具志堅 はじめに藤川社長のこれまでの歩みをお聞かせください。
藤川 父がクリーニング業を手掛けており、私も手伝いをしているうちに自然と家業に入っていきました。とはいえ、入社当初はそこまで深く業務について考えていたわけではなかったんです。しかし業務に携わるうちに、「真のお客様満足」を追求するようになりましてね。気がついたことがあればその都度、改善してきました。それらが功を奏し、現在では『ロイヤルチェーン』として群馬を中心に埼玉、東京を含め約70店舗を展開するに至っています。
具志堅 それはすごい飛躍ですね!
藤川 チェーン展開については、父が1970年ごろに着手しましたから、基盤はすでにできあがっていたのですよ。
具志堅 そのころからチェーン展開に乗り出されるとは、お父様は先見の明をお持ちだったのですね。しかし、店舗数をそれだけ伸ばされたのは社長の手腕があってこそだと思います。何が成功の要因だとお考えですか。
藤川 クリーニング業は「お客様の衣類を美しくする」ことが大前提。その上で、「スピード」という付加価値を意識しました。当社の店舗は、朝お預かりして夕方には仕上げてお返しすることを徹底しているんですよ。さらに、染み抜きなど、業界で行われているサービスは全て取り入れています。使用する機器も高性能な新機種が出ればすぐに購入。効率・品質の向上のためならば、投資は惜しみません。
具志堅 ことさらに顧客満足度を高めておられるのですね。
藤川 サービス業は、お客様を喜ばせることに貪欲でなくてはなりません。実は、当社では美容室も経営していましてね。当初は私の身内が美容室を経営したいということで、軽い気持ちで出店に協力したのです。しかし同じ接客業ということもあり、クリーニング業との相乗効果で美容室も5店舗まで増えました。直接お客様に触れ、美しさを提供するという美容業務からは学ぶことが多いですね。スタッフも若手が集い、社内の活性化を図ることもできました。
具志堅 互いに影響を与え合うことで成長されているのですね。しかし、それだけ店舗が多いと各店の状況を把握するのは大変でしょう。
藤川 美容室経営は各スタッフがきちんと報告をしてくれますので、それに対してのアドバイスを行うなどサポートにまわっています。クリーニング店については、できる限り自ら店舗訪問を行うようにしているんですよ。店の様子やお客様、スタッフの表情などから店の状況を分析することで、顧客満足度の向上につなげています。
具志堅 多くの店舗を見回るのは大変でしょうが、社長のその行動力が御社を成長させてきたのでしょうね。
藤川 化粧室がある店舗に行った時は、まず化粧室の掃除からはじめるんです。良い店は目立たない場所ほどきれいなもの。お客様が使用する場であるのなら、なおのこと美しさを保たなければ。社長自ら実践することで、皆に“徹底する姿勢”を伝えています。
具志堅 言葉ではなく行動で示す──その方が説得力がありますよね。
藤川 無論、言葉も大切です。私は2008年で、代表取締役に就任して20年を迎えるのですが、これまでを振り返って「ありがとう経営」という取り組みを始めました。これは、スタッフが周囲の人々に「ありがとう」と言ったり、言われたりということを意識してやってもらおうという運動なのです。「ありがとう」と声に出すことで、感謝の念が生まれてきます。「ありがとう」の言葉を通してサービスの原点を見つめ直してほしいですね。
具志堅 「ありがとう」は、本当に人を気持ちよくさせる言葉ですよね。しかしすでに70店舗を展開しておられ、サービスの形は完成されているのでは?
藤川 クリーニング、美容などのサービス業に“完成”“完璧”はあり得ません。なぜなら、こちらが120パーセントのサービスができたと思っても、お客様は80パーセントほどしか満足されていないかもしれないからです。「常に向上を目指す」との気持ちで、お客様の満足を追求しています。
具志堅 その姿勢が、『群馬中央ドライ』さんの発展を支えてきたのですね。今後の活動については、いかがお考えですか。
藤川 会社の規模を広げるのではなく、スタッフ一人ひとりが「ありがとう経営」を実践してほしいと考えています。お客様や同僚はもちろん、家族にも「ありがとう」と言える人間関係をつくってほしい──。良好な人間関係の中で楽しく仕事をして、様々なことを学んでもらいたいと思います。皆が業務に励める環境を用意することが、社長である私の仕事。一人ひとりが向上心を持って自らの業務に励めば、自ずと結果は表れるものです。今後もお客様の様々な「美しさ」「便利さ」を追求するため、スタッフ一丸となって頑張って参ります。
具志堅 今後の展開に期待しています。 |