村野 まずは社長の歩みからお伺いします。社長が板金加工の世界に入られたきっかけは?
古川 大学在学中に板金加工のアルバイトを始めたのがきっかけです。最初は春休み中だけのつもりだったのですが、板金加工の魅力にとりつかれてしまい、結局大学を中退してその会社で働くことになったんです。
村野 社長をそこまで駆り立てた板金加工の魅力についてお聞かせください。
古川 一枚の平面な金属板から、様々な部品が生まれることですね。その過程には、切断や曲げ、溶接などがあるのですが、金属の特性を熟知しておかなければ、それぞれの加工は正確に施せないのです。例えば、金属板を曲げると板の外側は伸びようとし、内側は縮もうとします。加工する際には、そうした伸縮性を計算しなければならないのです。知れば知るほど板金加工の奥深さにはまっていきました。また、勤務時代から試作品の加工を手掛けており、オーダーメイド──この世でたった一つしかないものを生み出していることも、やり甲斐につながりました。
村野 独立は最初から決めておられたのですか。
古川 技術が身につくにつれて、徐々に独立の意志が強くなりましたね。3年掛けて独立資金を貯め、独立したいと勤務先の社長に相談しました。板金加工業は設備投資にお金が掛かるため、金属加工業のなかでも独立しにくいと言われており、私も最初は強く反対されました。けれど、難しい分チャンスもあるはずだと、独立を決意したのです。やるからには徹底したいという思いがありましたから、設立の段階で、レーザー加工機や三次元CADも導入したんですよ。
村野 社長の強い意志が伝わってきます。実際に独立されていかがですか。
古川 2008年の2月に独立したばかりですので、まだ知名度も低く、これからという気持ちです。実績を築くために明け方近くまで仕事をすることがよくありますが、スタッフは音を上げず付いてきてくれています。私は独立する際に、「当社を単なる町工場で終わらせたくない。みんなの手で会社組織を築き、発展させたい」とスタッフに話しました。そうした思いをみんなも持っているからこそ、頑張ってくれているのだと思います。
村野 それだけ固い結束力があれば、会社が大きく発展することは間違いないでしょう。
古川 景気の悪い中でのスタートとなりましたが、あとは上がっていくだけなので、逆にそれをチャンスと捉えていきたい。今は歯を食いしばり、前進し続けていくのみですね。
村野 陰ながら応援しています。本日はありがとうございました。