【代表取締役 松尾 保敏氏の足跡】
「トキワ工業」創業者である父親の背中を見て育つ。学業修了後、迷うことなく同社に入社。父の下で経験を積む。現在は同社の代表取締役として、およそ20名のスタッフを牽引している。
【専務取締役 松尾 隆志氏の足跡】
松尾保敏氏と同様、子どものころから父親の働く姿を見て育つ。学業修了後は保敏氏と共に「トキワ工業」に勤務。現在、同社の専務取締役を務め、より良い会社づくりに尽力している。
村野 まずは、「トキワ工業」さんの業務内容から伺います。
▲「トキワ工業」では小ロットで燃料タンクなどを量産している。(写真提供:「ダブルエム」)
松尾(保) 農機具や弱電、車などの各種精密鈑金の試作品や本作品の製造を手掛けています。チタン・ステンレス・銅・アルミ・鉄の加工、簡易金型及びプレス加工、レーザー加工、パンチング加工、アートパンチ加工、R叩き加工など、様々な加工を行っているんです。多品種少量生産にも対応しており、これまで私どもが依頼を受けてつくってきた試作品及び本作品は数えきれません。
村野 会社を創業されたのは、社長と専務、お二人のお父様だそうですね。
松尾(隆) ええ。父は1965年、双子である私たち兄弟が生まれて間もなく当社を創業したんです。私たちを養っていくために独立を決意したと言っていましたから、言うなれば、私たち二人が当社の陰の創業者なんですよ(笑)。当社が法人化して40年──残念ながら、父は3年ほど前に74歳で他界いたしました。
村野 そうでしたか。お二人とも子どもの頃から跡を継ごうと?
松尾(保) はい。二人とも、父の背中を見て育ちましたから。子どものころは、軽トラで納品する父によく付いていきましたね。そのためこの仕事には早くから慣れ親しみ、私たちは自然と父と同じ道へ進んだんです。学業修了後、すぐに当社に入社しましたが、入社時は仕事量が多くて非常に忙しい時期でした。
村野 お父様はどのような方でした?
松尾(隆) 一言で言うと「豪快な人」でした。仕事にも遊びにも全力で取り組んでいましたね。仕事に関しては、私共に口うるさく言うほうではなく、重要なポイントだけ伝えたら後は任せるという教育スタイルでした。
村野 お二人への信頼があったのでしょう。ただご兄弟だからこそ一緒に働く難しさを感じられることもおありでは?
松尾(隆) 今は一緒に働くことが当たり前になっていますので、むしろ兄弟の存在は心強いですね。一人ではできないけれど、二人ならできることもありますから。
村野 支え合っておられるのですね。では、御社の特徴を教えてください。
松尾(保) お客様の注文を決して断らないことです。どんなに難しい注文でも、「やります!」と言って快く引き受けています。「できません」と断らず、挑戦することが大切だと思うんです。難しい加工に挑戦することは、我々の腕が磨かれることにもつながりますから。
村野 なるほど。この厳しい時代に、御社では多くの注文を受けておられるようですが、どのような営業活動をされているのですか。
松尾(隆) 宣伝は特にしておらず、お客様の紹介によって仕事をいただくことが多いんです。宣伝をしなくても、たくさんの仕事をいただけるのは、ありがたいことですね。
村野 紹介によって仕事をいただけるのは、御社がお客様に信頼されている証拠です。現在の活動エリアは?
松尾(保) 遠方に行くこともありますが、当社は地域に密着して活動していますので、この近辺が中心です。
村野 この仕事をしていて良かったと感じるのはどんな時ですか。
松尾(隆) お客様に喜んでいただけた時です。お客様に「ありがとう」と言っていただけると、「また頑張ろう」という気持ちになります。それと難しい注文を受けて、お客様の期待に応えられた時もとてもうれしいですね。難しい注文であればある程、お客様の喜びも我々の喜びも大きいんですよ。
村野 なるほど。「お客様の喜び」が、お仕事をする上でのお二人の原動力なのですね。現在、御社にスタッフは何名いらっしゃるのですか?
松尾(保) およそ20名おり、そのうち4分の3が職人です。当社のスタッフは、みんな前向きに仕事に取り組んでくれ、とてもよく頑張ってくれているんです。彼らあっての当社と実感しますね。
村野 最後に、今後の抱負をお聞かせください。
松尾(保) この世界に入って長いですが、物づくりというのは、本当に面白いと感じる毎日です。これからもスタッフと一緒に、試行錯誤を重ねながら物をつくっていきたいです。
松尾(隆) 施設は老朽化していますから、工場の立て替えも検討したいですね。スタッフのモチベーションを上げるために、良い職場環境を保つことも我々の仕事かなと思いますから。
村野 御社の益々のご発展をお祈りしています。本日はありがとうございました。
▼現在、およそ20名のスタッフが活躍している「トキワ工業」。社長、専務を筆頭に、前向きに仕事に取り組むスタッフが揃う同社では、難しい加工にも積極的にチャレンジしている。「何とかしよう」が合言葉の同社。手掛ける前から諦めることは決してない。
▼「お客様のご注文が難しければ難しい程、我々は燃えるんです(笑)。製品ができ上がった時の達成感は大きいですよ」と松尾保敏社長は話す。そうして難しい加工も厭わず、試行錯誤しながら取り組んできた経験は、同社スタッフの技術力を着実に高めてきた。日々進化を続ける企業として、同社は歩みを続けている。
▼日々技術を磨き、更なる高みを目指す「トキワ工業」。試作品の製作に高い技術力を持つ同社は、工業国家・日本が誇る水準の高い工業技術を下支えする存在でもある。厳しい時代だが、常に挑戦し続ける同社に、業界全体を活性化する力が秘められている。