羽田 こちらは長年地域の人々から愛され続けているお店だと伺いました。オープンされてどれぐらいになるのですか。
中野 17年目を迎えます。創業者である前オーナーは福井の飲食業界では知らない人はいないというほどの有名人で、カフェバーなど外食産業のトレンドをいち早く福井に取り入れてきたパイオニアなんですよ。私は高校卒業後、料理学校を経てこのお店に入り、5年ほど前に前オーナーから店を引き継ぐとともに、『エヌアンドエヌ』を新たに立ち上げました。
羽田 お店のスタイルは前オーナー時代と変わっていないのでしょうか。
中野 ええ。カウンターに並べた食材の中からお客様自身にネタを選んで頂き、七輪や囲炉裏端で焼いて食べてもらうスタイルは創業以来変わっていません。
羽田 自分で食材を選んで焼くと、完成した状態で出てくるお料理とはまた違った美味しさがありますよね。それに何より、目の前に素材が並んでいると見ているだけでワクワクします!
中野 そう言って頂けると嬉しいですね。ただ、食材を並べる店側からすると大変です(笑)。特に、当店では素材は全て生の状態で並べていますので、ごまかしは利きません。それにお客様は舌だけでなく目も肥えておられるので、常に最高の食材をご用意できるよう最善を尽くしています。
羽田 そのこだわりが人々から支持を集める要因なのでしょう。お客様をお迎えする上では、どういったことを大切に?
中野 この辺りは人口の割に飲食店が多く、競争がとても激しいんですね。そんな中、お客様が当店のドアを開けて下さるというのは言わば奇跡だと思うんです。特に飲食店は待ちの商売でお客様が来て下さらないことには何も始まらないですし、だからこそ一つひとつの出会いを奇跡だと思って大切にし、精一杯の心を込めたお料理・サービスを提供していきたいと思っています。
羽田 なるほど。では、社長にとってこのお仕事のやり甲斐とは?
中野 月並みですが、やはりお客様から「美味しかったよ」「ありがとう」などのお言葉を戴いたときが最もやり甲斐を感じる瞬間です。仕事は決して楽しいことばかりではありませんが、それでもお客様の笑顔やそういったお言葉を聞くと、その苦労も一気に吹き飛びますね。
羽田 それでは最後に、将来の展望を。
中野 今後1年以内に新店舗を立ち上げたいと考えています。そしてこれからも人との出会いを大切にしながら、人の輪を広げていきたいですね。
▼「料理人が育たない」と言われるほど豊富な食材に恵まれている福井県。『織々屋』ではそんな食材を存分に生かした料理を楽しむことができる。中でもオススメなのがお刺身。福井の中央市場の中でも「良い魚しか扱わない」ことで有名な“頑固親父”の店から仕入れた魚は鮮度抜群。「本当に良い物しか卸してくれないので、全く魚が入らないこともあるのですが」と中野社長は笑うが、そこからも魚へのこだわりが窺える。だからこそ、メニューに見つけたときには是非注文してみてほしい。