大西 「猪原工業」さんは設立されて間もなく複数の拠点を持たれるなど、意欲的な展開を進めておられるそうですが、猪原社長が建築業界に携わられたきっかけは何だったのでしょう。
猪原 学業修了後、設備関連の会社に就職し、水道工事に携わって以来、建築業界一筋に歩んできました。その後は建築業界の中で様々な職種を経験したのです。そして、斫工事の仕事に出会い、自分の適性を感じました。そこで、約4年の準備期間を経て2006年に独立。「猪原工業」を設立して神戸を拠点に事業を手掛けておりましたが、懇意にしていただいている取引先が関東に移られ、その後もお付き合いを続けてくださったことをきっかけに、関東にも拠点を置くことにしたのです。
大西 他のお仕事にはない魅力があったからこそ、斫工事のお仕事を一生の仕事に選ぶことになったと言えそうですね。
猪原 やる気と勢いがあったからこそ、「これしかない、独立しよう」と思えたのかもしれませんね。斫工事は、いろいろな現場に行くことができ、常に新鮮な気分で現場に出られるところが魅力的だと感じています。そういった変化に富んだ仕事が性に合っていたのでしょうね。
大西 「斫り」という言葉は、私には耳慣れないものなのですが、どのようなお仕事なのでしょうか。
猪原 簡単に言いますと、建設現場や土木工事現場などにおいて、コンクリート製品を削ったり、切ったり、壊したり、穴をあけたりする仕事です。たとえばビルの壁の場合ですと、空調ダクト用の穴をあける工事などを手掛けています。工事が終われば、私共の仕事は一般の方の目に触れることはありませんが、改修工事には欠かせない大切な仕事ですから、誇りを持って取り組んでいます。
大西 縁の下の力持ちというわけですね。お仕事の上では、どのようなことを大切にしていらっしゃいますか。
猪原 取引先の方々をはじめ、周囲の人々とのコミュニケーションを十分に図ることを心がけています。工事工程は自分一人で進められるものではなく、人の力、つまりチームワークが必要になります。コミュニケーションがしっかりしていればいるほど、意思疎通がスムーズになり、連携をとりやすくなります。さらに、一人の人間として信頼関係を築くことができれば、さまざまな形で交流もできる。それが新たな展開にもつながっていくと思うのです。
大西 では、お仕事で最も難しいと思われる点はどういったところでしょう?
猪原 段取りですね。段取りは、現場での工程をスムーズに進めるために不可欠なもの。ですから私共では常にあらゆる事態を想定し、前もって準備を進めています。現場で実際に作業に当たるスタッフに、事前に詳細な情報が伝えられていれば、アクシデントにも冷静に対処することができますし、万が一の事態を未然に防ぐことにもつながります。
大西 準備が結果を左右する点は、映画やドラマの撮影と同じです。現場のスタッフはもちろん、演じる側も役作りや台詞を覚えるといった準備を万全にしておかないと、良い結果は得られません。準備は大変ですが、それが活きて順調に進んだ時って、嬉しいものですよね。
猪原 そうですね。どんな仕事にも楽なものなんてないと思いますが、特に建築関係の仕事は、現場仕事だけに、肉体的にも大変な部分があります。しかし、常に改善や自己研鑽が求められますし、楽しい仕事でもあるんですよ。たとえば、耐震強度の増強工事を行うには、最新の情報や技術だけではなく、関連資格の取得なども必要となります。努力を続けることは、楽ではありません。けれど、目標を達成した時や工事が完了した時の達成感は大きく、特に独立してからは、より強い充実感を覚えるようになりました。
大西 より良い結果を出すために、日々努力が必要とされる─その点において職業の別などありませんね。最後に、今後の展望をお聞かせください。
猪原 今後も、人と人とのつながりを大切にし、業務に取り組んでいきたいと思います。人員の増員を図ると同時に、人材育成にも注力し、お客様に安心していただける工事を追求する所存です。
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