三ツ木 「タイヤショップ早野」さんでは新品・中古のタイヤを豊富に取り揃えていらっしゃるとか。創業されたのは鍔本社長のお父様だそうですね。
鍔本 はい。現会長である父が立ち上げました。父は魚屋や八百屋など様々な商売を経て、廃タイヤを回収する愛知の会社で働いたんです。その後、独立を決意し、ここ本巣で廃タイヤの回収業をスタート。それが当店の始まりです。
三ツ木 会長はどのような方ですか。
鍔本(誉) とにかく真っ直ぐな人。周囲からどう見られようとも、自分が信じた道を一直線に突き進むタイプですね。また、困っている人がいると放っておけない人で、“寅さん”のような人なんですよ(笑)。
三ツ木 人柄の良さが窺えますね。社長はいつ頃からこちらで?
鍔本 17歳からです。当初はトラックの助手席に乗り、父についてタイヤの回収をしていました。親子での仕事を通じて商売のノウハウを学べ、そのすべてが現在の糧になっています。父と共に働いた時間は、有意義なものでした。
三ツ木 現在は社長の奥様もご一緒に働いておられるそうですね。
鍔本(誉) ええ。約3年前に主人と結婚し、以来、一緒にお店に出ています。もちろん、タイヤなんて触るのも初めてです(笑)。同居している会長夫妻も結婚されてから、ずっと一緒に働いていると聞き、「商売は夫婦で力を合わせてやっていく」という考えに共感しました。
三ツ木 二代目としてのプレッシャーは感じていらっしゃいますか?
鍔本 もちろんです。でも父と比較されることについて、嫌だとかやりにくいと感じることはありませんね。私と父は全く違うタイプで……従業員の育て方や店の雰囲気づくりは父と全く同じようにとはいかず、できるとも思いません。ただ、商売をしていく中での信念は父から譲り受けたものを守りたいと思っています。父と比較していただけることは、息子として嬉しいですし、改めて父を誇りに思う瞬間でもありますね。
三ツ木 では、「タイヤショップ早野」さんはお客様に恵まれていらっしゃるとのことですが、その要因とは何だと思われますか。
鍔本 当店の創業以前、岐阜に中古タイヤの販売を行っている業者はなく、岐阜で初めての中古タイヤショップなので、皆さんに注目していただけたのではないでしょうか。当店は岐阜の南部にあたる美濃地方に位置します。毎年雪は降りますが、常に積もるわけではないので、「新品の雪用タイヤは価格が高いしもったいない……」とおっしゃるお客様が多く、そこで、中古の雪用タイヤを提案できる当店は経済的にも喜んでもらえたのではないでしょうか。
鍔本(誉) 当店が目指すのは、地元密着型。利益云々よりもお客様のお役に立つことを第一に商売をしていることも、お客様に懇意にしていただける理由だと思います。利益は二の次、まずはお客様に喜んでいただけるサービスを提供すること─それが「タイヤショップ早野」。「金は天下の回りもの」というのが当店の考えなんですよ(笑)。
三ツ木 御社独自のサービスなど、何かありますか。
鍔本 当店では、タイヤ専門店として、迅速な作業を心がけ、1台あたり4分〜15分で作業します。でも、早ければ良いというものではありません。もちろん真心をこめ、丁寧で確実な仕事を提供するよう心がけています。
また、本巣本店は柿畑のど真ん中に位置しており、その立地条件を活かして、地元の方から柿を譲っていただいているんです。待ち時間を使ってお客様に柿を楽しんでもらったり、お土産としてプレゼントしたりと、家族連れのお客様には特に喜んでいただいています。私はまだ若いですし、上手い商売の仕方は分かりません。とにかくお客様の声に、素直に耳を傾け、積極的に取り入れながら店づくりをしているんです。
三ツ木 スタッフの方々の年齢層は?
鍔本 17〜65歳までと、年齢層は幅広いのですが、中心となるのは20代。世代を超えた絆があり、みんな一つの家族のようなんですよ。
三ツ木 この仕事を始められてから今日までを振り返ってみていかがですか。
鍔本 周囲から見ると順風満帆のように見られがちですが、冷静に振り返るとなかなか波瀾万丈な人生だと思います。ただし、それを“苦労の人生”と考えたことはありませんね。それはきっと父の影響でしょうね。父は状況が困難であればあるほど、前向きになり、困難な状況を楽しむ人なんです。
鍔本(誉) 私は女性としてお義母さんの影響を少なからず受けています。義母は陰からしっかり主人を支え、決して、出すぎず、常に“理解すること”を心がける人です。私はまだまだ商売人の妻としては修業が足りないので、義母には教わることが多いですね。
三ツ木 最後に、今後の展望を。
鍔本 もちろん商売をしている以上、店舗展開は一つの目標ですが、何より人とのつながりを大切にし、自分たちにしかできないことを探していきたいと思います。人に喜んでもらえることは嬉しいし、“ありがとう”という言葉ほど人を幸せにしてくれる言葉はないですから……。 |