高い技術と妥協なきものづくりで企業の顔たる「封筒」の印刷に自信

有限会社 アイ・プリント

代表取締役 池田 文威

【異業種ネット】月刊経営情報誌『報道ニッポン』特別取材企画 掲載記事─略歴

「技術者としての誇りを持ち
“たかが”を“されど”に変えていく」
活版印刷業を営む父親の姿を見て育ち、同じ道に足を踏み入れた『アイ・プリント』の池田社長。父親の時代とは印刷の技術も様変わりしたが、その職人気質は律儀に受け継いでいる。尊敬する人物は「Honda」創業者の本田宗一郎氏。氏の「自分の仕事に関しては誰にも負けない」という熱い気持ちに共感する部分が多いのだという。自身も封筒印刷の世界において「誰にも負けない」との気概を持ち、日々高品質なものづくりを続けている。また、「人がしないことをするのが大好き」と語る社長は、既存のイメージを覆す、新たな封筒のデザインにも取り組んでいる。
封筒印刷を専門に手掛ける『アイ・プリント』は、4年前の創業以来、大手メーカー「山櫻」の下請けとして着実に成長を続けてきた。高品質・高スピード・エコロジーを実現するCTPも導入し、確かな封筒を納入。今後は競争の激しい印刷業界で生き残りを賭け、新たな事業にも取り組む構えだ。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『報道ニッポン』特別取材企画 掲載記事─対談

技術革新の著しい印刷業界で
あえて独立する道を選ぶ

大沢 現在のお仕事に興味を持たれたきっかけは何でしょう。

池田 家業が印刷業を営んでいたことですね。父は、はがきや名刺といった活版印刷を手掛けていました。

大沢 では、お父様の後を継がれたわけですか。

池田 同じ道を歩んではいますが、会社的には私が父の下から独立し、新たに立ち上げた形です。それが4年ほど前のこと。しばらくは個人事業主として操業し、およそ2年前に法人化しました。

大沢 具体的にはどのようなお仕事をなさっているのでしょう。

池田 封筒の印刷をメインに手掛けています。

大沢 競争相手は少なくないのでは?

池田 印刷業界全体で見ると、同業者の数は多いと思います。しかし、旧来の印刷方法から脱しきれなかった業者が淘汰されたことから、数は次第に減ってきました。また、冊子やチラシなどの印刷業者はたくさんありますが、私どものように封筒を専門に手掛けている業者は数少ないと思います。

大沢 印刷業界には大きな技術革新があったそうですが、それを機に業者が減ったのですね。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『報道ニッポン』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真

池田 ええ。最も顕著な技術革新が「デジタル化」です。従来なら版下を作り、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックという4版のフィルムを作って、それから刷版を作るという工程でした。それが現在では「CTP」と言いまして、パソコンで作ったデータを機械に流し込むだけで、直接刷版が出力されるのです。写真を型抜きする作業も、従来なら職人がカッターでフィルムを切るという方法が普通で、1版の型抜きを完成させるのに4〜5時間はかかっていました。それが今ではパソコン上で加工されたデータを機械が処理するだけ。便利な時代になりました。

大沢 封筒を専門に手掛ける業者が少ない理由は何でしょう。

池田 一つには、封筒は糊付け加工してあるために厚さ、形が一定ではなく、でこぼこしています。それを機械で刷るわけですから効率が悪く、機械にかかる負担も大きいのでコストもかかるんですね。そして、単価が安く、印刷業界の中では地味な仕事だということも、競合が少ない一因となっているかと思います。

たかが封筒、されど封筒
新しい封筒のあり方を模索

大沢 地味と言われますが、封筒は企業にとってはなくてはならないもの。名刺と同じく、企業の顔と言ってもよいと思います。

池田 おっしゃる通りですね。名刺が個人の顔だとすれば、封筒は企業の顔。受け取った相手が差出人の企業に対し、どのようなイメージを抱くかは、封筒の印象が強く影響します。そのあたりのことを軽視していらっしゃる企業様も多いようなので、私どもではインターネットを使って、提案型の営業をしていこうと考えているのです。

大沢 それは興味深いですね。

池田 印刷業はあくまで受身であり、これまで当社は発注者様の指示通り、データ通りに出力することを目的としてきました。しかし「たかが封筒、されど封筒」であり、既存の封筒を見直すことが受取人の印象を良くし、ひいては売上げアップにもつながることを分かって頂けるような提案をしたい、という気持ちも一方ではあったのです。そこで、私どもの考える封筒の例をインターネット上で発表し、それを気に入って下さったお客様に、直接発注して頂けるような仕組みを作りたいと考えました。

大沢 具体的にはどのような封筒を?

池田 既存の封筒は社名や住所だけのものが多かったのですが、今後は写真をうまく採り入れ、花をあしらったり、イラストや書画をのせたり。それを少部数から注文できる仕組みを作りたいのです。写真やイラストも一般の方から投稿を受け付け、それを買い取って利用します。自分で写した写真がどこかの企業の封筒に使用され、受け取った多くの方がその写真を目にする、というのは素敵な話だと思いませんか?

大沢 とても素敵だと思います。それが新たな芸術家を生み出すことにつながるかもしれませんね。

池田 ええ、可能性や夢はどんどん広がります。もっとも、これらの構想を実現させるためにも、現在の仕事でしっかりとした基盤を築かねばなりません。「封筒の世界では絶対に負けない」との気概を持ち、今後も励んでいきます。

大沢 ご活躍を念じております。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『報道ニッポン』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真
幸せを配達する封筒を

▼最近は、公で使用する封筒に、企業広告を入れる地方自治体が増えている。自治体の財源確保がその目的だが、広告を掲載した企業のほうも相応の効果を得ているようだ。中身を取り出せば捨てられるだけの封筒が、どれだけ影響力を持つかがよく分かる。

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同社が印刷を手掛ける封筒のサンプル

▼『アイ・プリント』ではこれまで数多くの封筒を手掛けてきた。その多くは社名と住所のみが記された、いかにも事務的な封筒であり、池田社長は作業のかたわら、「ちょっとした花の写真などを添えれば、もっとイメージが良くなるのに」と考えることが度々あったという。しかし、印刷業界では技術的な内容以外で発注側に意見を述べることは少ない。指示された通りのものを作ることこそが正しいあり方だからだ。しかし社長はこれからの時代、受身だけの仕事をしていては生き残れないと考え、新たな封筒作りを模索している。新たな封筒とは下のサンプルのように、差出人・受取人はもちろん、目にする人全てを幸せな気持ちにさせるデザイン。「封筒に関わる人全てで利益を分かち合いたい」という社長の気持ちが表れているかのようだ。

対談を終えて
「電子メール全盛期の現代ですが、それでも様々な機会に、封筒は頻繁に使用されています。差出人の手から直接受取人の手に渡るものだから、たかが封筒といえどもきちんとしたものを使いたいもの。無地封筒でも中身がきちんとしたものであれば支障ないのですが、受け取る側としては、事務的な封筒よりは、美しい花やかわいい動物、インテリアなどの写真が添えられた封筒のほうが嬉しいですよね。ちょっとした気遣いで、差出人の印象も変わってくると思います。」(大沢 逸美さん・談)

【異業種ネット】月刊経営情報誌『報道ニッポン』特別取材企画 掲載記事─会社概要

名 称
有限会社 アイ・プリント
住 所
神奈川県横浜市港北区新羽町1832
代表者名
代表取締役 池田 文威
掲載誌
報道ニッポン 2010年1月号
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