宮城県知事 許可(般-21)第18595号
村野 山上社長は、学生時代から塗装職人を志しておられたのですか。
山上 実はそうでもなかったんです。父が運送業を営んでいましたからトラックに憧れを持っていましたし、塗装職人になるとは夢にも思っていませんでした。
村野 では、どういったきっかけがあって塗装業界へ入られたのでしょう?
山上 学業修了後、見聞を広げるために様々な職を経験する中で「大公塗装工業」の社長と出会い、「塗装業界で働いてみないか」と誘われましてね。それがきっかけでこの世界に入りました。とは言え当初は雑用ばかりで、なかなか面白味を感じることはできませんでしたが。
村野 職人の修業は厳しいと聞きますし、色々な苦労もあったのでは?
山上 そうですね。特に私は、修業先の社長から「お前は素質がない」と言われ続けてきましたから(笑)。けれども、そんな社長の言葉が発憤材料となり、人一倍努力を重ねながら現場で腕を磨いていきました。すると自分のスキルもどんどん向上し、それに従って仕事も楽しくなるように。さらに、しばらくすると現場での人員配置などを任される機会も増え、そのころから塗装業界での独立を意識し始めるようになりました。独立と口では簡単に言っても本当にやっていけるかという不安や戸惑いもありましたが、やってみたい、自分がどこまでいけるか試したいという気持ちの方が強く、独立を決意。25歳のときに個人事業主としてスタートを切ったんです。
村野 お若くして独立されたのですね。独立後は順調に?
山上 いいえ。「依頼を戴ければ必ず結果を出せる」という自信はありましたが、当初は「若いからできないだろう」と判断されることが多く、思うように依頼を戴けませんでした。しかし、そこで腐ってしまっては元も子もありません。ですから、営業で方々を回っては「使って下さい」とお願いし、どんな仕事でも積極的に請けてきたんです。中には、高さ171mの鉄塔で塗装をするという仕事もありました。
村野 171mですか!? 私は高所恐怖症ですから、そんなに高いところでの作業などとてもできません!
山上 私も高いところは苦手ですし、恐怖心ももちろんありました。しかし、そこで尻込みしているようでは次の仕事につながりませんから、意を決して依頼を請け、何とかやり遂げました。そうして他の業者さんが敬遠するような危険な現場や採算の見込めない規模の小さな仕事も決して断らず、全力を尽くして現場を全うしてきたのです。そういった姿勢で仕事に取り組んでいるものですから当初はなかなか利益が得られず、赤字が続きましたが、そこで挫けることなく何とか事業を継続してきた結果、徐々に条件の良いお仕事が戴けるようになり、数年前からようやく安定するように。平成21年には建設業の県知事許可を取得し、組織の法人化も果たすことができました。
村野 苦しい時期を乗り越え、今日の『山上塗装工業』さんを築いてこられたのですね。社長ご自身は今も現場に出られているのですか。
山上 もちろんです。経営者として机に向かわねばならないことも多いですが、一番好きなのはやはり現場。現場で身体を動かしていると時間も忘れて作業に没頭してしまいますし、楽しくて仕方がないんですよ。そして現場仕事を終えた後にスタッフ全員で一台の車輌に乗り込み、皆で現場の話をしながら帰ってくる時間も楽しみの一つです。
村野 では、職人として現場で特に大切にされていることは何でしょう?
山上 一切妥協せず常に全力を尽くすことはもちろん、誠意を持って現場に臨むことです。職人として腕を磨くことも確かに大切ですが、それだけでは大成しません。現場での気配りやコミュニケーション能力、立ち居振る舞いなどあらゆる面で周囲から認められて、初めて一流の職人と言えるのです。ですから、現場では常に「見られている」という意識を持ち、礼儀礼節やマナーなどには特に気を配るようにしていますね。そして技術力、現場に対する真摯な姿勢、礼儀礼節、さらに現場でのトラブルにも臨機応変に対応できる柔軟性を高いレベルで兼ね備えていることが、当社の一番の強みだと考えています。
村野 それでは最後に、今後に向けての展望についてお聞かせ下さい。
山上 現在は仙台市での仕事が中心ですが、今後は地元・石巻市での仕事も増やし、公共工事も手掛けていければと考えています。そのためには施工管理許可が必要ですから、スタッフに施工管理技士などの資格取得を奨励するとともに、私自身も入札に関するノウハウなどを勉強しているところなんですよ。そして公共工事を受注し、将来的には建設現場で看板に社名を表示することが最大の目標。その実現に向けて、全員一丸となってさらなる研鑽に励む所存です。
村野 陰ながらではありますが、私も応援させて頂きます! 本日はお忙しいところ、誠にありがとうございました。
▼山上社長の流儀──それは、どんな依頼も絶対に断らないことだ。「今まで依頼を断ったことは一度もありません」という言葉通り、社長は赤字になると分かっている現場でも快く依頼を請け、期待以上の成果をあげて顧客の要望に応えてきた。そうして目先の利益にとらわれず、常に顧客本位の姿勢を貫いてきたことが評判となり、「『山上塗装工業』に頼めば間違いない」という評価を獲得する要因となっているのだろう。「仕事を選ばず、依頼されればどんなものでも全力で成し遂げる。それが私の信念です」と語る社長は、これからも初志を貫き、全身全霊を傾けて現場に挑み続ける──。