村野 御社のお名前を伺って、「建築店」とは珍しいなと感じました。
吾妻 そんなに多くはないかもしれませんね。社名を「吾妻建築」ではなく、「吾妻建築店」としたのは、仕事に対する信念を表したかったからなんですよ。
村野 ほう。詳しくお聞かせ願えますか。
吾妻 私どもでは建築・リフォームを手掛けていますが、自分自身の仕事を“建てて終わり”とは考えていません。私どもが提供するのは、長きにわたってお客様を支える住まいですから、アフターフォローまでトータルに手掛けたいんですよ。単なる建築会社ではなくて、どんなことでも相談できる店でありたいという思いを込めて、「建築店」としました。
村野 そういうわけだったのですね。それでは「吾妻建築店」を立ち上げられるまでの社長の歩みをお聞かせください。
吾妻 工業高校を卒業した後、大手ゼネコンに就職し、ビル・マンション建設の現場監督を務めました。何百人もの職人さんを切り回していく責任ある仕事をさせていただいたおかげで、多くのことを学ばせていただきましたね。そして、10年ほど勤めた後、仲間と共に独立。2004年にそちらを離れ、独自に「吾妻建築店」を立ち上げたんですよ。
村野 社長は建築関連の資格はもちろんのこと、ファイナンシャル・プランナーなどの資格も取得しておられるとか。
吾妻 はい。昔から建築業界は、“経験”がものを言う世界でした。そのバックボーンには“信頼”があったと思います。でも最近では、業界においてさまざまな問題がクローズアップされていますよね。ほんの一部で行われていたことが業界全体の信頼まで損なってしまい、“経験”はもはや信用材料としては弱くなっていると思います。一方で資格は、信用材料として参考にできる確かなものと言えるのではないでしょうか。資格は、自分自身が考えてやってきたことが、正しいことであると証明するもの。しかるべきところから認定を受けていれば、お客様にも安心していただけますからね。こういった形でプロフェッショナルであることを示すのは、建築業界に携わる者の使命だと思います。そして、ファイナンシャルプランナーの資格を取得したのは、私どもの業務が“建てて終わりではない”ことにつながっているんですよ。施主様は多額のお金を支払って住宅を購入されます。その際の資金計画、またその後のライフスタイルにまで細やかに気を配ってさしあげたい──それこそがトータルサービスだと思うんです。
村野 なるほど。こういったお考えの業者さんが身近にいるととても心強いですね。さて、スタッフの方に日頃からお話していらっしゃることはありますか。
吾妻 はい。私は“このくらいでいいだろう”という妥協が嫌いなんです。ですからスタッフたちには、後々まで気になってしまったり、後悔するような仕事は絶対にしないようにと話しますね。実は、今までには違法な建築を目の当たりにしたこともありました。いくら建築基準法が改正されても、業界の人たちが行動を起こさなければ何も変わらないと思うんです。建築とは、住まう人の命を預かるものであり、生活を担うもの。住まう人にとって快適どころかストレスになってしまうような住宅は、つくるべきではないと思います。
村野 今後の展望をお聞かせください。
吾妻 私は、組織の規模を大きくすることよりも、地域密着型の“建築店”として地道に活動を続けていきたいと思います。また、当社を拠点として情報を発信し、地域ぐるみで情報を共有することで、より良いものや本当に良いものをつくる“輪”を拡げたいですね。 |