布川 まずは御社の沿革から。
尾花 当社は、父が昭和40年に創業した「尾花刺繍」が母体となっております。長年アパレルメーカーの下請け工場として刺繍加工を行っていたのですが、バブル崩壊後は生産拠点がどんどん中国へと移ってしまい売上が激減。そこで新たな道を、と平成10年にエンドユーザー向けのオリジナルワッペンの製造を開始したのです。ちょうどインターネットが普及し始めたころでもあり、ホームページを立ち上げて直販を開始しました。
布川 今はネットショッピングも当たり前の時代となりましたが、当時はまだ始まったばかりだったでしょう。先見の明がおありだったのですね!
尾花 とは言っても、当初は売上もなく、工場の負債を返すので必死でした。そのうち徐々に手応えを感じるようになり、軌道に乗り出したのです。
布川 その勝因は何だったのですか。
尾花 1枚からでもお作りするという対応力と、工場直販だからこその低価格だと思います。その後、お客様のご要望に応じてワッペンだけでなく、リストバンド刺繍や帽子、エンブレム、ユニフォームなど多彩な商品展開をするようになりました。得意分野である刺繍はもちろん、今ではTシャツなどにダイレクトに顔料インクを吹き付けて印刷する「インクジェットプリント」や、ラバーシートを熱プレスで圧着する「カッティングラバー転写プリント」、刺繍ロック加工を施した「クロス転写ワッペン」など加工方法も様々です。画像やイラストさえあれば、わずか数分でオリジナルワッペンが出来上がるのですよ。
布川 プリントの商品を拝見しましたが、まるで刺繍のようですね!
尾花 刺繍では表現できなかったグラデーションも実現できますし、何より刺繍には限界があったスポーツウェアにも対応できるのが利点ですね。発色も良く、価格もお手ごろですから、お客様からもご好評を戴いております。
布川 けれど設備投資は大変だったのではありませんか。
尾花 私はこの仕事を始めて、お客様からの声や感想を直接戴ける喜びを知ったのです。中にはご丁寧にお礼状を戴くこともあって、大きなやり甲斐を感じるようになりました。ですから出来る限りのことをして、お客様に心から満足して頂ける、最良の品をお届けしたいのです。
布川 顧客はやはり個人の方が中心で?
尾花 そうですね。また、企業や学校、病院や官公庁など様々なところからご依頼を戴いています。インターネットを通じて全国各地に販路が広がっていますので、お客様からのご要望も実に多彩。その一つひとつにお応えしていくためにも、今年から新たにデザイン企画部を立ち上げました。少しでもイメージを具現できるよう、創造力を最大限に発揮して挑戦を続けていきたいと思います。
布川 最後に、将来の夢を。
尾花 いずれは、その場でお渡しできる実店舗も立ち上げたいと考えています。そして、今後どのような形に発展しようとも、心を込めて一つひとつの商品を作るという創業以来の伝統を守り続けていきたいですね。