事

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逆境の中で得た鉄壁の信頼関係を礎とし、
故郷・宮城の復興に力を尽くす

有限会社 マルテツ

代表取締役 遠藤 昭彦

【異業種ネット】月刊経営情報誌『トップフォーラム(Top Forum)』特別取材企画 掲載記事─略歴

■迷った時こそ前に出る 常に挑戦するその姿勢が 成功を掴み取った要因

【異業種ネット】月刊経営情報誌『トップフォーラム(Top Forum)』特別取材企画 掲載記事─人ページ写真

個人事業主から有限会社へ──遠藤社長は、40歳の時に法人改組を決意した。40歳、いわゆる“厄入り”の年である。

普通は「厄年だから」とじっとやり過ごすだろう。だが社長は、敢えてその年に挑戦する道を選んだ。

「“厄”は“役”、“大厄”は“大役”。“役”が付くから頑張ろうと思ったんですよ(笑)」。

そして、あれから7年の月日が流れた今。当時の決断が間違いでなかったことは、現在の『マルテツ』と社長の姿を見れば明らかだ。

どんな時でも常に前を向き、勇気を持って行動する。そんな社長だからこそ、神は微笑んだのだろう。


東日本大震災からの復興を目指す宮城県。彼の地において、震災発生直後から復旧工事に奔走してきたのが、『マルテツ』だ。本業である鉄筋工事業のみならず、あらゆる分野で復興に尽力する同社を、本日はタレントの島崎俊郎氏が訪問。遠藤社長にお話を伺った。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『トップフォーラム(Top Forum)』特別取材企画 掲載記事─対談

島崎 東日本大震災発生から間もなく2年が経とうとしていますが、あの日、遠藤社長はどちらにおられたのですか。

遠藤 ここから5分ほど離れたところにあるお客様の会社で、同業の社長さんと電話で話していました。その方は塩竃市にいらっしゃったので、ここよりもわずかに揺れが早かったのでしょう。電話口で「揺れた! かなり大きいぞ!」と聞いた次の瞬間、私の居た場所も大きな揺れに襲われました。辺りを見回すと電柱が倒れそうなぐらいに揺れており、その光景を見て「まずい…」と思った私は、社員の安全を確認するために、すぐさま工場に戻ったのです。

島崎 社員の皆さんはご無事で?

遠藤 はい。幸いなことに、工場にいた社員はもちろん、海側の現場で仕事をしていたチームのメンバーも、全員が無事でした。震災発生から2日後、軽油車で社員全員の家を回り、実際に顔を合わせて無事を確認できた時は、心からホッとしましたね。

島崎 皆さんご無事で本当によかったですね! しかし、震災発生からしばらくの間は混乱が続いたことと思います。事業を再開するまでには、やはり時間がかかったのでしょうか。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『トップフォーラム(Top Forum)』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真

遠藤 いいえ。燃料不足で身動きが取れない同業者が多い中、幸いにも足を確保することができましたので、震災発生から3日後には、動ける人間だけを集めて復旧活動に参加しました。

島崎 震災の3日後からですか!?

遠藤 ラジオから流れてくる悪い情報を家でじっと聞いているだけでは、益々気持ちが落ち込んでいきます。それならば、皆でまとまって行動を起こしたほうが、自分たちのためにも、社会のためにもなるのではないかと考えたのです。そして、社員たちも私の考えに賛同してくれましたので、意を決して始動し、まずは仙台駅や道路などの後片付けと復旧に取りかかりました。交通インフラを整えなければ救援物資も届きませんからね。それから約1年間は、本業である鉄筋工事にこだわることなく、片付けと復旧工事に注力しました。

島崎 素晴らしい行動力ですね! 感動しました!

