吉沢 まずは代表の歩みから。社会人第一歩はどういったお仕事を?
佐藤 初めは、職人さんの給与計算などを行う経理担当としてリフォーム会社に就職しました。けれど、実際に現場に身を置いて業務の流れを知る必要があると、現場監督を務めることに。そしてしばらく後、塗装業を手掛ける別会社の親方から「職人として働かないか」と声をかけて頂き、そこから塗装の世界に入ることになりました。最初は好奇心に流されてこの業界に入った感じでしたが(笑)、それまで現場監督を務める中で工事の流れは掴んでいましたのですんなり業務を始められたように思います。また、私は元々身体を動かすのが好きですし、外に出て作業を行う職人は性に合っていたようです。
吉沢 塗装業界に入られたころから、いずれは独立したいとの思いがあったのでしょうか。
佐藤 いいえ、最初は全く考えておらず、職人として働くうちに独り立ちする選択肢が浮かんできたのです。というのも、塗装職人というのは身一つで他の現場の応援に行きやすい職業。そのため、勤め先の親方の下で修業しながら、伺った現場の親方のやり方も学ぶことができました。そうして異なる考えや手法に触れるうちに、私も自分なりの経営を行おうと考えるようになり、31歳のときに独立したのです。
吉沢 現在こちらではどういった業務を手掛けておられるのですか。
佐藤 私どもは、外壁・屋根・内装塗装といった建築塗装や、防水工事、光触媒施工、コーキング工事、リフォーム工事などを行っています。その7割以上が屋外での作業になりますので、天候に左右されるのが辛いところなのですよ。特に梅雨から、夕立が多い夏場にかけては特に大変で、たかが天気と考えているとたちまち業務に遅れが生じてしまいます。ですから常に天気予報に注意し、現場の状況を見ながら天候に合わせた段取りをする必要があるのです。気象に関する知識や、全体の状況を把握した上で的確に判断する能力は欠かせませんね。
吉沢 求められるのは塗装の技術だけでないのですね。そうしたご苦労がある中でも、お仕事の魅力を感じるのはどういったところでしょう。
佐藤 リフォームや塗り替えにおいて、痛んだり汚れたりしていたところが塗装によって徐々に綺麗になっていく過程は、見ていて面白いですね。また、塗装してすぐの時点では分かりませんが年数が経つと違いがはっきりと現れてくるので、様々な工夫を要することもやり甲斐となっています。例えば、木は呼吸をしているため、ある程度伸び縮みする。ですから、木部の塗膜は時間が経つとどうしても裂けたりはがれたりしてくるのです。施工の際、そこへそのまま塗料を重ねるのか、ケレンをして割れているところにパテなどを詰めてから塗るのか、その工程ひとつで数年後の状態は大きく変わってきます。ただ塗るのではなく、3年後、5年後と時間が経過したときの状態を考えて慎重に作業を進めねばなりませんし、単純なようでとても奥深い世界なのです。
吉沢 なるほど。施工時だけでなく長い目で住宅を見て下さるのですね。代表が現在力を入れておられることは?
佐藤 現在、特に内装塗料において、含有化学物質による健康被害が広く知られるようになりました。そこで私は人体への悪影響を減らそうと、化学物質の分解や室内の空気の清浄化ができる光触媒を積極的に採り入れています。また、これまであまり注目されてこなかった外装塗料についても2種類の特殊な製品を使用しています。
吉沢 是非詳しくお聞かせ下さい。
佐藤 一つは、世界で初めて4Fセラミックを使った新世代塗料「フォルテシモ」。ホルムアルデヒド等級の最上位規格であるF☆☆☆☆を取得しており、また親水性が高く、塗膜表面に付着した汚れを雨で流し落とすことができます。そのため塗り替え周期の延長や洗浄コストの低減を可能にし、建物のライフサイクルコスト削減や環境負荷低減にも役立ちます。
そして低VOC・ゼロ有害物質の「クレッシェンド」は、製造元・販売元・施工元の三者責任保証システムにより15年間の塗膜保証をお約束しています。これにはライセンス研修を修了した施工者だけが施工を行う職人認定制度があり、ここ徳島県では私どもだけが取り扱えるのですよ。
どちらも超耐候性・超低汚染性・防カビ性などに優れており、何より人体にも環境にも優しいのが特長です。同時に美しさを兼ね備えており、お客様のニーズに幅広くお応えできます。ただ、どんなに良い塗料を使っても、それを使う者によって仕上がりは変わってきますから、少しの油断もないよう、常に気を引き締めて作業を行っています。
吉沢 環境への関心は高まる一方ですし、今後益々ご依頼も増えると思います。では最後に、これからの展望を。
佐藤 私は今まで、多くの方々のお世話になってきました。だからこそ職人同士の横の繋がりはもちろん、外壁屋さん、大工さん、内装屋さんなど異業種の方々とのお付き合いも大事にして共存共栄を図りたいと思っています。周囲の方への感謝の気持ちを忘れず、その中で独自性を出しながら進化していきたいですね。
▼住宅とは、家族が集い憩う、安らぎの空間である。大切な場所だからこそ美しく保ちたいし、そのため定期的な手入れは欠かせない。そこで必要となるのが塗装だが、昨今建築塗料に起因するシックハウス症候群や化学物質過敏症などの発症の可能性が指摘され、塗装工事への懸念の声が高まっている。
▼建築塗装業を手掛ける『進栄建装』の佐藤代表がまず採り入れたのは、光触媒施工である。内装塗料に用いられる光触媒は、太陽光や蛍光灯の光が当たることで有機物を分解して無害化するもので、消臭・抗菌・防汚はもちろん施工による健康被害対策に効果的とされているのだ。さらに、最近では外装塗料においても人体や環境に良いものを探し、対談でも紹介された「フォルテシモ」や「クレッシェンド」といった優れた製品を扱うようになった。
▼数ある製品の中からより良いものを検討し、導入に伴い新しい知識や技術を身につける原動力となったのは、代表自身のお子さんの存在だという。新たな製品との出会いを作り、業務の可能性を広げているのは、父親としての「大事な我が子のために何かしてやりたい」という思い。この思いは、塗装職人としての“家族が安心して暮らせる環境づくり”への使命感にもつながっており、そのため同所で働く職人たちに代表は「自分の家だと思って丁寧に作業にあたるように」と話している。代表に多くの信頼が寄せられるのは、家族を守るとの意識で塗装を手掛けてくれるから。この姿勢が守られる限り、今後も活躍の場は広がっていくだろう。