2023年02月13日更新
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(株)池田養豚場 対談取材記事

名刺
動画

エコフィードに注力し
地場企業との共存共栄につながる
新しい養豚業の確立を目指す

養豚事業・エコフィード事業

株式会社 池田養豚場

代表取締役 池田 徳幸

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─略歴

「私の挑戦は賛同者に支えられている。
だから皆さんと共存する道を探したいのです」

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─人ページ写真

穀物価格が高騰し、配合飼料の需給が逼迫する現状を打破できないか。

そんな想いを抱き、自身にできることを模索した池田社長。

改めて地域に目を向けると、有用な飼料資源が溢れていることに気づいた。

処分される運命にある資源が、活用法次第で新たな養豚業の確立の起爆剤となる。

ひらめきを実践し、試行錯誤の末に編み出したのが独自のエコフィードだ。

そんな若き養豚家の努力に共感した賛同者が一人、また一人と現れる。

自身の挑戦が賛同者に支えられている今、社長の目標は二つ。

地域循環型農業の確立、そして地域との「共存」だ。


【足跡】 佐賀県出身。養豚業を営む両親の姿を見て育つ。福岡の大学を卒業後は、IT業界で派遣スタッフとして働いていた。しかし、父親の怪我に伴い、2004年に帰郷して、家業を手伝うように。養豚業に面白みを見出し、家業に本腰を入れた。食品残渣などを飼料とするエコフィードに力を注ぎ、地場産業との相乗効果を得られる新しい養豚業の在り方を追求する若手経営者だ。


地元で操業する酒造メーカーやパン工場から食品残渣を譲り受けて飼料とする、エコフィードによる養豚業を手掛ける『池田養豚場』。地域循環型農業の一端を担う独自の取組みは確かな成果につながっており、良質の豚肉を生産する新しい養豚業の在り方としても注目を集めている。本日は、志垣太郎氏が同社二代目の池田社長にお話を伺った。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─対談

志垣 『池田養豚場』さんの歩みからお聞かせ下さい。

池田 40年ほど前、ミカン農家だった私の両親が養豚業に転身したのが当社の始まりです。ミカン相場が暴落したのを受け、近隣の数軒の農家が集まって新たに養豚を始めたものですから、今も私共の豚舎は段々畑にあるのですよ(笑)。そうして地域の方々と始めた事業でしたが、今でも養豚業を手掛けているのは私共だけ。両親は、豚舎を建て、汚水処理用の浄化槽をつくったりと環境を整えながら、少しずつ手を加えて現在の形を築いたようです。お陰様で今、私共では1000頭の豚を飼育できる態勢が整っています。

志垣 幼いころから、後継の意志はお持ちだったのですか。

池田 立ち上げ当初から苦労を重ねてきた両親は、私には別の仕事に就いてほしいと考えていましたので、以前は福岡でIT業界に身を置き、派遣スタッフとして働いていました。ところが、2004年に父が仕事中に怪我をして入院しまして。ちょうど派遣会社との契約更新時期というタイミングもあり、帰郷して養豚業を手伝うようになりました。その当時は、父が回復したらまた地元を離れるつもりでいたのですが、次第に養豚業に面白みを感じるようになり、家業に入ったのです。

志垣 養豚業そのものに魅了されたと共に、お父様が仕事に励まれる姿から感じるものがあったのでは?

池田 父は、自分には養豚業しかできないからと、高度経済成長期にも目移りせず敢えて養豚業をやり通し、その結果、確かな形を築いてきました。家業に入った当初は経営方針などで衝突したこともありましたが、その点はとても尊敬しています。その父は、実は2008年に他界しまして。体調不良を訴えて精密検査を受けたところ、肺癌であることが発覚したのですが、既に手遅れ。半年ほどの闘病の末、亡くなりました。日に日に弱っていく父を見るのはやるせないものでした。そのころから、父に代わって実務を担うようになったのです。

志垣 お父様はきっと、そんな社長を頼もしく感じておられたと思いますよ。一度、故郷を離れられたのもきっと、意味があったのでしょう。

池田 ITの仕事を通して得たノウハウはデータ管理などに生きており、異業種を経験したことは良かったと感じています。それ以上に、父が築いてきた養豚業を守っていきたいという気持ちや、この仕事の魅力を再認識することができましたね。

志垣 現在は、独自の取り組みに力を入れておられるそうですね。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真

