村野 小菅社長はいつごろからこのお仕事に携わってこられたのですか。
小菅 父が塗装業を営んでいたこともあって、高校生のころからその手伝いをしていました。そして学業修了後、本格的に家業に入り、父ともう一人の職人の方のもとで経験を積んできたのですよ。
村野 先代の背中を見て成長してこられ、後継を意識されるようになったのですね。
小菅 清(創業者) 「最初はたった3人でスタートした当社ですが、今は息子が職人たちを引っ張ってくれています。その姿を見守っていきたいですね」 |
小菅 ええ。幼いころから真剣に仕事に取り組む父の姿を見てきましたから、いつかは父を超えてみせるという気持ちで邁進してきました。そして父が第一線を退いた後、『コスゲ装建』の経営を任されるようになりました。現在、当社では主に、一戸建て住宅やマンションの塗装・改修工事を手掛けています。近辺での仕事が多いですが、依頼があれば遠方にも駆けつけていますよ。当社の職人は皆フットワークが軽いので、複数の現場で妥協のない仕事を行ってくれています。
村野 塗装業は奥が深いと聞きます。社長はいかがお感じですか。
小菅 村野さんの仰るとおり、塗装の技術は簡単に身につけることのできないものです。知識と技術、そして何より経験が重要ですね。今は機械化が進みましたから、作業においても昔と違って楽な面もありますが、それでもプロの塗装職人の微妙な感覚を養うのは容易ではありません。例えば、ドア一つとっても、いかに家具調につくるのかということが問われますから、ただペンキを塗るのではなく、ドアを美しく飾る“塗装”を追求する姿勢が必要になるのです。古いものを塗装によって生き返らせる。それが理想ですね。
村野 芸術的な感覚まで要求されそうです。そこまでの職人技を持つ人は少ないでしょう。
小菅 もちろん、10人の塗装職人がいたとして、全員がそういった塗装を手掛けられるわけではありません。しかし私は「どうせやるなら、誰にも負けたくはない」という強い気持ちを抱き、お客様が驚くような完璧な塗装を目指して日々努力を続けております。もともと私は負けず嫌いな性格ですから、とにかくどんな現場でも、そこにいるどの職人さんにも負けない仕事をすることをポリシーにしているんです。
村野 技術向上のための努力を惜しまず歩んでこられたからこそ、多くのお客様から依頼が絶えないのだと思います。その姿勢をスタッフの方に伝えていくことも大切ですね。
小菅 今は現場の仕事のほとんどをスタッフに任せていますが、ありがたいことに、現場へ足を運ぶと当社のスタッフのことを褒めて下さる方が多くいらっしゃいますから、私のポリシーは職人たちに伝わっているようです。また、挨拶だけはきちんとできるようにスタッフにいつも話しています。我々が目指しているのはその日の仕事をこなすことではなく、その先にあるお客様に心から喜んで頂けるような塗装です。ですから単に技術だけではなく、相手と良い関係を築き上げていくための人間力が大切なのです。挨拶はいわばその基本。幸い、当社のスタッフは皆明るく、礼儀を大切にしながら日々技術の研鑽に励んでくれています。そんなスタッフたちの仕事ぶりのお陰か、当社は看板を一切掲げていないにもかかわらず、多くの方から依頼を戴いているんですよ。
村野 それは驚きました。看板を掲げない理由は何ですか。
小菅 以前、父から「一つひとつの仕事の結果が、そのまま会社の看板になっていくんだ」と教わったからです。お客様に満足して頂けるようなしっかりとした仕事ができていれば、特に宣伝をしなくても口コミで評判が広がっていくはず。そう信じて、私どもでは常に全力を尽くしてきました。お陰様でこのご時世の中でも、忙しく働かせて頂いています。これも全て、懇意にして下さるお客様のお陰ですね。これからも、信頼できるスタッフとともに、理想の塗装を追求し続け、お客様の心に残る仕事をしていきたいと思います。
村野 美しい塗装からは職人の皆さんのそうした心意気が窺えることでしょう。これからも多くの人の心に響く素敵な塗装を手掛け続けて下さいね。陰ながら応援しています!
▼手掛けた現場が形となって、後に残る塗装の仕事。小菅社長はそれが塗装業のやり甲斐の一つであると同時に、自らの仕事に重責を感じるところでもあると語る。そんな社長は、塗装業を営む先代の背中を見て成長し、経営者に必要な決断力や行動力を身につけてきた。「ただペンキを塗るのではなく、美しく飾る“塗装”を追求したい」と語ってくれた。社長がそんな高い理想を追い続けることができるのも、ひたむきに塗装業と向き合ってきた先代の姿があったからに他ならない。その強い意志は、家業を手伝い始めたころから、「父に追いつき、いつかは超えてみせる」と公言していた社長の言葉からも窺える。第一線を退いた先代は今、自らの意志を受け継いで、多くの職人を力強く牽引する息子の姿を温かく見守っている。
▼対談の最後に、今後の目標について問うと、歴史的建造物などの塗装に挑戦してみたいと話してくれた社長。意欲的な活動で塗装業界全体を盛り上げていってくれるに違いない。
▼負けず嫌いでありながら、大らかな性格の社長は、職人たちの親代わりのような存在でもある。今後はそんな社長のもとで、次代を担う塗装職人が生まれることだろう。「手掛けた仕事の一つひとつが会社の看板」という先代の言葉を胸に、社長は『コスゲ装建』をさらなる高みへと導いていく。