竹原 櫛部社長は畜産業界一筋でいらっしゃるのですか。
櫛部 はい。高校卒業後に上京し、農業者大学校に進みました。現在は独立行政法人ですが、もともと農林水産省(当時は農林省)が設立した学校で、農業者育成のための唯一の国立教育機関だったんです。設立目的は、農業従事者のリーダーを育てること。私はこの学校で農業を専門的かつ体系的に学びました。こちらでは、自然・社会・文化など幅広い分野の講師の方々から興味深いお話を伺い、研修やホームステイなどで実地経験を積みます。私は畜産に興味を持っており、畜産農場にお世話になりました。
竹原 そんな学校があるのですね。畜産に興味を持たれたきっかけは?
櫛部 実は家業が畜産業を営んでいたんです。両親はもともと養豚関連の仕事に従事しておりました。私が生まれた頃から両親は数頭の牛を育てるようになり、中学生の頃から本格的に事業を進めたんです。私もそんな環境の中で、いずれは牛を育てたいと思うようになり、進路を畜産に定めました。
竹原 なるほど。計画通りに歩んでこられたのですね。こちら、「櫛部畜産」さんはいつ頃設立されたんですか。
櫛部 2003年です。まだ記憶に鮮明に残っていらっしゃる方も多いかと思いますが、BSE問題が日本全国を騒然とさせていた頃のことです。それまで食肉業界の内部は、消費者を含めて業界関係者以外の人からは見えにくい状態でした。そんな状況を打開し、もっとクリアに見せていきたいと考えて設立したのがこの「櫛部畜産」だったんです。業界全体の信頼回復に少しでも貢献したいと思い、その実現のためには、公明正大さが大切だと考えたからです。やはり対外的な信用を得るためには法人組織として活動した方がいいと判断しました。
竹原 こちらでは現在、何頭ほどの牛を育てていらっしゃるのでしょう。
櫛部 およそ150頭ですね。当社は、畜産農家としては小規模な方です。協力業者を含め、グループ全体の飼育頭数では500頭程度ですね。以前は愛媛県内のみでしたが、現在は全国に出荷しています。
竹原 新たなブランドを立ち上げられたと伺っているのですが、そちらについて詳しくお聞かせ下さい。
櫛部 ここ西条市には、“四国の尾根”と呼ばれる西日本最高峰の「石鎚山」という山があります。そこから名前をいただいて、「いしづち牛」というブランドを立ち上げました。スタートからまだ2年ほどですので、頭数も少なく、これから積極的に展開していこうという段階なんです。自家生産粗飼料と地元稲ワラを中心とした、配合にこだわった飼料で育てています。安全で、肉はもちろんのこと、脂肪までうまみがたっぷり凝縮されている牛肉なんですよ。
竹原 一般的に、霜降り肉って美味しそうに見えますよね。やっぱりお肉は高いものほど美味しいのでしょうか。
櫛部 もちろん霜降り肉は誰が食べても美味しいと言うでしょう。でも実は、値段と美味しさは必ずしも等しいとは言えないんです。あまり見栄えしないお肉であっても、中には味の良い、美味しいお肉があるんですよ。当社が「いしづち牛」に一番力を入れているのは、安全で安心して美味しく食べられること。実際に味わってから評価していただきたい、こだわりの牛肉なんです。
竹原 なるほど。では、今後の展望を。
櫛部 「いしづち牛」の普及に努めたいですね。見た目ではなく、本当に美味しい牛肉を可能な限りリーズナブルに提供していく──それが私どもの願いです。同時に、消費者の皆さんには肉を見極める確かな目を養っていただくことも必要。プロとして、情報発信したいですね。 |