池田 エコフィード──食品残渣を利用した肥育を行っています。現在の養豚業は主にアメリカから輸入された穀物(とうもろこし)で製造された配合飼料を使った、オートメーションシステムによる大規模経営化が主流になっているんですね。しかし私共では、規模の拡大を進めて、やみくもに豚の頭数を増やすのではなく、「飼料コストの見直し」と「付加価値」を重視することにしました。世界的な穀物市場の高騰により、配合飼料はコスト高になります。その割合を1%でもいいから抑えられないかと考えたことが、エコフィードを始めたきっかけ。近くのパン工場からパンくずや形の悪い製品などの食品残渣を譲ってもらい、試行錯誤の末、パンを乾燥させてパウダー状にし、飼料に活かすことにしました。豚の食いつきも良く、今では専用の加工機を導入してパンの粉と一般的な配合飼料をブレンドして与えています。また、近隣の酒造メーカーさんが焼酎かすの処分に困っておられたのですが、多量の水分を含む焼酎かすは堆肥への転用が難しいそうで、私共で飼料にできないか考えることに。焼酎かすを飼料として利用するのは一般的でなく、失敗するケースも多いため、周囲からは止められたのですが、一つずつ問題を解決していったのです。周囲の協力を得ることもでき、以前、浄化設備の設置でお世話になった佐賀県の電気機器メーカーさんには、オリジナル仕様のリキッドフィーディングシステムを開発していただきました。それによって、焼酎かすを液状飼料として与えることができるように。そうすることで肉のアミノ酸成分の数値が上がり、肉質の向上にもつながっています。まだまだ改善点は残っていますが、地域の方々と連携して、養豚業の新しい在り方が見えてきました。

志垣 食品残渣や焼酎かすの処理を助ける意味でも、意義のある取り組みですね。今後は、どのような展開をお考えですか。

池田 異業種に従事する地域の方々と協力して私たち独自のブランドを確立できればと考えています。一社では限界があっても、異業種が技術やノウハウを持ち寄れば、新しい商品を生み出せるでしょう。有田の豚を食べようと思ってもらえるような、地元の食として定着させられるような豚肉を目標としています。それを地元の方々に消費していただいて、地域経済を元気にできればいいですね。海外から安価な商品が入ってきていますが、品質では日本産が一番だとの自負を持って、国産に対する信頼を守っていきたい。海外との競争にも勝てる、価値ある食肉の提供を追求していきます。

志垣 すでに新しい養豚業の形を確立されている社長ですから、実現されるでしょう。頑張って下さい! 本日は、ありがとうございました。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真

▲液状飼料タンクをバックに、笑顔を見せる池田社長とスタッフの方々。

多くの賛同者を得る、独自のエコフィード

▼近隣企業から協力を得て、独自のエコフィードに挑戦している池田社長。養豚業に新風を吹き込む取り組みとして、注目されている。近隣の食品工場から出る食品残渣や規格外のため処分される農産物、酒造会社が処分に困る焼酎かすなどを飼料に活かすことで、肥育コストの削減を図ると共に、環境保全への貢献を試みてきたのだ。同時に養豚場で生じた豚の排泄物は良質の堆肥に転用でき、質の良い農産物を育てられるとあって、社長が今、目指しているのは、地域全体に相乗効果をもたらすような循環型農業の確立。そうして、地元で育まれた農産物を、地元住民で消費する──“地産地消”を図ることで地域経済も潤うだろう。地元企業と協力して、地域の「食」を支える体制の確立こそが、社長独自のエコフィードシステムの真骨頂とも言えよう。地元工場やリキッドフィーディングシステムの開発を手掛けた電機メーカー、飼料設計に協力した配合飼料工場など、多くの賛同者を得ており、社長の取り組みが地域社会から求められていることを物語る。さらに新たな取り組みも構想中という社長。その挑戦が、今後の養豚業界をどのように変えていくか。期待がかかる。

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対談を終えて

「ご両親は家業をご自身の代で終わらせるおつもりだったそうです。しかし、池田社長が帰郷したタイミングやきっかけ、その後の養豚業への取り組み方などを伺って、社長にとって養豚業は天職だと感じます。社長が実践されているエコフィードは、環境保全や資源の有効活用だけでなく、養豚業の国際的な競争力強化にもつながるでしょう。今後益々のご活躍が楽しみです」(志垣 太郎さん・談)

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─会社概要

名  称

株式会社 池田養豚場

住  所

【事務所】

佐賀県西松浦郡有田町岳乙3900

【農場】

佐賀県西松浦郡有田町上山谷乙4144-45

代表者名

代表取締役 池田 徳幸

U R L

http://www.ikeda-pig-farm.jp/

掲載誌

ザ・ヒューマン  2012年6月号

本記事の内容は、月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』の取材に基づいています。本記事及び掲載企業に関する紹介記事の著作権は国際通信社グループに帰属し、記事、画像等の無断転載を固くお断りします。