大西 早速ですが、御社の沿革から伺います。
堀内 当社は、土木建設業を手掛ける会社として、私の父親でもあります先代が1991年に創設しました。2008年に代替わりをしまして、現在経営に携わっております。事業内容としては、土木工事を中心に舗装、水道工事などを行っており、現在は公共事業や民間工場修繕工事の受注も承っているのですよ。
大西 幅広く事業を展開されているのですね。学業修了後はすぐに家業に入られたのですか。
堀内 いえ、大学を卒業してから約2年間、営業職として医療関係の会社に勤めていました。心の中では、いつか家業を継ごうと思っていたのですが、他の業界を見ることも良い経験に繋がると思い、土木業とは異なる業種で仕事をしていたのです。そして、そこで蓄えた資金を元に土木関係の専門学校に通おうと考えていたのですよ。しかし先代から、専門学校に通うよりすぐに現場で働く方が良いと諭され、営業職を辞めてすぐにこの世界に入りました。最初は同業他社で修業を行い、その後父が営む「海西建設」で働き始めた次第です。
大西 実際に土木業の世界に入られて、苦労もされたのではないでしょうか。
堀内 現場仕事は初めてでしたので、とまどうこともありましたね。私は20代半ばでこの世界に入りましたので、経験のある同年代に負けないように一生懸命仕事に打ち込みました。しかし一方で、異業種で働いていた経験から、現場の仕事を違う角度から見ることができたのですよ。業界に入ったのは遅かったのですが、多様な価値観を身に付けることができたので、今では良かったと思っています。
大西 なるほど。仕事の進め方なども変えていかれたのですか。
堀内 そうですね。経験を積みながら少しずつ仕事のスタイルを変えていきました。と言いますのは、父は根っからの職人で、現場のスタッフと共に下請けの仕事を中心に手掛けていました。しかし、私は現場監督業で仕事を進めるように努めたのです。つまり、下請けから元請けにシフトしていったのですよ。それが功を奏して、父の下請け事業と私の元請け事業という2つの柱を確立することができ、会社の基盤はより強固になりました。またそれに加えて、公共事業に参入できるようにも努力しましたね。
大西 現在は公共工事も多いのですか。
堀内 ええ。今でこそ様々な工事を手掛けていますが、当初は苦労しました。実績が少なかったことに加え、役所との折衝も上手くなかったので、最初の一歩が中々踏み出せなかったのですよ。しかし、こつこつと実績を積み、掴んだチャンスを確実に活かして、誠心誠意仕事に打ち込んだ結果、徐々に大きな仕事を受けられるようになったのです。
大西 努力の積み重ねがあり、現在があるのですね。これまで手掛けられた工事の中で、印象に残っている施工事例を是非お聞かせ下さい。
堀内 事業の大小に拘わらず、どの現場においても誠心誠意、全力を尽くしていますが、私の中で特に印象深いのは、2008年に実施した相模原土木事務所河川砂防課による河川改修工事ですね。と言いますのも、この工事の施工期間中にかなりの大雨に見舞われましてね。それにより出水が発生し、工事用道路が流失してしまったんですよ。そこで大型の土のうを組み、工夫しながら再度の流失を食い止めたのです。事故にも繋がるところでしたが、大雨対策が迅速にできたことから無事工期内に工事を完遂することができました。また近隣に住んでおられる方々が、工事の成り行きを心配されていたので、皆様が安心できるように現場代理人と共に状況と安全対策を説明して回りました。
大西 きめ細やかな対応ですね。近隣の皆様も安心されたことでしょう。
堀内 お陰様で、この河川改修工事につきましては、関係各位から多大なるご評価をいただきました。そして、翌年に神奈川県建設技術協会から「2008年度優良工事表彰」をいただいたのです。これは、県の各発注機関や市町村が推薦する工事から選ばれるもので、小さな工事からスタートした当社にとって大変な名誉で嬉しく思っております。
大西 素晴らしいですね。では最後に、今後の抱負をお伺いします。
堀内 今年、特定建設業の申請を行いまして、来年には管工事や建築工事、造園工事を手掛け、今以上に業務の幅を広げて皆で会社を飛躍させていきたいと思っております。経営者として様々な重圧はありますが、スタッフとその家族の生活をしっかり守るために、今後も精魂込めて仕事に打ち込み、毎日頑張っていきたいですね。
日々変動する時流の中で、企業の舵取りに求められるものは、揺るぎない信念と思考の柔軟性。だが、相反するこの2つの事柄をバランス良く共存させることは難しい。
「海西建設」を牽引する堀内社長は、この2つの能力を非常にバランス良く持ち合わせている人物である。それを如実に示したのは2008年の河川改修工事。大雨の影響で不安定な現場において、社長の的確な判断ときめ細かい対応で、ひとつのトラブルもなく工事を完遂した。そこで見受けられたのは、工事を期日に完遂する初志貫徹の信念と、状況を見極め優先順位を変えながら作業を行う柔軟性である。逆境に立たされた時こそ、企業の底力が試される。工事における技術力もさることながら、逆境に怯まず冷静に対処していくその精神力が、「海西建設」の強さの秘訣ではないだろうか。