株式会社 小口シャーリング
代表取締役社長 小口 直久

『小口シャーリング』の創業者である父親の背中を見て育つ。学業修了後はすぐに同社に入社。父親の体調が芳しくなかったことから、わずか27歳で社長職を引き継いだ。若さゆえの苦労も乗り越え、現在は企業としての新たなステージに目を向けている。

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1964年の創業後、株式改組を経て、現在は金属およびプラスチックの精密シャーリング加工、レベラーカット、マスキング加工などを手掛けている『小口シャーリング』。「顧客に喜ばれる製品づくり」をモットーに地元企業を中心に顧客を増やし、企業基盤を確立してきた。県内全域、全国へと販路の拡大を目指す同社の小口社長にインタビューを行った。

中島 『小口シャーリング』さんは、小口社長のお父様が創業されたとか。まずはこれまでの歩みをお聞かせください。

小口 当社は精密シャーリング加工を手掛ける会社として1964年にスタートしました。私自身は、創業者である父の背中を見て育ったものの、当初は教職を志していたのです。しかし、父の体調が芳しくなかったことから、学業修了後はすぐに当社へ。入社後は父について経験を積んでいったのですが、幼いころから父の姿を見ていたせいか、実際に修業をはじめてみると板材から必要なサイズを切り出していく「シャーリング加工」の奥深さに魅せられましてね。それからは、腰を据えて業務に携わるようになりました。そして、少しずつ父のサポートをするようになり、入退院を繰り返していた父に代わり社長代行を務めるように。そして27歳の時に、正式に代表取締役に就任した次第です。若く、未熟な私を認めてくださったお客様には随分助けていただきました。がむしゃらに経験を積んできたことが、人としての成長、そして会社の「基礎」を支えているのだと実感しています。

中島 若いころの経験すべてが、いまに活きているのですね。では、現在の業務内容を教えてください。

小口 金属およびプラスチックの精密シャーリング加工をメイン業務に、コイル材のレベラーカット、傷防止のためのマスキング加工、また、鉄金属素材やプラスチックなどの切板販売も手掛けています。アルミやステンレス、伸銅品など、ご要望のロットで提供させていただいているんです。

中島 非常に幅広い加工業を手掛けておられますね。お客様にはどのような方がいらっしゃいますか。

小口 地元の企業さんが多いですね。創業から現在に至るまで──お付き合いが40年以上にわたるお客様もいらっしゃいまして。加工機械があまり普及しておらず、性能に頼ることができなかった創業当初──。お客様と苦楽を共にしながら築いた父の信頼は、大きいですね。現在は、代替わりしてからお付き合いの始まったところを含め、毎月約70社のお客様とお付き合いをさせていただいています。

中島 それだけ長きにわたり取引を続けられる秘訣は、やはり人が紡いだ信頼関係にあるのでしょう。

小口 そうですね。何事も信用が第一。新規のお客様でも、満足いただける仕上がりを実現すれば、必ずリピーターになってくださいます。それを地道に続けてきた結果が現在なのだと思います。

中島 「プロフェッショナル集団」だからこそなせる技だと思います。

小口 お陰様で当社には、優秀なスタッフが揃っていましてね。一人ひとりが高いプロ意識で、責任を持ってしっかりと業務を手掛けてくれているので、私も安心して任せることができていますし、業績にもつながっているんです。広い作業スペースを確保するなど、作業環境の向上に努める……効率よい作業を実現することが、経営者としての責務だと認識しています。

中島 スタッフの方は、やり甲斐をもって作業に集中できそうですね。

小口 私は、「会社の規模を大きくする」といった目先の目標にではなく、「技」の研鑽に集中することが第一だと考えています。その結果、企業としての未来が自然と拓けてくるのではないでしょうか。

中島 なるほど。それでは最後に今後の展望をお聞かせください。

小口 これからも、お客様に喜んでいただける製品づくりを心掛けていく所存です。当社の加工技術がお客様の企業活動に、ひいては社会貢献に役立てれば幸いですね。また、今後は材料加工だけでは先細り。そこで、IT分野への進出を次なるステップに掲げています。仕事の幅を広げ、技術も会社もランクアップさせたい──。長野県全域、そして全国、世界へ……夢を一つひとつ叶えていきたいですね。

中島 信頼あるスタッフ、お客様と共に、これからも頑張ってください。陰ながらではありますが、私も応援しています!

常に新たな一歩を──

▼後継者不足が叫ばれる製造業界にあって、27歳という若さで後継者となった『小口シャーリング』の小口直久社長。若さゆえの苦労を乗り越え、先代のあとを引き継ぎ、ものづくりの火をともし続けている。1998年には株式改組を果たし、会社のロゴマークも一新して新たな歴史の一歩を踏み出した。ロゴマークには、“素材の可能性を無限に広げ、顧客ニーズに細やかに応えていく”という企業精神が込められている。

▼「会社が大きくなるのはあくまでも結果。決して目的には成り得ない」と語る小口社長。時代を読み、技術、アイデア等の要素を組み入れれば、事業の幅も広がり人材確保が必要になる。その結果、会社が大きくなる、というのが社長の持論だ。

▼“基礎”を築いた先代が培ってきた信用、磨きがかかる技を守りながら、新たなる一歩を踏み出していく『小口シャーリング』。長野県全域、全国、そして世界へ。「技」のスペシャリストの快進撃は、まだ始まったばかりである。

対談を終えて

「20代で社長職を引き継がれた小口直久社長。若さゆえのご苦労も多くあったと思いますが、『若いころの経験すべてが成長の糧となりました』という言葉から、経営者の“芯”を感じましたね。多種多様な加工を手掛けながら、現在は『次なるステージ』へ向けて、会社をランクアップさせることに傾注されています。技の進化と共に発展する『小口シャーリング』さんの今後が非常に楽しみです! 本日はありがとうございました(中島 史恵さん・談)」


本記事の内容は、月刊経営情報誌『現代画報』の取材に基づいています。
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