空室に悩む賃貸住宅に
リフォームで新たな命を吹き込む
「落ち込むのはその日だけ。翌日には次の一歩を踏み出します」
「たとえショックなことがあって落ち込んでも、翌日には次の一歩を踏み出すことが私のルールなんです」と語る『ジェイビー企画』の田中社長。
無論、社長はこれまで一企業を率いる立場として多くの苦難に遭遇してきている。
特に2008年はリーマンショックの影響を受けて、莫大な損害を受け、一時期は会社を閉鎖することも考えるほど落ち込んだのだそうだ。
それでも前向きに物事を考えることで新事業を立ち上げ、経営を再び軌道に乗せて見事会社を再生させたのだ。
落ち込んでも、次の日には一歩を踏み出す──社長の軌跡を知れば、その言葉に深い思いが込められていることを感じずにはいられないだろう。
一般住宅の新築・リフォームを請け負い、着実に実績を築いてきた『ジェイビー企画』。2008年には新たに賃貸住宅のリフォームも手掛けるようになり、現在はそちらを主体に業績を伸ばしているという。女性目線を活かした提案で顧客との間に篤い信頼関係を結ぶ田中社長に、俳優の志垣太郎氏がインタビューを行った。
縁あって住宅会社の営業職に転身し
女性社長として建築業界で独立
志垣 建築業界で女性社長というのは珍しいですね。一体、どんなきっかけがあったのですか。
田中 強い動機や志といったきっかけはありませんでした。語学専門学校を卒業後は一般企業に勤めたのですが、不思議な縁で住宅会社の営業職に転身することになったのです。そちらでの最初の仕事は、一般住宅におけるリフォームの飛び込み営業でした。
志垣 いきなり異業種の営業をされるとなると、ご苦労もあったのでは?
田中 まず知識がありませんから、必死で業界について勉強しました。そうして知識を深めると業績にもつながっていき、次第に仕事が面白いと感じるようになっていったのです。のちに新築住宅の営業も行うようになり、1997年に独立し『ジェイビー企画』を設立しました。
志垣 では、御社の業務内容を。
田中 一般住宅の新築・リフォームを手掛けています。私共でお客様のニーズを事細かに伺い、協力して下さっている地元の大工さんに施工をお願いしているのです。特に当社では「家族の健康と幸せを何よりも大切にしたい」という理念を掲げて家づくりに携わっており、無垢材を使用したり、壁を漆喰にしたりするなど自然素材をお薦めしています。また私は住宅ローンアドバイザーでもありますので、施工費用が家計の負担にならないようアドバイスも行っているんです。
志垣 女性社長ということもあって、お客様は相談しやすいでしょうね。お客様の立場に立った家づくりとサポートが、皆様から信頼される一因なのでしょう。
不退転の決意をもって
賃貸住宅のリフォーム事業に参入
田中 加えて、2008年から新事業として賃貸住宅のリフォーム業も行っているんです。実は、最近ではこちらの業務がメインとなりつつあるんですよ。
志垣 急成長を遂げている事業なのですね。一体どのようなお仕事なのか、具体的にお聞かせ下さい。
田中 賃貸住宅は空室があるとその維持費分がオーナー様の負担になります。特に築年数が経った物件は次の入居者がなかなか決まらないということも珍しくありません。そこで、入居者様のニーズに合致するように古い物件をリフォーム、リノベーションしませんか、とオーナー様にご提案しているのです。
志垣 しかし、リフォームにも資金は必要でしょう。次の入居者が決まらないうちから投資するのは、オーナー様にとってはリスクが高いように感じます。
田中 その通りです。そこで私共では、プロパティマネジメント会社『日本管理センター』さんと提携することにしました。こちらでは、リフォーム工事後は空室の有無にかかわらず毎月一定額以上の家賃を保障するというプランを設けているんですよ。
志垣 それならオーナー様も安心してリフォームできますね。
