
病院に駆け込む前に、ちょっと待って!
“コンビニ受診”を減らすのは、我々の理解
以前から医師たちが危機的状況を訴えてきた我が国の医療現場。過剰勤務を強いられ激務に耐えかねての自殺、余暇・休日の確保が難しい中で体力の限界まで働き、溜まった疲労が医療事故を引き起こしてしまうのではないかという不安──。一つでも多くの命を救いたいという医師の使命感に甘んじるように、我が国は医療体制を手薄なままに放置してきた。医療崩壊という言葉が頻繁に使われる現在、その医療崩壊の一因と言われているのが、“コンビニ受診”だ。“コンビニ受診”──つまりコンビニを利用するような気軽さで、ちょっとした怪我や不調を訴えて、救命救急を利用することを指す。この“コンビニ受診”を減らすことが医師らの負担軽減になると考え、地方自治体が様々な取り組みを行っている。
兵庫県伊丹市では、「いたみ健康・医療相談ダイヤル24」を2008年7月に開始した。これは、健康状況の悩みや不意の怪我の応急手当、夜間・休日の医療機関の案内、乳児の突然の発熱などに関する相談を24時間受け付け、常駐する医師や保健師、看護師がアドバイスするサービスで、市民は通話料無料で利用できる。2008年7月〜2009年6月までの相談件数は延べ18,342件にのぼった。相談内容別に見てみると「気になる身体の症状についての相談」が最も多い約40%を、相談対象者別では「幼児」が最も多い約25%を占める。伊丹市消防局には「夜間や休日に受診できる病院はどこか」といった不急の内容が消防局に寄せられることが多く、緊急性の低い電話への応対業務に追われる点が問題視されていたが、そうしたが電話が3割減るなど、効果が現れた。
山形県では、2006年の1年間に県立救命救急センターに運び込まれた患者は1万8803人。そのうち命に関わる重症者は、わずか6%だった。そんな状況を危惧し、同県では開業医による時間外の診療体制を整えてきた。県内の医師会すべてで休日診療・当番医体制を採り、山形市・米沢市の医師会では平日夜間に軽傷者を対象とした救急診療所を開設している。しかし、患者は設備と医師の充実した病院に「安心」を求め、駆け込む。山形県の病院では、著しく軽症の患者を対象に時間外診療加算金の徴収に踏み切るなどの対策も打ち出した。結果、1割ほどの減少が見られるが、医療は住民サービスであるとの観点から言えば、時間外加算金の徴収は避けたいところだ。時間外診療所や夜間・休日診療を設置したとしても、患者の病院志向を変えなければ、現状は打開できないだろう。
そんな病院志向を踏まえ、“コンビニ受診”の軽減に一役買えればとJR立川駅構内に開業したのが“エキナカクリニック”の「ナビタスクリニック立川」だ。その言葉から推測できる通り、“駅の中にあるクリニック”で、立川駅から徒歩0分、日本初の“エキナカクリニック”。「仕事や学校帰りに立ち寄りやすい病院です」──まさにコンビニへ行く気軽さで来院して下さいと謳う同クリニックは、“コンビニ受診”を歓迎するどころか、“そのために開業した”。平日は21時まで診療を受け付けており、患者の約90%は学校や会社帰り。18時台が最も混み合うという。内科と小児科には常勤医師がいるため、子供を持ちながら働く親には特に心強い存在となっているようだ。内科・小児科・皮膚科・女性内科といった診療科目、そして血液検査やレントゲン、超音波での緊急検査にも対応するなど設備も充実しているとあって、一日当たりの患者数は約130人。エキナカ商業空間「エキュート」内にあるため診療の待ち時間もカフェや買い物をして待つもよし。診療時間が近づくと携帯電話に連絡が入るという、まさに“ぶらり”感覚で気軽に来院できるクリニックだ。
軽症患者を請け負い、世の“コンビニ受診”を減らすために医療従事者の側からも医療を変えていく、そうしたスタンスがこれらの取り組みから見て取れる。“コンビニ受診”が119番の機能を崩壊させる──救急医療の安易な利用を減らさなければならない。それを実現するのは、他でもない我々だ。