2023年02月13日更新
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(株)ミルズカトウ 対談取材記事

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伝統的な製法と国産米でつくった
高品質の米粉を全国へ発信
新たな食文化の創造を目指す

株式会社 ミルズカトウ

代表取締役社長 加藤 芳男

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─略歴

【足跡】 三重県四日市市出身。学業修了後は食品メーカーに就職し、11年間勤務。そちらで、工場内の機械の修理といった設備関係の仕事に従事した。寒梅粉や餅粉、米粉などを製造していた父親に呼び戻されて家業に入る。1993年に法人化し、『ミルズカトウ』を設立。父親の後を受けて代表取締役社長の任に就いた。米粉が持つ可能性に迫り、和菓子だけでなく洋菓子、パン、その他の料理の原料として米粉を普及させるべく尽力している。


米粉、上用粉、寒梅粉、餅粉、かるかん粉などの製造及び販売を手掛ける『ミルズカトウ』。1948年、現・代表取締役社長である加藤芳男氏の父親・金男氏によって創業された老舗である。昔ながらの製法による和菓子用米粉、そして新方式の湿式気流粉砕による洋菓子用米粉を手掛けており、こだわりの和菓子、洋菓子店から絶大な支持を得ている。加藤社長にお話を伺った。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─対談

大西 『ミルズカトウ』さんのご創業はいつごろのことですか。

加藤 当社の前身となる会社は、1948年に私の父が創業しました。戦後の何もない時代に手に入る物と言えば米ぐらいで、またこの辺りは水が綺麗でしたので、父はそれらを生かして餅米からつくる寒梅粉を製造し、販売したのです。干菓子をご存じでしょう。あの原料となるのが寒梅粉なんですよ。そして次に、みたらし団子などの和菓子に使われる米粉の製造を開始。それから上用粉やかるかん粉なども手掛けるようになっていったんです。

大西 加藤社長は、学業を終えてすぐ家業に入られたので?

加藤 いえ。学業修了後は食品メーカーに勤め、そちらで工場機械の修理といった、設備関係の仕事に携わっていました。ところが11年経ったころ、父に呼び戻されましてね。家業に入り、93年に法人化すると同時に代表職に就任した次第です。

大西 同じ食品関係とは言え、ほとんど異業種。相当勉強なさったのでしょうね。

加藤 周りにも教わりながら、学びました。ただこれが、とても難しい。一番難しいのは水加減で、わずかでも水の量が違うと、全く違う粉が出来上がってしまうんです。当初は、経験が必要だと実感しましたね。それに自然のものですから品質も一定ではありませんし、毎年同じものはできません。1種類の米では製造できないので、品種を混ぜながら、前年より美味しい米粉をつくるよう励んでいます。また品質にこだわり、当社だけの米粉をつくるため、粉にする機械は昔から変わらず伝統の杵つき法を採用。これですと量産はできませんが、適度に異なる粒子がある良質の米粉ができるんです。

大西 それは素晴らしい。品質へのこだわりがうかがえます。米粉に使われる米は、我々が普段食べているものと同じなので?

加藤 和菓子用は全く同じ品種ですが、洋菓子用は契約栽培米の「タカナリ」という特殊な品種でパンなどをつくるのに適しています。その米は、新規需要米といって国の減反政策により減反の対象となった田でつくられたもの。大豆や小麦の代わりに米粉用の米をつくるならば、補助金も出されるんですね。当社でも地元の仲間を含め、三重県の5軒の農家さんの協力を得て米粉用米を契約栽培していますが、もう少し増やしたいですね。

大西 農家にとっても、減反対象の田を活用できるのは有り難いでしょう。

加藤 現在当社では、その三重県産の米粉だけを使い、気流粉砕で製造した「洋菓子米粉 稲穂ゴールド」や「洋菓子米粉 稲穂ミックス」などを販売しています。こちらのロールケーキやシフォンケーキ、それにマドレーヌは、当社の米粉を使ってつくったものなんです。大西さんも是非、お召し上がり下さい。

大西 嬉しい、いただきます! ……うん、柔らかくてしっとりしていて、とても美味しい。この、米粉パンと岩のり(写真上の段左端)の組み合わせも絶品ですね。現在は、こういったパンや洋菓子用米粉に力を入れられているのですか。

