三ツ木 社長が職人の世界に入られたきっかけからお聞かせ下さい。
岡崎 高校時代に知人のつてで鉄筋工事会社でアルバイトを始めたのが、そもそもの始まりでした。当時はさほど気に留めずにそのまま建設業界に進んだのですが、今思えばこの仕事が性に合っていたのだと思います。
三ツ木 当初から独立心をお持ちで?
岡崎 そうですね。昔からやんちゃでしたから人に使われるよりも、自分の腕で勝負したいと思っていました。現在専務を務めてくれている佐藤とは当時からの付き合いで、よく遊んでいた仲間(笑)。しかし、私は人よりもはりきって現場に出ていたためか途中で首を痛めてしまい、ヘルニアと診断されたのです。そこで初めて、現場作業以外で他に何ができるかを考えるようになりました。
三ツ木 そして経営という道を選ばれたのですね。
岡崎 はい。佐藤ともう1人仲間が付いてきてくれることになり、3名で平成18年に当社を興しました。時期も決して良かったとは言えませんし、最初は先も見えず不安だらけでしたが、一つひとつの現場で実績を重ねていくことだけを考えていましたね。そして立ち上げから2年ほど経ったときに当事務所を構え、こちらに移ってきたのです。お陰様でスタッフの数も、現在21名にまで増えました。
三ツ木 短期間でこれだけの成長を遂げられるとはすごいですよ!
岡崎 営業という営業もしていませんし業界の景気も悪いですから、自分たちも驚いているぐらいです(笑)。ただ一つ、私に分かるのは全てはスタッフの頑張りのお陰だということ。皆が現場で一所懸命に励んでくれているから評価を戴け、次の仕事へとつながっているのです。彼らがいなければ今の当社はなかったと断言できます。
三ツ木 良い人材に恵まれているのですね。また同時に、スタッフの皆さんとの強い団結力を感じます。
佐藤 ええ。現場が機能的に動いているのは、やはり社長に求心力があるからだと思います。仕事に関してはとても厳しいのですが、叱咤の中にも優しさが感じられるのですよ。普通なら怒られると反発する活きの良い若手も、なぜか社長の言うことは素直に聞いていますね(笑)。それが人間的な魅力なのだと感じます。
三ツ木 最近の若者は一度怒られるとへそを曲げてしまいますから、彼らをうまく育てるのは至難の業ですよ。何か極意があればお聞かせ下さい!
岡崎 何も特別なことはしていませんよ(笑)。ただ、基本的なことはきっちりするよう徹底させています。私自身上下関係が厳しい中で育ち、そこで学ばせて頂いたことのありがたみを実感していますので、自分が上に立ったときも中途半端なことは絶対にしたくありませんでした。特に当社の業務は、建設現場で足場を組んだり解体を行ったりと危険が伴うため、少しの気の緩みが大きな事故に直結します。だからこそ基礎を固め、初心を忘れないようにと常々言っていますね。
佐藤 その最たる例が、掃除です。当社の職人は現場を整然とさせることが得意で、全員で後片付けまで行っています。掃除や整理整頓は一番簡単なことですが、実はなかなか出来ない部分。誰もがやりたくないことを率先して行うよう習慣づけることで、自然と意識が芽生えてくるのです。もちろん、そうした細かい部分が顧客の目に留まってお褒め頂くこともありますし、『岡崎工業』の特長となっているように思います。
三ツ木 社長の考えが隅々まで浸透している証ですね。先ほど現場は足場組立や解体が多いとおっしゃっていましたが、エリアはこの近辺になるのですか。
岡崎 そうですね。仙台市を中心とした宮城県内になります。当社は建築工程において重要な部分となる鳶・土工事全般を行っており、その作業如何で建物全体の完成度が左右されますから常々重責を感じています。今は私が現場に出ることはあまりありませんが、気持ちは職人たちと同じなんですよ。
三ツ木 しかし目の回るような忙しさでは、ときにゆっくりしたくなることもあるのでは?
岡崎 いいえ。忙しければ忙しいほど当社の力が試されるわけですから、面白いですね。いかに早く、いかに完璧に仕上げるかを考え、実践することにやり甲斐を感じています。それに仕事帰りに皆とわいわい言いながら飲みに行くのも充実感がありますし、彼らのイキイキとした表情を見るともっと良い会社にしていこうと意欲が湧いてくるのです。
三ツ木 経営者というより、良い兄貴分といった感じですね。皆さんから慕われている理由が分かった気がします。では最後に、今後の展望を。
岡崎 本業で基盤を固めながら、いずれは不動産業にも着手したいと考えています。まだ構想段階ですが、この夢は以前からずっと温めてきたことなので必ず実現させたいですね。不動産から建設まで一貫させられるようになれば、会社としても大きく成長できると思いますし、スタッフたちにも新たなチャンスの場を与えられる。まだまだ目標は高いですから、全力で邁進していきます。
三ツ木 私も陰ながら応援しています。
▲対談に参加して下さった佐藤一樹専務をはじめスタッフの皆さんと
▼昨今どの業界も不景気に苦しんでいるが、中でも建設業界の落ち込みは激しく、幾多の企業が軒並み低迷している。しかし設立から3年の『岡崎工業』はこうした状況と裏腹に受注量を増やし続け、増員で組織力を強化している希有な存在だ。岡崎社長は「私は好景気を経験したことがあまりありませんから、世間の影響もよく分からないのです。毎日ただ目前の仕事に全力投球するのみ」と語る。その計算のない真っ直ぐな姿勢も高評価につながっているのだろう。さらに対談の締めくくりにも出てきた通り、将来的には不動産業界への参入も視野に入れているとのこと。佐藤専務をはじめ本業を任せられる人物も育ってきているので、おそらくこの展望はそう遠くない未来に実現されるのではないだろうか。社長の手腕が新しいフィールドで発揮される日が、今から楽しみである。