田中 しかし当初はうまくご説明することができず、毎日賃貸住宅のオーナー様のところに飛び込み営業をしたのですが、半年ほどは成果が出なかったんですよ。かつても営業職を務めていましたが、一般住宅の施主様とオーナー様では、やはり視点が異なることを痛感しましたね。ですから、オーナー様に向けた、分かりやすい説明を行おうと随分努力を重ねました。
志垣 では、最初に成約した時はさぞ嬉しかったでしょう。
田中 それはもう(笑)。4 室あるアパートのリフォームを1棟手掛けさせていただき、工事が終了してから内覧会を行いました。その時に他のオーナー様にも案内状を送らせてもらって、実際に数組の方が来て下さったのです。それから新たにご契約をいただけて、徐々に仕事が増えていきました。これまでリフォームを行った物件の入居率は97%を記録し、今では当社の収益全体の9割が賃貸住宅関連業務によるものとなっています。
志垣 良い仕事を成し遂げてチャンスをつかみ、次につなげられているのですね。ところで、なぜ新規事業を立ち上げようと考えられたのですか。
田中 2008年にリーマンショックが起こり、世界的な不況に陥ったことは記憶に新しいと思います。当社はその時、6棟のキャンセルを受けて莫大な損害を受けたのです。さすがに会社を畳まなければならないと思い詰めましたが、共に働く息子や従業員がおりますので、何とか踏ん張れないかと思いついたのがこの仕事だったのです。ですから、何が何でも成功させるとの気概で取り組みました。
志垣 苦境の中で生まれたアイデアだからこそ、成功につながったのでしょう。最後に、今後の抱負をお願いします。
田中 自社で賃貸住宅を持ち、運営してみたいですね。そして、いずれは息子に事業を引き継ぎ、末永く施主様・オーナー様のお力になれる企業として経営を続けてもらえればと思います。
▲ご子息の田中賢一取締役企画部長を交え、ゲストインタビュアーの志垣太郎氏と共に記念撮影
親身なサポート体制で賃貸住宅オーナーを全力でサポート
▼リーマンショックを境に、賃貸住宅のリフォーム業に参入した『ジェイビー企画』の田中社長。事業参入当初は物件のオーナーに対して、空室をなくすべく古い物件のリフォームを提案して回ったそうだ。その中で社長が感じたのは、「賃貸住宅のメインユーザーである若者とオーナー様との間には世代のギャップがある」ということだ。最近の部屋探しはインターネットで条件に合った物件だけを検索することも簡単にできるが、そのような業界のスタンダードを知らないオーナーが少なくなかった。そのため、まずはそうした面のフォローを行い、徐々にリフォーム案を打ち出していったそうだ。また、住宅ローンアドバイザーとしての実績も活かし、銀行との金利の交渉やローンの手続きも行っているそうで、収益が得られるようにオーナーを全力でバックアップ。このような親身なサポート体制が安心感と信頼を生み、口コミで評判が広がっていったのだ。「満室になって感謝していただいた時が一番嬉しい」と社長は仕事のやり甲斐を語ってくれた。そんなオーナーたちの声が聞きたくて、社長は今日も前を向いて歩き続ける。
「数年前には会社を畳もうかと思い詰めるほどの窮地に陥ったという田中社長。けれど、いつまでも立ち止まって悩むのではなく、すぐに気持ちを切り換えて新たな道に突き進まれた。その精神力には頭が下がる思いですね。その後は順調に売上げを伸ばしておられるそうで、さらなるご活躍が楽しみです!」(志垣 太郎さん・談)
名 称 |
有限会社 ジェイビー企画 |
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住 所 |
愛知県高浜市春日町5丁目170番地 ラビデンスS館203号 |
代表者名 |
代表取締役 田中 道代 |
U R L |
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掲載誌 |
リーダーズ・アイ 2012年5月号 |
本記事の内容は、月刊経営情報誌『リーダーズ・アイ』の取材に基づいています。本記事及び掲載企業に関する紹介記事の著作権は国際通信社グループに帰属し、記事、画像等の無断転載を固くお断りします。