全幅の信頼をおく従業員とテンポの速い作業で高い地位を築く

株式会社 北上エンジニアリング

代表取締役 佐藤 美喜男

【異業種ネット】月刊経営情報誌『報道ニッポン』特別取材企画 掲載記事─略歴

「従業員が幸せに暮らせるように
確固たる地位を築いていきたい」
東北地方のものづくり業界で屈指の実力を持っている『北上エンジニアリング』の佐藤社長は、「もっとたくさんの利益を上げられる企業にしたいと思っています」と語る。ただし、その社長の志は虚栄心によるものではない。会社や家族のために汗を流す従業員たちにもっと良い生活をさせてあげたいと思っているからこそなのだ。「従業員が当社の財産ですから、できるだけのことをしてあげたいのですよ」。そう語るときの社長の眼差しは、まるで身内に注ぐように温かく、同社の良好な人間関係が窺えるとともにさらなる発展を予感させた。
【足跡】 岩手県出身。中学校卒業後は埼玉県で過ごし、ものづくりの仕事に携わり始める。帰郷後もものづくりの会社に就職して役員も務めるが退職。そしてしばらくの休養期間を経て独立を果たした。
長年にわたって培った技術や知識を活かすべく金型の製造などを手掛ける『北上エンジニアリング』を創業した佐藤社長。東北地方にありながらも大都市の企業にも負けないスピードを武器として、創業から3年ほどながら確かな基盤を築きつつある。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『報道ニッポン』特別取材企画 掲載記事─対談

苦難の10代を経験し
周囲の助けを受けて独立する

三ツ木 まずは社長の歩みからお伺いしたいと思います。ご出身はこちら岩手県なのですか。

佐藤 はい。岩手県の中でも豪雪地帯として知られる湯田温泉の近くで生まれ育ちました。そして、小学生のときに鉱山で働いていた父が事故で他界したのを受けて、中学校卒業後は埼玉県のものづくりの会社を経営しておられた方の下で暮らすことになったのです。まだ子どもだったので不安だらけでしたが、その方には本当に良くして頂きまして、働きながら専門学校にも通わせてもらいました。ところが、時代の流れの中で勤務先が解散することになりましてね。それで違う仕事に就いたのですが、こちらに残っていた兄が体調を崩してしまったのです。それで帰郷してきたのですよ。

三ツ木 激動の10代を過ごされたのですね。こちらに戻ってきてからもものづくりのお仕事を?

佐藤 はい。手広く製造業務を手掛ける会社にお世話になり、役員を務めるなど、充実した生活を送らせてもらいました。そして退職後は休養していたのですが、空いた時間で自分の将来について考えたときに、自分の取得した技術を何とかして活かしたいと思ったことと、「独立するなら手伝うよ」と周囲の人から言ってもらえたこともあって、会社を興すことを考えるようになったのです。そんな矢先に、以前、顧問を務めていた会社の経営が上手くいっていないとの話を聞き、そちらの従業員と負債を一緒に引き取る形で当社を立ち上げたのですよ。

三ツ木 いきなり従業員と負債を抱えることに不安はなかったのですか。

佐藤 以前の会社で役員をしていたときに銀行との取引をしたこともありましたし、営業に関しても全国を回っていたので何とかなるとの勝算がありました。それに何より、自分の力を試すためには少しぐらい逆境にあった方が良いと思ったことから、一念発起して引き受けることにしたのですよ。

三ツ木 社長の自信のほどが窺えます。

2つの製造業務を柱として
信頼のおける従業員と作業を遂行

三ツ木 では、現在はどういったお仕事をメインにしておられるのでしょう。

佐藤 ゴム成型金型やゴムプレス金型、精密金型用部品など金型関連の製造業務と、FA関連装置の設計・製作・組立、各種精密冶工具設計・製作など装置関連の製造業務の2本柱で運営しています。この両輪を上手く回しながら、企業として成長していきたいと思っています。

三ツ木 では、御社ならではの特徴はどういったところでしょう。

佐藤 岩手は東京や大阪などの大都市圏から離れており、どちらかと言えばのんびりとした雰囲気が魅力です。しかし、現代のビジネスにおいては迅速な対応が欠かせませんので、当社では大都市に負けないほどの速いテンポで何ごとも応対するようにしています。それがお客様の利便性にもつながり、当社の評価にもつながっていくのではないかと思っているのです。その方針が浸透してきたのか、お取引先に「東北にいるのに東京の一流企業のような迅速なペースで作業をしている」と言われることが多いですね。

三ツ木 では、従業員さんのレベルもさぞかし高いのでしょうね。

佐藤 はい。当社の誇りは会社の規模ではなく従業員ですからね。以前から残っている人、新しく入った人の両者が切磋琢磨しながらより高いレベルを目指して頑張ってくれているのです。以前は作業の一つひとつを説明しなければなりませんでしたが、今では私が何も言わなくてもそれぞれが自分の持ち場をきっちりと守り、確実に作業を遂行してくれているんですよ。創業から3年かけてみっちりと教え込んできた努力が実ったと感じ、嬉しく思っております。

三ツ木 それでは最後になりますが、今後の展望をお願いします。

佐藤 もう少し会社としての余裕ができたら従業員を研修に出したいと思っていますし、引退までには新しい工場を立ち上げたいと考えています。その目標を達成するためには私が経営者として成長していくことはもちろん、従業員たちが安心して生活できる基盤を持つ会社へと成長させていきたいですね。あと個人的な夢としては、近くの温泉のあるところに別荘を構えて、孫たちとのんびりする時間を得られれば最高に嬉しいです。

三ツ木 陰ながら応援しています。

【異業種ネット】月刊経営情報誌『報道ニッポン』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真

現役で現場に立つ熱血漢
【異業種ネット】月刊経営情報誌『報道ニッポン』特別取材企画 掲載記事─取材記事写真

▼自らが体験したことを次世代のものづくり業界へつなげていければとの思いから独立した佐藤社長。そして63歳になる今も現役で製造現場に立っている社長は「私は周囲の若い人に対して、自分はこの年でも頑張っているのだから、皆ももっと頑張れと言っているんです」と話してくれた。実際に社長は受注すると、図面の作成から見積もりなど全ての作業を行っており、そのスピードと正確性はともに働く従業員も敵わないほど。ものづくり業界が低迷していると言われる中、貴重な本物の職人だと言える。ものづくりに興味がある人は是非とも社長の魂を受け継ぎに『北上エンジニアリング』へ行ってほしい。

対談を終えて
「60歳と決して若くない年齢にして独立の道を選ばれた『北上エンジニアリング』の佐藤社長。自分が培った技術と知識を後世に伝えていきたいとの高尚な気持ちで企業運営にあたっておられる姿は、まさにものづくり業界の伝道師のようです。今後は工場の新設なども視野に入れておられるそうですから、さらなる人材の獲得に向けて現在の従業員の方々への指導を続けていき、ものづくりのプロをたくさん抱える企業となってもらいたいですね。これからもものづくり業界を牽引する存在として、現場第一線で頑張って下さい。」(三ツ木 清隆さん・談)

【異業種ネット】月刊経営情報誌『報道ニッポン』特別取材企画 掲載記事─会社概要

名 称
株式会社 北上エンジニアリング
住 所
岩手県北上市藤沢18-94-10
代表者名
代表取締役 佐藤 美喜男
掲載誌
報道ニッポン 2009年8月号
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