加藤 最近は米粉のロールケーキが流行っていますので、洋菓子店などにも卸すようになってきています。ですが昔の通り、もちろん和菓子に使う米粉も製造していますよ。実は十数年前に団子がブームになり、当時、巷では一気に団子が注目されて、デンプンなどを混ぜた粗悪な米粉が市場に出回ったんです。そして粗悪な米粉でつくられた団子は無論美味しくない。そういったこともあって、団子本来の美味しさを知る人が減ってきたように思うんです。だからこそ、当社の米粉を使って本物の米粉の美味しさが生きた団子の味を知ってほしいと伝えたいと思っています。また、米粉は菓子だけでなく、うどんやピザ、お好み焼き、餃子などにも使えますので、外食産業にも営業をかけているところです。ただ、既存のものと勝負しているようでは駄目なので、新たな食材としての普及を目指したいですね。

大西 まだ、米粉の利用価値を知る人もそれほど多くはないでしょうから、知名度が上がれば、さらに引き合いが出そうです。

加藤 最近では、石垣島のパン屋さんが当社のホームページをご覧になり注文下さって、定期的に納品させていただいております。「こういう米粉を探していた」と言っていただけた時は、本当に嬉しかったですね。また、小麦アレルギーを持つ方なども、たびたびご注文下さっていますので、当社をご愛顧下さるお客様から、その良さが徐々に浸透してくれれば、と考えています。

大西 一般に向けても販売されているのですね。

加藤 ええ。ホームベーカリー用の使い切りタイプなどもご用意し、ホームページにレシピを載せて、一般にも普及させたいと頑張っているんですよ。米粉でつくったパンは、出来たてももちろん美味しいですが、冷めてからも美味しいので、是非一度皆さんにも試していただきたいですね。調理する際、小麦粉よりも技術を要するのでなかなか難しいのですが(笑)。普及を目指して、JAさんの集まりに参加し、米粉料理教室などを開いたりもしています。

大西 健康志向が高まる昨今、ネイチャーメイドの食材として今後さらに注目を集めそう。陰ながら応援していますよ!

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真

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【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真

消防水利情報システムを開発し、社会貢献

▼『ミルズカトウ』で事業に邁進する加藤社長だが、家業以外でも意欲的に活動の場を広げている。家業に入る前には、食品メーカーにて工場機械などの設備関係の仕事に従事していたことからもうかがえるように、社長は電気機器に対する造詣がとても深い。それを如実に表すのが、昨年消防庁によって行われた「消防防災機器の開発等、消防防災科学論文及び原因調査事例に関する消防庁長官表彰」の式典に社長の姿があったことである。社長が開発したのは、あるカーナビシステム。それは、消防本部の所有する水利情報のデータベースを市販のカーナビに取り込むことで、正確かつ迅速に水利情報を表示できるというものであった。これにより、引越や転勤で移り住んだ消防団員なども、火災現場までのルート選定や消防水利の位置を短時間で検索することが可能に。操作や脱着も簡単で、車内でなくとも使用でき、安価な点でも優れものだ。今後も社長は、様々な分野で、意欲的にその才能を発揮してくれるに違いない。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真

対談を終えて

「『ミルズカトウ』を率いる加藤社長は、本当に多才な方。たとえば三重県で昨年『三重県子ども条例』が施行された際には、『子育ちサポーター』として活動に参加されたとか。子どもたちが、生き生きと育つ地域社会の形成を目指して励んでおられるとのことでした。地元を愛する社長の想いが感じられ、とても温かい気持ちになりましたよ。今後とも家業と共に頑張って下さいね」(大西 結花さん・談)

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─会社概要

名  称

株式会社 ミルズカトウ

住  所

三重県四日市市山分町580番地

代表者名

代表取締役社長 加藤 芳男

U R L

http://www.578m.com/

掲載誌

ザ・ヒューマン  2012年12月号

本記事の内容は、月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』の取材に基づいています。本記事及び掲載企業に関する紹介記事の著作権は国際通信社グループに帰属し、記事、画像等の無断転載を固くお断りします。