自動制御装置・電気設計施工
加納 まずは起業までの経緯からお聞かせ下さい。社長が現在のお仕事を選ばれた理由は何だったのでしょう。
竹内 父が電気工事業界で事業を立ち上げていましたので、その背中を見て漠然と憧れを抱いていたのです。それでいずれは後を継ごうと、高校卒業と同時に同業他社で修業を始めました。しかし、次第に私自身にお客様がついて下さるようになり、その方々を置き去りにして家業に入ってしまうことに疑問を抱くように。それで父に相談し、自分で起業することになったのです。
加納 それがこの『テーシック』さんなのですね。当時はお幾つで?
竹内 25歳でした。最初は私一人で、右も左も分からず毎日めまぐるしく走り回っていましたね。とにかく無我夢中でしたので、当時のエピソードを思い出そうにも記憶が定かでないぐらいです。
加納 そのがむしゃらな努力が今日につながっているのだと思いますよ。
竹内 いいえ、それよりも周囲の方々が支えて下さったからです。「頑張れよ」と声をかけて頂いたり仕事面でバックアップしてもらったことは、決して忘れることはありません。これまで応援して頂いた身なればこそ、当社はお客様からどんな仕事を頼まれても絶対にお断りしないのですよ。多少無理な内容でも、私の頑張りでどうにかなるのであれば精一杯お応えしたいと思います。それに他社が断るような難しい仕事であればあるほど、「やってやろう」という意欲が湧いてくるのです(笑)。このチャレンジ精神のせいでスタッフには負担を強いてしまっていますが、皆文句も言わずに頑張ってくれるので頭が下がる思いですね。
加納 社長もスタッフの方々も、根っからの技術者なのですね。
加納 スタッフの皆さんもお若いのですか。
竹内 ええ。全員が20代の働き盛りでコンピュータにも強く、最新技術を駆使してあらゆるケースに対応しております。ただしこの業界の技術は日進月歩で進化していますので、日々の勉強が欠かせません。特に当社は少し特殊な分野の電気工事を手掛けていますので、デジタル・アナログ両面の技術が必要なのですよ。
加納 お仕事の内容を具体的にお聞かせ下さい。
竹内 当社は主に自動車生産工場内での自動制御装置や電気設備の設計・施工を行っています。生産ラインで上下左右に動く機械をよく目にされると思いますが、その動作をプログラミングするのが私どもの仕事。専用のソフトを使って動作の方向や順序、力加減などを操っていくのです。
加納 生産の要となる、工場の頭脳部分ですね!
竹内 はい。少しでも不備があれば生産ラインがストップし、お客様に大きな損害を与えてしまいます。それだけの重責を任されていることはプレッシャーでもありますが、同時に大きなやり甲斐を感じています。
加納 自動車工場がメインの顧客とおっしゃっていましたが、現在の不況の波を一番被っている業界なだけに御社にも影響が及んでいるのでは?
竹内 確かに厳しい状況ではありますが、悲観するばかりではなく、お客様とともに乗り越えていきたいと思っています。今回の不況は諸外国からの余波であり、日本のメーカーさん自体の経営問題ではありません。それに自動車が交通手段として否定されない限り、どんな時代になろうとも需要がゼロになることもない。もちろん現状を耐えうる力がない企業は淘汰されていくでしょうが、景気は必ず息を吹き返すと信じていますので、それまで当社もしっかりと足を踏ん張りたいと思っています。
加納 お言葉から確たる自信が窺えるのは、これまで築き上げてきたお客様との関係が基盤にあるからなのでしょう。
竹内 そうですね。これまで手掛けてきた全ての現場で最善を尽くしてきましたし、お客様もちゃんとそれを見て下さっていると信じています。私はどんな仕事も、人と人との信頼関係で成り立っていると思うのです。だからこそ今後どんな状況になろうとも、お客様との関係だけは大切に守り抜いていくつもりです。
加納 それが社長のポリシーなのですね。では最後に、今後の展望を。
竹内 現在のスタイルを維持しながら、より多くの人材を迎えられるようになれればと考えています。有能な人を育て、お客様に貢献していきたいですね。そしてキャパシティーが広がれば、新たな分野の開発に取り組んでみたいと思います。この周辺には様々な分野で活躍されている企業がたくさんありますので、当社の技術でサポートできれば嬉しいですね。今後も周囲と連携をとりながら活路を見出していくつもりです。
▼『テーシック』が拠点を据える愛知県は、言わずと知れた自動車大国。同社が自動車生産ラインに精通しているように、多くの企業が大手メーカーのお膝元で発展を遂げてきた。しかし世界同時不況の波は自動車業界を直撃し、愛知県下では逆風が吹き荒れているのが現状である。
▼そんな中、竹内社長は「ピンチはチャンスと表裏一体だ」と力強い言葉を放つ。従来のやり方で行き詰まっているのならば、いっそのこと新しい方法を考えてみてはどうかと言うのだ。たとえばシステムの刷新を図れば、飛躍的に効率がアップするかもしれない。そうやって固定概念を拭い去り、これまでと違う視点を持つだけでもチャンスを呼び寄せられるはずだ。
▼そして、もし生産ラインでの効率化を求めるのならば同社の存在を思い出してほしい。自動制御装置から工場全体の電気設備まで一貫して設計・施工できる独自の技術で、最も効果的な案を提示してくれるだろう。今、地域経済に求められているのは業界の枠を超えて連携を取り合うことではないか。今後の同社の活躍がきっとそれを証明してくれるはずだ。