親子代々の信頼と技術をもって
地域の自動車インフラを支える
公益社団法人 坂出青年会議所
自動車販売、および整備をメインに、自動車に関することはなんでも応える『宮川自動車機械工業所』。1947年に創業して以来、地域に密着した事業展開で自動車の安全を守っている。長年地域の自動車インフラを支えてきた宮川博氏、現在代表を務める崇氏、そして整備の現場を担う代表の弟・学氏と元紀氏──家族の結束の固さも、同社の強みである。
布川 まずは御社の沿革から。
宮川(崇) 1947年に私の祖父が当社を立ち上げました。明治生まれの祖父は頑固一徹の性格で仕事一筋。死ぬまで父に代表の座を譲らなかったそうです。
宮川(博) 私が家業を手伝うようになったのは1963年ごろ。早いもので、もう半世紀近くになるのですね。ただ、父も同じように長く現役で働いていたので、父が亡くなった時には私ももうよい歳だったんです(笑)。そのため父の後は2002年に入社した崇に引き継がせました。ですから、形式上は崇が二代目なのです。
布川 代表は後継を意識しておられたのですか。
宮川(崇) 正直に申し上げますと、物心ついた時から車が身近にありすぎて車に興味を持てなかったんです。男の子ならあこがれのスポーツカーも家の工場にありましたから、特別な意識もなくて。逆にまったく別の業種に興味を持っていた時期もありました。けれど学業修了後には、自然と後継を意識するように。家業に役立てようと、まずは損害保険会社の研修生となって、保険についてみっちり勉強しました。
布川 自動車整備には保険業務が欠かせないですものね。
宮川(崇) ええ。今では私が保険を担当しており、二人の弟が工場を担当してくれています。
布川 各々の得意分野を生かして役割分担されているのですね。お二人はずっと技術分野で活躍してこられたので?
宮川(元) 私は元自衛官でして、今でも有事の際に召集される即応予備自衛官なんです。昨年の東日本大震災の時に初めて召集され、宮城県の女川に派遣されました。
布川 そうでしたか。私も震災から数カ月後に被災地へ赴きました。東北は特に車社会ですから、生活の足を奪われた皆さんが困っていらっしゃいましたよ。
宮川(崇) 都市部以外では、やはり車は生活必需品ですからね。ここ香川でもそれは同じ。香川と言えば、うどん店が多いというイメージがあると思いますが、その倍以上に自動車関連の会社があるぐらいなんですよ。
布川 競合がそんなにたくさん!? そうした中、事業を継続してきた秘訣とは?
宮川(崇) 祖父や父らが培ってきた信頼のお陰だと思います。また、当社ならではのサービスを追求してきたことも大きいですね。
宮川(元) たとえば、最近ではディーラーを利用するカーオーナーが多いのですが、ディーラーは営業時間が決まっていることがほとんどです。しかし、車はいつ調子が悪くなるか分かりません。そんな時こそ、当社のような町工場を頼りにしてもらいたいですね。私の車には常に必要な機材を積んでおりますし、電話一本ですぐに対応できる態勢を整えております。こうしたフットワークの軽さも生かして差別化を図っているんです。
布川 それは頼もしいですね。ところで、車に長年携わっている御社ですが、その歩みと同様に、車の仕組みも変わってきているのではありませんか。
宮川(博) ええ。昔の車は構造がシンプルでしたが、今はコンピューターが内蔵されているので難しいですね。メーカーごとに仕様も異なりますから、設備を揃えるだけでも一苦労です。
宮川(学) そうした電気回路の部分は、ユニットごと交換して修理するんです。今後はハイブリッドカーや電気自動車も増えてくるので、さらに複雑になると思います。これからも日々勉強ですね。
布川 御社には優秀なご子息が三人もいらっしゃるので、今後も安泰ですね。
宮川(博) 息子が三人とも家業で頑張ってくれていることを、本当に幸せに感じています。今後の彼らの成長が楽しみでなりません。
布川 それでは最後に、お三方から今後の抱負をお聞かせ下さい。
宮川(学) 事業継続を目指し、私自身もここで働き続けたいです。
宮川(元) 新しい技術を習得しながらも、昔ながらの鈑金技術を次世代に引き継ぎたいですね。
宮川(崇) 安定した経営を実現すると共に、地域に貢献できる企業に成長させていきたい。それこそが、経営者としての責任だと思っています。
布川 これからも頑張って下さい。
▲左から3番目が代表のお母様の宮川愛子さん
自動車に乗る喜びを共有する仕事
『宮川自動車機械工業所』は、自動車保有率の高い香川にて、自動車にまつわる幅広い業務に対応している。自動車が日常の交通手段であればあるほど、自動車のトラブルは些細なことでも生活に支障をきたす。故障した自動車を持ち込む人の不安はいかばかりか。そうした不安をいち早く解消すべく、宮川博氏を筆頭に、現在代表を務める崇氏、さらに学氏と元紀氏は一丸となって整備に取り組む。整備を終えて自動車が動いた瞬間、周りの空気が一瞬にして明るくなるという。お客様を含めて皆が顔を見合わせて笑顔になる時、大きな喜びを感じると四人は声を揃える。そうして長年にわたり地域に密着しながら自動車の整備にあたってきた同社には、世代を超えて利用している顧客も多いのだとか。同地域にとって、自動車は欠かせないアイテムだけに、同社は地域社会の生活インフラを支えていると言っても過言ではない。
「不況の影響もあるのでしょうが、最近の若者は車の購買意欲が低いとか。さらに購買意欲の変化に限らずネットオークションを利用するなど、購入方法も変化してきています。同社はそうした動向にも柔軟に対応しておられました。それも代表の柔軟な姿勢と、先代が築いてきた実績があるからなのでしょう」(布川 敏和さん・談)
名 称 |
合資会社 宮川自動車機械工業所 |
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住 所 |
うどん県坂出市西庄町696 |
代表者名 |
代表者 宮川 崇 |
掲載誌 |
トップフォーラム 2012年5月号 |
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