岡本 梶原代表は、いつ頃から大工を志すようになられたのですか?
梶原 中学校を卒業してすぐに棟梁に弟子入りを志願したんです。私には2歳上の兄がいるのですが、その兄が一足先に大工の世界に飛び込んでおり、自分がその後を追う形になりましたね。桶屋を営む父の仕事ぶりを見ていて、物づくりの魅力を知っていたことも進路を決めるきっかけとなりました。父が、私が大工を目指すことを応援してくれていたことも大きかったですね。ただ、住み込みでの修業でしたので、洗濯も自分でしなくてはならず、何度か辞めたいと思ったこともありましたよ(笑)。友人が青春を謳歌しているのを横目に見ながら、黙々と働くということが辛かったのでしょうね。
岡本 遊びたい盛りの時だから仕方ないでしょう。よく頑張られましたね。
梶原 ええ、何とか4年間の修業と1年間のお礼奉公を無事に終えました。それからすぐに、別の棟梁のもとにも弟子入りしたのですが、職人の技の違いを体感することに。お陰で幅広い視野で技術を学ぶことができたと自負しています。2人の棟梁は、どちらも厳しくも温かい人柄で、大変可愛がっていただき、大変感謝しています。その後は、同じく大工として研鑽を重ねていた兄と共に独立し、10年ほど一緒に働きました。しかし、「自分一人で力を試してみたい」という思いを抑えきれずに、兄の元を離れ「梶原工務店」をスタートしたのです。
岡本 お一人で顧客を獲得するのには大変な苦労があったと思います。代表がお仕事の上で大切にされていることは?
梶原 とにかくお客様とのコミュニケーションをしっかり取ることですね。お客様はかなり細かい点にまで要望を持っておられることが多いのですが、それをうまく表現できない方もいらっしゃいます。だから私は図面上だけでご説明するのではなく、現場見学会を開催し、直接家を見ていただくのです。「『梶原工務店』は、こんな家を建てるんだ」と皆さんに知っていただき、実際に完成した家に触れていただくことで、その後の打ち合わせが円滑に進みます。中には、「全て梶原さんに任せるよ」と言って下さる方もいるのですよ。
岡本 御社が建てた家が、そのまま広告塔になり、お客様からの信頼を集めているのですね。
梶原 そうですね。兄の元を離れ、ゼロからスタートした私が今日まで歩んでこられたのは施主様の紹介や評判が口コミで広がり、お客様が来て下さったから。その信頼は決して裏切れません。常に真剣勝負です。私は今でも、毎年流行が変わる住宅デザインなどの情報収集を欠かさず、大工職人として、一生涯が修業だと思っています。
岡本 代表の気概が窺えます。ところで、ご子息も大工の修業中だとか。
【梶原 淳司】
梶原代表のご子息。学業修了後、工務店に就職し、現在は東京で技術の習得に全力で取り組んでいる |
梶原 ええ、息子は大学卒業後に東京の工務店に入社し、日々技術習得に汗を流しています。私は息子に「後を継いでほしい」と言ったことはなかったのですが、自らこの世界に飛び込んできてくれて本当に嬉しい。後継者不足に悩む経営者も少なくないですから、私は本当に恵まれていますね。息子と一緒に働くことが今から楽しみで仕方がないんですよ。
岡本 代表がお父様の背中から物づくりの楽しさを知ったように、ご子息も代表の背中を見てこの世界に魅力を感じられたのでしょう。今後の展望は?
梶原 こちらの作業場を広げ、もっと多くの仕事を引き受けられるようにし、より良い形で息子を迎えたいと思っています。うちには頼りになるベテランの職人がいますから、彼らと息子がいれば心強い。今以上に「梶原工務店」を大きく発展させていく自信があります。私もまだまだ現役で頑張ります! |