■実るほど頭を垂れる稲穂かな
法人化からわずか2年足らずで急激な成長を遂げた『泉北商運』。そんな同社を率いる小谷社長は、急成長の要因について「専務を筆頭に、優秀なスタッフに恵まれたお陰です」と謙虚に語る。そんな社長の人柄こそが、同社に優秀な人材を呼び寄せたのだろう。“実るほど頭を垂れる稲穂かな”を地で行く社長が築く会社の未来──それはきっと、どんな状況にも左右されない堅固な組織であるに違いない。
村野 まずは小谷社長の歩みから。
小谷 食品関連の運送業を手掛ける父から「魚ぐらい捌けるようになっておいた方が良い」と勧められ、学業修了後は活魚店で働くようになりました。ところが、出入りする業者さんが大型トラックで店にやって来る姿を見るうちに、次第にトラックドライバーに興味を抱くようになったんです。そこで、料理の世界から運送業界へと移ったのですよ。
村野 きっと、お父様から受け継いだドライバーの血が騒いだのでしょうね。そこから独立に至るまでにはどのような経緯があったのでしょう?
小谷 トラックドライバーとなってからは複数の運送会社に勤めて経験を重ねていたのですが、30歳を間近に控えたころから、次第に独立心が芽生えてくるようになりましてね。そこから徐々に独立に向けて動き出し、ある程度の資金が貯まった後、個人事業主として活動するようになりました。そして、元請け会社さんに所属し、近畿圏を中心に鮮魚や青果といった食品類の配送事業を手掛けていたんです。その中で、徐々に人とのつながりができ、紹介でのご依頼も増えていきました。2年ほど前からは私一人で対応しきれないまでになったため、以前からの知人である専務を招聘して人員の拡充を図ると共に、社の法人化も果たした次第です。その結果、現在では17名のスタッフと16台のトラックを抱えるまでになりました。
村野 わずか2年でそこまでの成長を遂げられるとは素晴らしいですね! お父様も喜んでおられることでしょう。
小谷 そうですね。残念ながら、父は今年の2月に他界してしまったのですが、生前はとても喜んでくれていました。
村野 きっと、お父様は今も天国から社長のことを応援していらっしゃると思いますよ。ところで、それだけ成長できた要因はどこにあるとお考えですか。
小谷 優秀なスタッフに恵まれたことに尽きると思います。運送業という仕事は、「ただ荷物を運べば良い」と思われがちですが、丁寧で確実な運送を行うだけでは数ある運送会社の中から当社を選んでいただくことはできません。気持ちの良い挨拶や応対など、お客様から「このドライバーに頼んで良かった」と思われるかどうかが大切なんです。私自身、勤務時代から常にお客様と良好な人間関係を築くことを第一に考えてきましたし、当社のスタッフも皆、私が特に何かを言わなくともそのことを自覚して仕事に臨んでくれています。スタッフは比較的年齢層が若く、見た目がやんちゃそうな者もいるのですが、お客様からは「対応が良い」と褒めていただくことがとても多いんですよ。また、配車業務をはじめ社内の仕事を完璧にこなして私を力強くサポートしてくれている専務の存在も大きいですね。特に営業活動を行っていないにもかかわらずご依頼が寄せられるのも、皆の頑張りのお陰だと思いますし、本当に感謝しています。
村野 人材を採用する際に、何か重視されていることはあるのですか。
小谷 熱意があり、挨拶など人としての基本的なことができていれば、年齢などに関係なく採用しています。
村野 なるほど。ところで、営業エリアは近畿圏が中心なのでしょうか。
小谷 ええ。名古屋まで出向くこともありますが、基本的には近畿圏に絞っています。あまりに遠方だと私の目が届かなくなりますからね。それに、当社が扱うのは鮮魚や青果・冷凍食品といったデリケートなものばかりですから、何かトラブルが起こった時でも即座に対応できるようにしているんです。
村野 誠実な姿勢で業務に取り組んでおられることが窺えますね。それでは最後に、将来に向けての展望をお願いします。
小谷 法人化からわずか2年で急激に規模が大きくなりましたので、今後は少し落ち着いて、じっくりと社の基盤を整えていこうと考えています。そして、将来的には配送だけでなく荷物の保管業務などにも取り組んでいきたいですね。また、安心して任せられる人材が育てば、営業エリアも拡大したいと思います。
▼『泉北商運』では、“黒”をイメージカラーとしている。ユニフォームはもとより、運転席のあるトラクタ部分の色も全て黒で統一されていることからも、そのこだわりの強さが窺える。
▼では、黒をイメージカラーとした理由は一体何か。そこには、小谷社長の強い意志が込められている。「黒は、他のどの色にも負けない色ですよね。黒のように、何ごとにも左右されない強固な会社を築きたいと考えて、黒をイメージカラーにしたんです」──。
▼そんな小谷社長の思いは、スタッフ一人ひとりにもしっかりと浸透している。営業活動を行っていないにもかかわらず、同社に絶えず依頼が寄せられていることからも、スタッフの努力の成果が見て取れる。
▼お客様の大切な荷物と、荷物に込められた“思い”を届けるべく、今日も“黒”を身に纏ったドライバーたちが走り続ける。