先代から受け継いだものづくりに対する心意気で
取引先の望みを十全に叶える製品を生み出す
自動車部品や医療機器などの製造を手掛ける『クロキ工作所』。ハイクオリティーな製品には定評があり、納期、コストの悩みにも柔軟に対応できる体制が整っている。小規模な町工場ながらも、ものづくり企業として確かな存在感を放っているのだ。創始者である先代の遺志を受け継ぎ、実直にものづくり企業として歩みを進める同社を、竹原慎二氏が訪問した。
竹原 ご創業はいつですか。
黒木 1971年で、私がまだ中学生のころでした。タクシー運転手だった父が鉄工業へと転身し、3年間の修業を重ねた後に立ち上げたのです。そんな環境下で育ちましたから、自然と家業を継がなければという意識が芽生えるようになり、学業修了後、入社。出産と育児のため一時会社を離れましたが、89年に復帰し、05年に父が他界したことを受けて跡を継いだ次第です。
竹原 田仲部長も先代のころから勤めておられるのですか。
田仲 ええ。先代は私にとっての師匠で、弟子としてずっと傍で学ばせていただきました。亡くなられる時には「娘を支えてやってほしい」との言葉をかけられ、「現場は何があろうとも死守する」という心持ちでこれまで取り仕切ってきたのです。
黒木 父は厳格で一本気な人でしたが、とても優しい人柄で、社内外を問わず人望は篤かった。そんな父から跡を継ぐのは正直大きなプレッシャーがのしかかりましたが、田仲部長の存在が大きな支えとなってくれましたね。
竹原 事業内容についてお願いします。
黒木 自動車部品や医療機器など、すべて合わせると2千種類もの製品を製作しています。先代のころに比べると、コンピュータ化が急速に進みましたから、その都度設備投資を行い、時代のニーズに対応できるようにしてきたのです。
竹原 中には難解な依頼もあるのでは?
田仲 そうですね。未知の分野のものもありますが、いつでも挑む姿勢を大切にし、目の前の課題を一つひとつクリアしてきたのです。その結果、会社としても確実にレベルアップしてこられましたし、それに伴いスタッフも増員することができました。
竹原 クオリティーを求められる現場ですから、人材育成も非常に重要でしょう?
田仲 育成については、特に重要視していますが、皆意欲的に現場に臨んでいますし、確実に腕を上げてくれているんです。現在在籍しているスタッフは先代が他界してから入社した者が9割を占めており、私自身、彼らに先代の遺志を伝えていくことこそが使命だと考えています。
竹原 最後に、今後の意気込みを。
田仲 短納期や高難度なものづくり、コストダウンなど、何か困ったことがあった時に「『クロキ工作所』にお願いしてみよう」と頼りにしてもらいたい。そのためにも、あらゆるニーズにお応えできるよう万全の体制を構築していきたいと思います。
黒木 小さな町工場ではありますが、志は大きく、人様のお役に立てる存在であり続けたいですね。現在、製造業にとっては厳しい時代ではありますが、知恵を絞り、スタッフたちと一丸となって取り組んでいく所存です。
▲シビアな現場ながらも確かなものづくりで『クロキ工作所』を支えるスタッフの皆さんとの記念の一枚
「対談中、黒木社長と田仲部長のお二人とも、終始朗らかな表情でお話を聞かせてくださいました。ただ、時折見せるシビアな視線に、事業に対する一本筋の通った心意気が感じ取れましたね。それこそが、まさに先代から受け継がれた何よりの財産なのでしょう。これからも大切に守り継いでいってください」(竹原 慎二さん・談)
名 称 |
有限会社 クロキ工作所 |
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住 所 |
広島県東広島市黒瀬町南方122番地5 |
代表者名 |
代表取締役 黒木 泰子 |
掲載誌 |
ザ・ヒューマン 2011年8月号 |
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