2023年02月13日更新
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(株)マエカワ 対談取材記事

名刺
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人とのつながりを大切にしながら
特許取得につながる製品開発に臨む

株式会社 マエカワ

代表取締役 前川 哲二

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─略歴

「人とのつながりの中で多くを得ただけに、人情を大切にしたいのです」

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─人ページ写真

一人の人間としても、そして技術者としても、多くの人との出会いに恵まれ、諸先輩に見守ってもらえたから成長できた。だからこそ人情を忘れない経営方針を大切にしたいと、前川社長は語る。

合理化が進む現代にあって、それは時代に逆行する在り方かもしれない。しかし人の成長に焦点を当てるなら、昔ながらの手法を選ぶのが正しいと言う。なぜなら、人間は決して合理的な存在にはなりえないから。いくら時代が進んでも、時間と愛情をかけなければ人は育たないのだ。

ベテランと若手が向き合い、技術の研鑽に励む。それが、『マエカワ』のやり方だ。


【足跡】 横須賀生まれ、横浜育ち。製造業を営む父親を手伝った後、産業機械に使われる電気回路などの設計・開発・製造を手掛ける会社に転身し、現在につながる経験を積む。1988年に『マエカワ』を創業。大型船舶用の甲板機器関連の制御システムのスペシャリストとして活躍中。


1988年の創業以来、確かな技術力と柔軟性に富んだ発想力で企業の信頼に応えてきた『マエカワ』。現在は、主に甲板機械に使用される制御システムの開発・製造を手掛けている。船舶の安全な運行を支える部品だけにアフターケアも万全。顧客からの連絡には迅速な対応を採ることを徹底しており、要望があれば即日海外へも赴く。神奈川県を拠点にグローバルに活躍する同社を訪ねた。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─対談

布川 『マエカワ』さんは船舶関係の機械を扱っておられるとか。詳しく伺えますか。

前川 私どもが主に手掛けているのは、船をターミナルに繋留するための係船機をはじめとする電動ウインチ類や電装品、船舶部品といった甲板機械に使われる制御システムの設計・製造です。タンカーや自動車運搬船など大型の船舶に搭載されるものが大半ですから、一般の方には馴染みのない機械がほとんど。業界自体も限られた世界になるのですが、お陰様でお客様にかわいがっていただき、設立から20年以上が経つ今も順調に歩みを進めています。

布川 船舶機械の制御システムを得意分野とされているのですね。おっしゃるとおり特殊な分野ですが、どういったきっかけでこのお仕事を?

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真
▲イメージカラーの緑が映える美しい社屋

前川 もともと父が産業機械を扱う会社を立ち上げており、そちらで十数年働かせてもらったんです。その後転職した会社で、産業機械の電気回路の設計や製作、調整までをさせていただいたことから、電気制御の分野で独立しよう、と。それで当社を興したんです。最初から船舶関係の仕事を請け負っていたわけではないのですが、たまたま当社の技術者にその分野を得意とする者がいたことから、ウインチ類などの制御システムを受注するようになりました。社員や取引先の方々をはじめ、周囲との出会いやつながりから仕事の幅が広がってきたんです。

布川 人と人とのつながりを糧に成長されてきたのですね。お仕事をされる上で大変な部分とはどういったところでしょうか。

前川 急な海外出張が多いところでしょうか。例えば電話一本いただければ即日どこへでも──海外にもすぐ出向くのですよ。

布川 外国に、ですか。

前川 何しろ船や搭載している機器設備が動かなくなれば一時間単位で損益が発生します。ですから、些細なトラブルが大問題に発展しないよう迅速な対応を採ることが大切。そういった実情を知っているからこそ、私どもでも電話一本で海を越えることを厭わないのですよ。アジア圏やヨーロッパ圏をメインに、時には南米やアフリカ、北極圏へまで出向き、機器の調整やメンテナンスを行うんです。それが仕事と言ってしまえばそれまでなのですが、船内でも冷暖房の効かない場所での作業になりますので、現場を担当する社員は大変です。

布川 そうした不具合は現地の技術者では直せないものなんですね。

前川 この規模の電気回路になりますと専門的な知識が必要となりますから、やはり当社に声がかかる訳です。それだけに精神的にも肉体的にもハードながら、技術者もやり甲斐を感じられるのではないかと思っています。

