
村野 早元所長が社会に出られて最初に就いたお仕事は何ですか。
早元 父の勧めもあり、大学卒業後に刑務官になるための試験を受け、合格。看守として働くことが決まり、1984年1月10日に勤務初日を迎えました。
村野 失礼ですが、少々怖いお仕事というイメージがありますね。
早元 ええ、実際に初っぱなから忘れられない出来事がありましたよ(苦笑)。早朝5時半、まだ薄暗い寒空の下で職場の近くに差しかかると一人の初老男性が自転車で通り過ぎたと思ったら止まっていきなり「貴様!」と一喝するんです。訳が分からずポカンとしていると、その方が「上官に欠礼するとは何事だ!」と仰り、さらに「このことを貴様の上官に伝えろ!」と怒鳴って去っていきました。言われた通り報告すると、上司は慌てて役職者を集め、皆でその方の元へ謝りに行ったのですよ。その方は、刑務所内でも非常に高い地位の人だったんです。初日でさえルールを知らなければ怒られる世界でした(笑)。
村野 軍隊のようですね。
早元 まさにその通り。そのとき上司は「上官が『カラスは黄色い』と言えば、そうなんだ」と(苦笑)。しかしその後はきちんと挨拶すればその方も元気良く返してくれるようになったんです。そうして初めのうちは怒鳴られながら仕事を覚えていきましたよ。6年半にわたって勤務しましたが、夜勤続きの生活で妻に迷惑をかけ、私自身も精神的に限界を迎えたこともあって退職。次は阪神高速のグループ会社に入社し、総務部で労務管理に携わったんです。
村野 ほう。その後はどのように進んで来られたのでしょう。
早元 「刑務官出身なら法律に詳しいだろう」ということで、本来ならば部長クラスの業務であろう労災の死亡事故の遺族補償年金の申請業務を、入社していきなり担当することになりました。認定が下りなければ遺族の方々には年金が入らない。誰かの今後の人生を左右する業務でしたからものすごくプレッシャーを感じましたよ。申請先の労働基準監督署の職員さんからも、「新人で、しかも若いあなたにできるのか」と冷ややかに言われ、労災の意味もよく知らず元々自信がなかった私は遺族である奥さんに陳謝し「私は入社間もないので、大きな仕事はできない。あなたから私の上司に直訴してほしい」と言いました。しかし奥さんは「あなたに頼みたい」と涙ながらに訴えて下さいましてね。そうまで言われたら辞退するわけにもいかず、何とか頑張ってみることにしたんです。
村野 その奥さんは所長が信頼に足る人だと見抜かれたのでしょうね。うまく処理できたのですか。
早元 何度も監督署へ足を運ぶうちに担当の方と密にお話しする機会を得、様々な話をする中で私が過去に刑務官をしていた話などもするようになったのです。信条や思いをも話せる間柄になったころ、ずっと冷ややかだった担当さんの態度が徐々に変わりはじめたんです。私の頑張りを認めて下さり、ついに申請を認定してもらうことができました。
村野 やりましたね!
早元 その担当さんはとても温かい方でね。「死亡事故は社労士でも難しいのに、よく頑張ったな」と言って下さったんですよ。そして社会保険労務士の資格を取ることを私に勧めて下さいました。
村野 なるほど。そしてこちらを始められたと。では、具体的な業務内容をお聞かせ下さい。
早元 個人の年金や保険に関するご相談をはじめ、法人の法務及び労務の面でお手伝いさせていただいています。国から企業に支払われる助成金の申請などもそうですね。例えば障害者など、社会的ハンディを背負った人員を企業が雇用した場合、国から助成金が出るのをご存じでしょうか。そういったものは数種類あり、ときにはその存在を知らない企業もあるんですよ。以前勤めていた阪神高速のグループ会社では、約100人の高齢者を雇用していたため、「高齢者多数雇用奨励金」を申請していました。これは1人につき月3万円の助成金が国から企業へと支払われる制度で、100人ですと年間で3,600万円の助成金が下ります。そういった制度の申請代行などを行うために我々社労士がいるんですよ。現在、ホームページでも無料で相談と診断を行っていますので、「そういった申請はややこしい」、または「全然分からない」という企業の皆様に是非ご利用いただきたいですね。
村野 所長の場合、これまでに経験されたことが存分に活かせているのでしょうね! 知識だけあっても結果につながるわけではないお仕事なのでしょう。
早元 刑務官時代に培った「クソ度胸」も大変役立っていますよ(笑)。お困りの方がおられましたらとにかく一度ご相談いただきたい。今後は法人のお客様もどんどん増やしていければ幸いです。

▼早元所長には障害を持つご子息がいる。年金や保険、そして現在手掛けているのは障害年金の認定を得ることだという。所長としては、同じ境遇にいる親御さんたちからの要請や社会的弱者の悩みを放っておくことなどできない。決して思いやりを欠いてはできないこの仕事は、困っている人々の思いに寄り添える所長にとってまさに天職と言えるだろう。最近では、認定を得るのが難しいとされる障害基礎年金1級の認定に成功した所長。依頼者の喜びはさぞかし大きなものであったに違いないし、所長の類い希な手腕が窺えるエピソードだ。
▼知識だけでは解決できない問題が多い社労士の仕事においては実務経験がものを言う。国の各機関と何度も関わるうちに、知識としては語られない“要領”──言い換えるなら、どんな難問にも立ち向かえる術を得る。それは何より優れた“実績”。そしてそこにはいつでも、自分の持てる力を発揮して「世の中の困っている人の役に立ちたい」という所長の強い想いが溢れている。