佐藤 まずは御社の業務内容から。
岸野 当社では、主に墓石の設計・施工・販売を手掛けており、CADを使ってお客様の理想を追求しています。さらに材料を直接海外から仕入れているため、お安く提供いたしております。また、石材の種類も豊富ですから、どなた様にも、きっと納得していただけると自負しているんです。
佐藤 では、会社の沿革を。
岸野 当社は私の祖父が創業し、もともとは砂利屋でした。今から17年程前に石材店として活動するようになり、父を経て、今は私が代表を務めています。
佐藤 社長はもともと後継を考えていらっしゃったのですか。
岸野 当社を経営する父の姿を見て育ちましたが、父は「お前はやりたいことをやれ。ほかの仕事に就けないから家業を継ぐというのは勘弁してくれ」と私に言っていました。父の期待に応えるためにも、自分のスキルを高めるべく、大学時代に中国へ留学。大学卒業後は中国と取引をしている鋳物の商社に就職したんです。東京や名古屋で経験を積み、「30歳になる前に家業に入ろう」と考えていました。ところが、勤務してしばらく経った2007年7月に父が急逝。私はすぐに当社を継ぐか、それとも一度当社の営業を停止して数年後に再開するか迷いました。悩んだ結果、すぐに後継することに決めたんです。
佐藤 社長がすぐに会社を後継されたのは、賢明な判断だったと私は思います。一度営業を停止すると、お客様は離れていくものですから。
岸野 そうですね。すぐに後継して良かったと私も思います。ただ、勤務先をすぐに退職することができず、平日は名古屋の会社に通い、土日に当社の経営に携わるという生活を1カ月程送ったんです。毎週金曜の夜に東京に戻り、月曜の朝には名古屋に通っていましたね。その後、腰を据えて当社の経営を行うようになったんです。
佐藤 いざ会社の経営に携わってみて、いかがでした?
岸野 最初は大変でしたが、当社には長年働いているスタッフがいます。スタッフに色々と協力してもらえたから、今日までくることができました。スタッフには本当に感謝しています。
佐藤 現在、スタッフは何名?
岸野 私を含めて3名です。みんなで製品や会社のことについて様々な意見を出し合い、よく話し合っています。みんなで協力して、より良い製品づくり・会社づくりに取り組んでいるんです。
佐藤 意見が出し合える職場は、理想的ですよね。小柴さんは長くこちらで働いておられるのですか。
小柴 先代が経営していたころから働いています。現社長が会社を引き継いでくれて、私もうれしく思っているんです。
岸野 小柴さんの存在は心強いです。当社のことについて私が知らないことも彼はたくさん知っていて、非常に助かっています。
佐藤 社長が普段から心掛けておられることを教えてください。
岸野 柔軟な姿勢で仕事をすることです。昨今、時代の流れは非常に早い。極論ですが、この先、散骨などが主流になってお墓が必要とされない時代が来るかもしれません。当社を長く経営するためには、時代の変化に柔軟に対応することが大切だと思っています。そのため、新しい製品の開発にも積極的に取り組んでおり、現在はペット墓石や香炉、墓誌、灯篭、表札なども扱っています。
また、お客様との信頼関係も大切にしています。「会社とお客様」ではなく、「私個人とお客様」の信頼関係を築くようにしているんです。『岸野石材』からではなく、私から製品を買いたいと思ってくださるお客様を増やしたいですね。
佐藤 ところで最近は生前にお墓をつくる人が増えているとか。
岸野 そうですね。「死んだ後、子どもたちに迷惑を掛けたくない」と考え、生前にお墓をつくる人は増えています。また、「自分が入る墓を事前に見ておきたい」というのも、生前にお墓をつくる理由の一つのようですね。
佐藤 最後に、社長の目標を。
岸野 会社の規模を大きくしようとは思っていません。自分の目の届く範囲で会社を経営していきたいと考えています。また、先ほども申し上げましたが、「お客様との個人としてのお付き合い」をこれからも大切にしていきたい。たまに遠方に足を運ぶこともありますが、当社の活動エリアの中心となるのは地元です。これからも地域に密着した活動を続け、地域からの信頼に応えられる会社でありたいと考えています。
佐藤 陰ながら応援しています。本日はありがとうございました。
▼先代社長である父が他界し、2007年夏に急遽『岸野石材』の代表取締役に就任した岸野瑛治氏。以来、設計や営業などの仕事を必死に覚えた。氏を動かしていたのは、「お客様の要望に応えたい」という気持ち。今でも、その一心で仕事に取り組み続けているのだ。
▼「サラリーマンの場合は『営業』や『生産』『経理』など自分に与えられた役目を全うすればそれでいい。しかし、経営者になった今、私はすべての仕事を自分でやらなければなりません。大変ですが、やり甲斐も大きいです」と氏は語る。企画から設計・施工・販売まですべてに携わっているため、製品に対する思い入れは強いという。そしてその思い入れの強い製品を見て顧客が喜んでくれることが、今何よりもうれしいそうだ。
▼また、顧客の要望を確実にカタチにするため、氏は顧客と密にコミュニケーションをとっており、さらに経験から培ってきた技と感性をもとに、“顧客の想像を現実にする”提案も積極的に行っている。