佐藤 「広瀬青果」さんでは、どんな野菜を作っていらっしゃるのでしょうか。
広瀬 私共では、玉葱やブロッコリー、キャベツ、白菜などを、有機肥料を使った循環型農業で作っています。またトレーサビリティの観点から“顔が見える”ことを大切にしているため、直販や契約栽培のみを行い、私共も自分が作ったものがどこにいくかをしっかりと把握し、説明できるようにしているのですよ。例えばキャベツや白菜は加工向けに大量生産しておりまして、そのほとんどを契約している大手チェーンを中心とした飲食店へ卸しています。
佐藤 昨今は、食の安全性に対する消費者の意識は高いですから、強い信念をお持ちの農家さんの存在は頼もしいです。
広瀬 ただ、ここ淡路島は玉葱の産地として全国的にも有名ですが、人手不足や高齢化など、農業を取り巻く問題は多く、農家さんに元気がない。そんな地域の農業を守り立てるため、「ひょうご安心ブランド」の“養宜(ようぎ)玉葱”が誕生したのです。こちらは百貨店やスーパーマーケットに卸しています。傷があるものはドレッシングやフライドオニオンに加工。佐藤さん、実は私共では「玉葱ゴミで玉葱を作っている」んですよ。
佐藤 どういうことでしょうか。
広瀬 玉葱を加工する際に発生したゴミを堆肥にして利用しているのです。日本でも私共だけではないでしょうか。そうした循環型農業は、地元の小学生たちにエコやリサイクルの学習素材として役立てています。2011年以降は植え付けや収穫などの体験型学習も受け入れる予定なのですよ。また先に申しました人材不足や高齢化によって土地が廃れてしまうのはもったいない。私共ではそれを防ぐための取り組みにも力を入れています。
佐藤 そちらも詳しくお聞かせ下さい。
広瀬 近隣の農家さんから空いている畑を借りて玉葱を作るなど、可能な限り活用できるように気を配っています。また農家のお年寄りは知識やノウハウが豊富で、学ぶことが多い。しかし収穫は肉体的負担がかかるため、私共で収穫作業を請け負っているのですよ。「あと3年ぐらいなら農業ができるかな」とおっしゃる農家さんの負担をできるだけ軽減し、5年、10年とノウハウを活かしていただきたい──地元の皆さんと笑顔で元気に毎日を過ごしたいですからね。
佐藤 なるほど。広大な農地を管理しておられるわけですが、現在、何名体制で?
広瀬 私の他に両親と、男性スタッフが3名、そして中国からの研修生が6名おります。みんなが一生懸命頑張ってくれるからこそ「広瀬青果」は成り立っているんだと、日々感謝ですね。私はスタッフの頑張りをきちんと評価できるように体制を整え、みんなとコミュニケーションを図り、目標を共有して頑張れるよう環境づくりに力を入れているのですよ。
佐藤 人材の育成はやはり大切ですね。
広瀬 はい。私の農業への想いや、今取り組んでいることをどれだけ理解してもらえるかが大事だと思っています。大きなことはできないかもしれませんが、日本の食糧の一部分を私共のグループで支えていけるように頑張ろうと、スタッフたちと心を一つにしています。将来は日本一の農家になりたいですね。
佐藤 日本一の農家、ですか。
広瀬 はい。実は私は学生時代、陸上競技をしていましてね。周囲の方々のサポートのおかげで、日本一になることができたのです。ですから次は、人とのつながりを大切にしながら、農業の分野で日本一を目指したいのですよ。淡路島でビジネスの基盤が固まったら、北海道や九州など別の土地でも挑戦したいと考えています。それは、お得意様に「広瀬が作った物なら一年中ほしい」と言っていただける質の良い物を、年間通して安定供給できるような体制を整えたいから。農業は工夫次第でビジネスとして成り立つもの。私自身が成功例を作り、そのモデルを全国に広められたら嬉しいです。