布川 御社の誇る技術力が高く評価されている証だと感じます。

前川 メーカーとしては自社の技術力が評価されることが一番うれしいですし、特許につながる技術をどれだけ持っているかが顧客企業から評価される基準の一つとなる自覚もあります。ですから、今後も技術力の向上には特に力を入れていきたいと思っているんです。またそのために、中小企業だからこその連帯感を生かした人情味溢れる社風を維持することで、ベテランから若手へという技術伝承の仕組みを維持し、社内の技術力を向上させていきたいと考えているんですよ。古風な考え方かもしれませんが、人と人とのつながりの中でこそ会社の推進力となるべき連帯感が生まれると思っていますから。私自身が人情溢れる職場で育ててもらえたので、人間味を大切に、団結力を全員で持てる会社として、事業を継続していくことを目標としています。

布川 まさに、おっしゃるとおりだと思います。「この会社のために働きたい」という気持ちこそが、会社を支える何よりの宝でしょう。最後に、今後の展望をお聞かせください。

前川 『マエカワ』としては、小さいけれども業界でトップに立てる企業を目指し、特許を取得できるような仕事を目指したいと考えています。社員にもよく「小さなトップランナー」という言い方をするのですが、小粒でもピリリと辛い、技術力でキラリと光る企業になりたいですね。

布川 「小さなトップランナー」ですか。良い言葉ですね。

前川 規模にこだわるのではなく、手掛けた仕事の質にこだわりたいんです。また先ほども言いましたが、小さな会社だからこその人情味溢れる社風を忘れないようにもしたいですね。現在は息子が一緒に働いてくれており、後継者がいない同業者が多い中、本当に恵まれていると喜んでいます。彼も当社の財産は“人”と考えてくれており、頼もしい限り。これからも研鑽を積み、人を大切に育てる方針を堅持して会社を支えていってほしいと願っています。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真

「私どもを支えてくださる皆様のために さらに技術を磨くことで、お役に立ちたいのです」
(代表取締役 前川 哲二)

人を育てる社風が根づく企業

▼自動化・効率化が進む製造業界。その現場にあって、前川社長は、あえて人と人とが向き合う、“非効率”な人材教育に力を入れていると語った。

▼社長自身もかつて、大勢の先輩や取引先の人々に見守られ、技術者としての経験を積んできた。先輩たちが冷や冷やしながらも、良い経験になるからとあえて社長が失敗するまで口を出さなかったこともあったかもしれない。時にはまどろっこしい思いもしたであろうが、厳しさとやさしさ、保護と放任のバランスを図りながら、技術者として必要な経験を積ませてくれた周囲の存在を、社長はいつも感謝と共に思い出すという。「未来を切り開く技術者の魂を育てるのは、周囲の“人”に他ならない」。それを、身を以て知っているからこそ、あえて迂遠とも言える教育方法を採るのだ。

▼残念ながら厳しい経済状態の下では、機械による自動化・効率化に焦点が絞られ、利益に直結しない部分は合理化という名の下に軽んじられる傾向が強い。しかし、人を育てるには、血の通った人情が不可欠でもある。『マエカワ』が何より重んじるのは、その人情による人材育成。決して合理化では割り切れない人と人とのつながりの中にこそ、製造業の未来を握る鍵があるという信念がそこにはある。

対談を終えて

「多忙な業務に励まれる前川社長に息抜きを伺うと、プルーンの栽培という意外な答えが返ってきました。『ある人から生のプルーンをいただいて非常に美味しかったので、自分でも手掛けてみようと思った』とのこと。仕事を終えてから5時間かけて長野県の畑へ直行し、朝一番に食べごろになったプルーンの実を収穫。それをお世話になった方々に配るのが楽しみだそうです。社長の若々しい好奇心と、周囲の人への気配りが感じられるエピソードでした」(布川 敏和さん・談)

【異業種ネット】月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』特別取材企画 掲載記事─会社概要

名  称

株式会社 マエカワ

住  所

神奈川県横須賀市夏島町15番地3

代表者名

代表取締役 前川 哲二

U R L

http://www.elec-maekawa.co.jp/

掲載誌

ザ・ヒューマン  2011年11月号

本記事の内容は、月刊経営情報誌『ザ・ヒューマン』の取材に基づいています。本記事及び掲載企業に関する紹介記事の著作権は国際通信社グループに帰属し、記事、画像等の無断転載を固くお断りします。