遠藤 また震災直後、建設業界では職人さんを解雇する会社が次々と現れたのですが、その中でも当社は職人を解雇するような真似は一切せず、給与もきちんと支払い続けました。すると、他所で解雇された職人さんが当社に集まってくるようになりまして。一時は1日100人ぐらいの体制で動くまでになったのですよ。

島崎 大変な状況の中でも情を示された御社の姿勢に、多くの職人さんが信頼を寄せたのでしょう。

遠藤 そして、多くの人が力を合わせて働いたことで、震災で後ろ向きになっていた職人たちの気持ちは前向きなものへと変わりました。現場の士気も日増しに高まり、気が付けば「次はあそこの現場に行きましょう」と言って、職人たちのほうから率先して動いてくれるようになっていたのですよ。

島崎 一致団結して復旧工事に取り組んだことで、皆さんの絆が深まったわけだ。

遠藤 それだけではありません。嬉しいことに、数々の現場の後片付けをする中で、何人もの方から「こんなに協力してもらったのだから、いずれ落ち着いたら必ず恩を返します」というお言葉を頂戴しまして。中には本業の鉄筋工事では接点のないような方々もいらっしゃいましたが、皆さん本当に仕事を依頼して下さり、その結果、仕事の幅はグンと広がりました。もちろん、それに比例して仕事量も増えましたよ。

島崎 心ある姿勢で復旧に尽くしてこられた御社ですから、お客様が信頼を寄せるのも当然のことだと思います。

遠藤 ありがとうございます。私たちは震災によってたくさんのものを失いました。しかし、その一方で得られたものもあると思うんです。それは、人と人とのつながり。私自身、震災以降は、表面ではなく心底からお付き合いできる人間関係を築けるようになりました。そうして逆境の中で得た人とのつながりは、かけがえのない財産だと思っています。

島崎 社長のお話を伺っていると、日本もまだまだ捨てたものじゃないと思えますね。それでは最後に、将来の展望を。

遠藤 当社は創業以来、“五大の提供(品質・納期・礼節・安全・安心)”という経営理念を掲げ、社員一同、地域社会に貢献すべく努力を重ねて参りました。今後もその理念を常に心がけ、実践することで、故郷・宮城の復興に寄与していく所存です。そして、今我々にできる仕事を着実に展開すると共に、次代を担う優秀な人材づくりにも力を注ぎ、地域社会の安心・安全を末永く支えていきたいと思います。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『トップフォーラム(Top Forum)』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真

育まれてきた技術を後世へと伝えるために

否応なく進行する、職人の高齢化。熟練の技を持つ職人たちが、自らの技を伝承することなく現場を去り続ける今の状況に、「日本から本物の職人がいなくなる」と危惧する人は少なくない。『マルテツ』の遠藤社長も、その中の一人だ。

だからこそ今、社長は若い人材の育成に力を注ぐ。積極的に若手を採用するのはもちろんのこと、若い職人は寮に住まわせ、一人前となるまで厳しく育てているのだという。その事実からも、「本気で人を育てなければならない」という社長の危機感が伝わってくるだろう。

長きにわたる時間の中で熟成を重ね、連綿と受け継がれてきた技術は、企業だけでなく社会全体にとってもかけがえのない財産である。その大切な財産を後世へと残していくために、社長は今後も全身全霊をもって人材育成に取り組む構えだ。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『トップフォーラム(Top Forum)』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真

▲取締役を務める奥様の玲子さんも交えての記念撮影

対談を終えて

「ご自身も東日本大震災の被災者でありながら、故郷の復興のためにすぐさま立ち上がった遠藤社長。どんな仕事も厭わず、鋼の肉体と精神で故郷のために奔走されたその姿は、まさに“鉄人”と呼ぶに相応しいと思います。復興までの道のりはまだまだ遠く険しいものでしょうが、社長には是非とも頑張っていただきたいです」(島崎 俊郎さん・談)

【異業種ネット】月刊経営情報誌『トップフォーラム(Top Forum)』特別取材企画 掲載記事─会社概要

名  称

有限会社 マルテツ

住  所

宮城県加美郡加美町字新木伏77-2

代表者名

代表取締役 遠藤 昭彦

掲載誌

トップフォーラム  2013年4月号

本記事の内容は、月刊経営情報誌『トップフォーラム』の取材に基づいています。本記事及び掲載企業に関する紹介記事の著作権は国際通信社グループに帰属し、記事、画像等の無断転載を固くお断りします。