渡辺 横田社長が花卉産業に携わるようになったきっかけとは?
横田 実家がもともと農業を手掛けていたんです。かつてこのあたりは落花生や大根、西瓜などを多く栽培していたのですが、時代の影響を受けて父が苺苗の栽培をスタート。しばらくは苺栽培を主軸に手掛けていたんです。その一方で、地域農業における高齢化がどんどん進んでいきましてね。学業を終え農業に携わるようになった私も、この状況を打破しなくてはと新たに転作に着眼。花卉栽培を手掛ける『チャイルドフラワー』を設立し、ガーデニングブームに乗って業績を伸ばしてきました。
渡辺 どのような商品を扱っておられるのですか。
横田 約200種類の花に加え、苺や野菜などの農産物です。主にカットパックによる花壇苗を扱っていましてね。これはガーデニングや寄せ植えにぴったりの、欧米では主流の花苗の形。当社では専門農家によって丁寧に育てられたプラグ苗を、温室にて数週間心をこめて管理し、つぼみを付けるまで育てていきます。
渡辺 豊富な種類を扱っていらっしゃるのですね。高齢化を危惧しての転作ということですが、現況はいかがですか。
横田 ここ千葉は首都圏に近くいい環境が整っているのに、畑がどんどん空いていっている状態。農家を辞めてしまう方が後を絶ちません。それで、今後は「観光」や「直売」を軸に、都会の方にもっと農業を知ってもらおうと考えていまして。「農業=畑でものを作る」というイメージがあると思いますが、「色んな人に参加してもらえるレジャー」として認識してもらえるよう、農業に携わる者として仕掛けていきたいと考えています。
渡辺 最近は、農場での収穫体験の人気が高いようですね。やはり都会人にとっては特別な体験のようです。
横田 収穫の喜びを味わってもらえるだけでも十分です。種まきや、苗植えをはじめとする「管理」は我々が手掛け、収穫を一般の方にしてもらう……皆が喜んでくれて、我々も商売になれば、それも一つの農業の形だと思います。それに、「農業体験」は、生産者と消費者がふれあえる貴重な場でもある。量販店の台頭から、生産者は流通先や販売先を細かく知ることができません。直接消費者の声を聞くことができるのは、生産者にとって非常に大きなやり甲斐であり、喜びなのですよ。消費者と農家の距離をもっと縮められたら……と強く思います。
渡辺 スーパーで販売されている野菜にも、最近は生産者や農法などの表示がなされるようになってきました。
横田 新たな時代の幕開けですよね。「国産」を食すことが贅沢な時代になりました。私は、自分で作ったものを食すことが、最高の贅沢だと思うのですが……。若い世代を中心に、農業の魅力を伝えることも農家としての使命だと思っています。そのためにも、今後は「農業」自体を変えていかねばならない──。ただ、実際に農業に携わっている者だけで農業の将来を考えても、変化は望めないでしょう。様々な分野の色んな視点から農業を見つめることが大切です。農業とは何なのか──心の豊かさを求める場所なのか、レジャーの場所なのか……農業従事者として、たくさんの声を聞いていかねばなりません。
渡辺 生活に密着した第一次産業として、今後はその在り方が問われていくのでしょうね。
横田 ええ。ただ、どんな時代にあっても、わたしは「農」を生業としていきたい。それだけは変わりません。これからも農業とまっすぐに向き合いながら、「メジャーなビジネスにする」ことを目標に活動を続けるつもりです。
渡辺 どのようなビジョンを持っていらっしゃるのですか。
横田 農業をしたい人を集めること、またそういう方が農業を始められる場所を確保することです。これは、今後の人生におけるテーマだと考えていましてね。農業に参入する人の「新しい感覚」が入ってくれば、業界もまた活性化するでしょうし、「農業をメジャーにすること」で農業人口も増え、自給率に対する意識も高まるのではないでしょうか。
渡辺 まずは農場に「足を運んでもらうこと」ですね。農業の未来をしっかりと見据えていらっしゃる。
横田 たとえば、精神疾患の予防医学という見地で、医療関係と提携して農業体験を通して豊かな心を育む取り組みを考えています。今は、昔ほど土に触れる機会も多くありません。土を、そして農業を通して、「温もり」を感じてもらえたらと思います。 |