株式会社 ルネッサンス・エナジー・リサーチ
代表取締役社長・工学博士
東北大学 客員教授 大学院工学研究科
北京科技大学 客座教授 機械工程学院
大分大学 客員教授 工学部
 岡田 治

足跡:大阪府出身。東京大学工学部工業化学科修士課程を修了後、1977年、大阪ガスに入社し、約27年間にわたって研究畑を歩んだ。その間、東北大学にて工学博士号を取得。2004年に「ルネッサンス・エナジー・リサーチ」を創業し、現在に至る。

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●科学の恩恵を地球規模で還元したい
触媒研究において常に第一線で活躍してきた岡田社長。東京大学工学部工業化学科を出た後、大阪ガスに入社して約27年間にわたって勤務し、その間東北大学で工学博士号も取得している。都市ガス製造プロセスや燃料電池用改質システムなどの研究開発に従事した。その間、社長の実績は高い評価を受け、科学技術庁長官賞や燃料協会論文賞、日本ガス協会論文賞などを受賞した輝かしい経歴を持つ。「科学のもたらす恩恵を地球規模で還元していきたい」──社長の前には、無限の可能性が広がっている。

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「触媒」と「水素」をキーワードに、エネルギーの高効率化と地球に優しいエネルギーを両立できる未来を創造する企業、それが「ルネッサンス・エナジー・リサーチ」。優秀なブレーンを携えた、触媒研究の第一人者である岡田社長率いる同社が、エネルギーの分野で高度な触媒技術を展開する。本日は俳優の佐藤蛾次郎氏が同社を訪れ、その躍進の秘訣に迫った。

佐藤 早速ですが、岡田社長が「ルネッサンス・エナジー・リサーチ」を創業されるまでの歩みからお聞かせ下さい。

岡田 「大阪ガス」に約27年間勤め、触媒の研究に携わっていました。退職して同僚と共に「ルネッサンス・エナジー・リサーチ」を、そして「ルネッサンス・エナジー・インベストメント」という2社を創業したのは2004年のことですね。創業に際しては、私の学生時代からの恩師である故・柳田博明先生に会長に就任していただきました。柳田先生は、元東京大学先端科学技術研究センターの所長を務めておられた方で、その後、名古屋工業大学の学長を務められていたのです。残念ながら2006年に急逝され、当社としても大きな柱を失うこととなりました。

佐藤 そうでしたか。お話が少し戻りますが、大阪ガスをお辞めになって、独立・起業を決意されたきっかけというのは?

岡田 大阪ガスでの研究におけるテーマは、あくまでもガスに関することに限定されてしまいます。しかし、私が研究課題とする触媒技術は、もっと多方面の分野にも応用できるものであるはず。もっと自由に、もっと幅広い世界で研究してみたいと考えたことが、独立のきっかけです。技術は世界中に通じるもの。念願通り、ワールドワイドなビジネスを展開しています。私がこれまでに取得した触媒に関する技術や特許も、世界中を相手に販売やライセンス活動ができるようになり、世界でも名の知れた企業を取引先に据え、事業を拡張しています。

佐藤 研究には多額の費用が必要となるかと思いますが。

岡田 国をはじめ、公的機関が研究費用を負担する提案公募制度を活用するなど、強力なバックアップ態勢のもと研究を進めています。今年も当社の研究が近畿の公的機関に採択されることが決定し、その実施計画書を作成している最中なんですよ。

佐藤 その採択のシステムとは?

岡田 新技術の開発には資金が必要ですので、特に規模の小さい会社になるとすべての費用を調達するのは困難。しかし、規模の大小にかかわらず、素晴らしいアイデアを持つ会社はたくさんあります。資金面が障害となり、そのアイデアが眠ったままになるのは、あまりにもったいないことです。そこで、国や公的機関が優れたアイデアを公募し、研究費用を補助してくれるというわけです。大阪ガスに在籍中の2003年のことですが、私は大型の国家プロジェクトを立ち上げました。その時の予算は、約60億円。当時所属していた大阪ガスの研究所の、全体予算をはるかに超えていました。採択されて国がバックアップしてくれることになれば、よりスケールの大きな研究が実現するというわけですね。さらに成果や特許は、その実施者のもの。我々研究者にとっては、嬉しいシステムです。その分、公募の競争率は非常に高いですがね(笑)。

佐藤 御社に対する評価の高さが窺えますね。現在はどういった研究を?

岡田 現在研究中の水素製造用の触媒は、日本だけでなく北京の大学やポーランドの国立研究所の先生方と共に取り組んでいます。大阪ガス時代から取り組んでいる燃料電池の水素発生装置では、私がISO規格化の日本側のリーダーになりました。現在もその役割は引き継いでおりますし、2006年9月には北京科技大学の客座教授に招かれました。国内では東北大学と大分大学で客員教授を務めています。当社の仕事と合わせて忙しく飛び回っていますよ。

佐藤 ご多忙ぶりが伝わってきます。人材面も鍵になってきそうですね。

岡田 常勤、非常勤の契約社員、スタッフなど約20名おり、博士号を持つ者が多いですね。スタッフの拠点は、大阪だけでなく、仙台や京都、神戸、九州などに点在しています。例えば神戸のスタッフ3名はみな、神戸大学内のラボラトリーで活躍するドクター。大学の博士コースで学ぶ女性スタッフもおり、2009年には博士号を取得する予定です。これだけ優秀な人材が集まってくれたことに感謝すると共に、今後への期待でいっぱいです。人材を鍛え、世界に負けない頭脳集団をつくりあげていきたいですね。

佐藤 では最後に、今後の抱負をお聞かせ下さい。

岡田 人類の将来は、エネルギーの高効率化と地球に優しいエネルギーをどのようにして両立させるかがテーマになるでしょう。鍵になるのは、「触媒」と「水素」。当社はエネルギー分野での触媒技術を推進し、地球環境を考え続ける構えです。



明日を切り開く経営者たち──その戦略と視点

 炭化水素の水蒸気改質法による水素製造技術をベースに、燃料電池を含むエネルギー・水素分野を中心とした触媒・プロセス技術の販売・ライセンス、化学プロセス・プラントの設計・エンジニアリング、その関連分野における研究の受託……専門性の高い分野において幅広く活躍する「ルネッサンス・エナジー・リサーチ」。これまでに受託研究を行った国家プロジェクトは、大阪ガスや三菱重工業などと共同研究した「燃料電池自動車用DME低温水蒸気改質システムの開発」など多数。確かな技術によって積み重ねられた実績が、日本の将来を見据えた事業を展開する同社の躍進を支えている。

対談を終えて

「専門性の高い岡田社長のお話に、目の前に新たな世界が広がるようでした。触媒の研究をライフワークとされている社長は、今後ますます活躍のフィールドを広げていかれることでしょう。グローバル化が進む現代、国境を越えたご活躍を期待しています」(佐藤蛾次郎氏・談)


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