竹原 まずは御社の沿革から伺います。
北村 昭和49年に現会長が「東和」という会社を設立し、同53年に私の父が「ユウ保険事務所」を開業しました。そしてその後地元の保険代理店と3度の合併を経て平成19年からは新たに『東和ユウ保険グループ』として再スタートを切り、現在に至っています。
竹原 社長の代になってからグループ化を進めてこられたのですか。
北村 ええ。というのも、以前は1人で切り盛りしているような小さな保険代理店も多くありましたが、今は少人数で代理店経営を続けるのが難しくなってきているのです。これは保険業界全体の流れで、数多くのお客様の安心を守るためには組織を大きくする必要がある、との考えが根底にあります。ちょうど私が会社を引き継いだころより保険代理店の合併が増え始めましたので、そうした動きを見て自分たちでも組織固めを行おうとグループ化を推進してきました。今も、先代が築いた経営基盤や信頼を活かしながらより多くのお客様のお役に立つべく、40年以上の業界経験を持つ会長や頼れる従業員たちとともに励んでいます。
竹原 業界の動きを把握することが会社の再構築につながったのですね。
竹原 業務において、特に力を入れていらっしゃることは何でしょう。
北村 当社は「東京海上日動火災保険(株)」と「東京海上日動あんしん生命保険(株)」の代理店として、損害保険代理業や生命保険の募集に関わる業務を手掛けています。ただ、保険の加入手続きや事故処理サービスを主体としていたのは一昔前のこと。今はそうした従来の業務に加えて、保険に関する様々なご質問・ご相談への対応やお客様が加入なさっている保険の見直しなど、コンサルティング面にも力を入れています。今はテレビCMで低価格の保険がたくさん出ているのをよく見かけるでしょう。それにインターネットなどで簡単に調べることができますから、一般の方にも保険の知識が浸透してきました。昔はお客様のご要望を引き出して商材をご提案・販売するのが主な手法でしたが、そうして広く保険のことが知られるようになった今は、より深く多様なニーズを独自に追求する必要があります。そのため常に工夫し、お客様に興味を持って頂けるよう努力しなければなりません。
竹原 販売できれば良いという考えではなく、お客様の心をつかむことが求められるのですね。具体的にはどのようなアプローチを?
北村 例えば家財道具の火災保険に入っていれば、落雷時にテレビなどが破損した場合修理代が出るのですが、ご存じない方もまだまだ多いんですね。ちょっとしたことですが大事なことですし、保険のプロだからこそできるそうした情報提供に徹していくことが、サービスの向上と信頼につながっていくと考えています。ただ、仕事に慣れてしまってはいけません。プロとして自信を持ち始めるとご提案が押しつけになってしまうこともあるので、お客様の声に耳を傾ける意識は持ち続けています。大切なのは、人それぞれに応じた的確な情報を提供すること。それがこれからの保険代理店に求められることだと思いますね。
竹原 どういったときにお仕事のやり甲斐をお感じですか。
北村 お客様から「ありがとう」「良い保険に入って良かった」と喜んで頂けたときです。やはりお客様の笑顔や感謝のお言葉は何より力になりますね。私どもの仕事は人と人とのお付き合いがあってはじめて成り立つもので、私はそれを代表就任当初に学びました。というのも、お客様のところへご挨拶に伺うと、必ずと言っていいほど先代の話が出るんですね。信頼関係を築くことの難しさを知った今、先代の偉大さを感じずにはいられませんし、私も先代に倣って既存のお客様はもちろん合併を機に急増した新しいお客様とも良いお付き合いを続けていこうと努めているところです。
竹原 先代への尊敬の念が窺えます。では最後に、今後の展望をお聞かせ下さい。
北村 先代は長くこの仕事に携わってきましたし、合併した代理店も何十年という歴史がありますので、現在私どもがお付き合いさせて頂いているお客様の約半数は60歳以上の方。ですからご高齢の方にも分かりやすいご提案の方法を考えると同時に、今後は若い世代の方とも接点を持つことが課題です。そこで、代替わり以降再構築してきた組織の団結力を発揮することで、多くのお客様に安心と安全をご提供したいと考えています。ゆくゆくは岐阜県内でナンバーワンの保険代理店となり、地域貢献にもつなげられれば何よりの喜びですね。
(写真後列左より)古山氏、鈴木氏、間瀬氏、杉崎氏(東京海上日動あんしん生命保険(株))、立川さん(東京海上日動火災保険(株))、長島さん(左同)、足立さん、北村さん、内田さん、高木さん、北村社長、久保会長、奥山氏で記念撮影
▼先代が立ち上げた事業を平成17年に引き継ぎ、合併に着手した北村社長。平成18〜19年の2年間で同業の代理店3社と手を組み、『東和ユウ保険グループ』を立ち上げた。だが組織の再編成に際しては様々な苦労があったという。最も大変だったのは、組織が替わってもお客様に留まってもらえるようにアピールしていくことだ。お客様の多くは知り合いを通じて保険加入するため、新たな代理店との付き合いに抵抗を感じる人も少なくなかった。しかし見方を変えると、人とのつながりを大切にしていれば信頼関係は守られるとも言える。社長はそれに気づいたからこそ、それぞれの代理店が長年かけて培ってきた人の輪を同グループへとつなげることができたのだ。
▼社長は、普段から社員全体はもちろん営業スタッフや事務スタッフだけでのミーティングなども設けて様々な部署の意見を採り入れ、意思疎通を徹底している。その甲斐あって組織としてのまとまりも生まれ、取扱保険会社の表彰制度では2部門で栄冠を勝ち得た。今後も人を大切にした組織づくりを進め、グループをさらなる発展に導いていくことだろう。