佐藤 早速ですが、岡田社長が「ルネッサンス・エナジー・リサーチ」を創業されるまでの歩みからお聞かせ下さい。
岡田 「大阪ガス」に約27年間勤め、触媒の研究に携わっていました。退職して同僚と共に「ルネッサンス・エナジー・リサーチ」を、そして「ルネッサンス・エナジー・インベストメント」という2社を創業したのは2004年のことですね。創業に際しては、私の学生時代からの恩師である故・柳田博明先生に会長に就任していただきました。柳田先生は、元東京大学先端科学技術研究センターの所長を務めておられた方で、その後、名古屋工業大学の学長を務められていたのです。残念ながら2006年に急逝され、当社としても大きな柱を失うこととなりました。
佐藤 そうでしたか。お話が少し戻りますが、大阪ガスをお辞めになって、独立・起業を決意されたきっかけというのは?
岡田 大阪ガスでの研究におけるテーマは、あくまでもガスに関することに限定されてしまいます。しかし、私が研究課題とする触媒技術は、もっと多方面の分野にも応用できるものであるはず。もっと自由に、もっと幅広い世界で研究してみたいと考えたことが、独立のきっかけです。技術は世界中に通じるもの。念願通り、ワールドワイドなビジネスを展開しています。私がこれまでに取得した触媒に関する技術や特許も、世界中を相手に販売やライセンス活動ができるようになり、世界でも名の知れた企業を取引先に据え、事業を拡張しています。
佐藤 研究には多額の費用が必要となるかと思いますが。
岡田 国をはじめ、公的機関が研究費用を負担する提案公募制度を活用するなど、強力なバックアップ態勢のもと研究を進めています。今年も当社の研究が近畿の公的機関に採択されることが決定し、その実施計画書を作成している最中なんですよ。
佐藤 その採択のシステムとは?
岡田 新技術の開発には資金が必要ですので、特に規模の小さい会社になるとすべての費用を調達するのは困難。しかし、規模の大小にかかわらず、素晴らしいアイデアを持つ会社はたくさんあります。資金面が障害となり、そのアイデアが眠ったままになるのは、あまりにもったいないことです。そこで、国や公的機関が優れたアイデアを公募し、研究費用を補助してくれるというわけです。大阪ガスに在籍中の2003年のことですが、私は大型の国家プロジェクトを立ち上げました。その時の予算は、約60億円。当時所属していた大阪ガスの研究所の、全体予算をはるかに超えていました。採択されて国がバックアップしてくれることになれば、よりスケールの大きな研究が実現するというわけですね。さらに成果や特許は、その実施者のもの。我々研究者にとっては、嬉しいシステムです。その分、公募の競争率は非常に高いですがね(笑)。
佐藤 御社に対する評価の高さが窺えますね。現在はどういった研究を?
岡田 現在研究中の水素製造用の触媒は、日本だけでなく北京の大学やポーランドの国立研究所の先生方と共に取り組んでいます。大阪ガス時代から取り組んでいる燃料電池の水素発生装置では、私がISO規格化の日本側のリーダーになりました。現在もその役割は引き継いでおりますし、2006年9月には北京科技大学の客座教授に招かれました。国内では東北大学と大分大学で客員教授を務めています。当社の仕事と合わせて忙しく飛び回っていますよ。
佐藤 ご多忙ぶりが伝わってきます。人材面も鍵になってきそうですね。
岡田 常勤、非常勤の契約社員、スタッフなど約20名おり、博士号を持つ者が多いですね。スタッフの拠点は、大阪だけでなく、仙台や京都、神戸、九州などに点在しています。例えば神戸のスタッフ3名はみな、神戸大学内のラボラトリーで活躍するドクター。大学の博士コースで学ぶ女性スタッフもおり、2009年には博士号を取得する予定です。これだけ優秀な人材が集まってくれたことに感謝すると共に、今後への期待でいっぱいです。人材を鍛え、世界に負けない頭脳集団をつくりあげていきたいですね。
佐藤 では最後に、今後の抱負をお聞かせ下さい。
岡田 人類の将来は、エネルギーの高効率化と地球に優しいエネルギーをどのようにして両立させるかがテーマになるでしょう。鍵になるのは、「触媒」と「水素」。当社はエネルギー分野での触媒技術を推進し、地球環境を考え続ける構えです。
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