明和印刷 株式会社
代表取締役社長 横山 満

目に見える結果を求めるのではなく
一度決めた信念を貫き続けることが大事

■昭和27年の創業以来、グラビア印刷に特化し、安定的な経営基盤を築きあげてきた『明和印刷』。2代目となる横山満社長も、印刷業界一筋に歩んできた大ベテランであり、業界内からの信頼も篤い。そんな社長に女優の大沢逸美さんがお話を伺った。

創業以来、独自の分野に特化して
時代の荒波を乗り越えてきた老舗企業

大沢 こちらは長く続く企業だそうですね。ご創業はいつごろなのですか。

横山 昭和27年に私の父が創業しました。当時は特殊技術であったグラビア印刷が生まれたころでして、当社もそれに特化する形で事業をスタートしたのです。その後、技術の発展と共に会社も成長してきました。

大沢 では、社長ご自身は小さいころからお父様の背中を見て育たれたのですね。そのお仕事ぶりが子ども心に魅力的に映り、後継を決意されたのですか。

横山 その全く逆です(笑)。幼いころはこの仕事が嫌いで、絶対に就きたくないと思っていました。ですから学校を卒業して家業に入った当時は「仕方なく」という気持ちが強かったのですよ。けれど実際に仕事を始めてみると、思っていた以上に奥が深く、徐々にのめりこんでいきました。そして気が付けば、還暦を迎えた今日までこの道一筋に歩んできたのです。

大沢 バブル期やその後の不況も経験されてきたことと思いますが、印刷業界の変遷はいかがでしたか。

横山 やはりバブル崩壊後に、これまでと一転して業界全体の勢いが衰えましたね。しかし私どもの場合は、以前からグラビア印刷という特殊な分野に特化してきましたので、それが幸いしてあまり大きな影響を受けることはありませんでした。

大沢 堅実な経営を行ってこられたことが窺えます。

横山 大きな飛躍を望まず、地道に歩んできたことが功を奏したのでしょう。ただ、扱う商品の形態は時代と共にずいぶんと変わってきました。当初はキャンディーの包み紙などのセロファン印刷が主流でしたが、今はペットボトルの肩口に付けるラベル印刷が多いですね。また、シュリンクフィルムと熱転写フィルム印刷も手掛けており、それらの需要も高まってきています。

万全の設備を整え
最高のクオリティを実現

大沢 多様な印刷を手掛けておられるそうですが、それに応じて設備を備えることも大変でしょう。

横山 そうですね。しかし品質を左右することになりますから、設備投資は惜しみません。当社では、通常の印刷会社は持っていないような検査用の機械まで備えているのですよ。研究室を持っている大企業が、よく自社で品質のチェックをしておられますが、当社でもそれと同等のことを行っています。ですから皆さん驚かれますね。

大沢 徹底した品質管理が、これまで培ってこられた御社の伝統なのですね。ところで、従業員の方々は何名ほどいらっしゃるのですか。

横山 約30名です。品質検査や細かい製袋作業まで行いますので、従業員の力が事業の要。ですから当社は不況下のどんなに苦しい状況においても、一度も人員削減を行ったことはありません。資金繰りが厳しくなるのは経営者の責任ですから、その際は何よりもまず自分の給料を下げて対応したいと思っています。

「継続は力なり」の精神で
誠心誠意の歩みを続ける

大沢 お仕事においての、社長のモットーをお聞かせ下さい。

横山 「継続は力なり」です。たとえ目に見えて分かるほどの結果がすぐに出ずとも、とにかく続けることが大事。もちろん、続けられる仕事かどうかの判断も大切ですが、一度やると決めたことはとことん貫き通すのが筋だと思います。そうしてこれまで歩んできた結果、今では業界内の組合などでも要職を務めさせて頂けるようになりました。地味なモットーかもしれませんが、そうした着実な努力が実って、周囲から信頼を寄せて頂けるようになったのだと感じています。

大沢 含蓄のあるお言葉です。その精神は、後進たちにも伝えておられるのでしょうね。

横山 ええ。あまり口うるさく言うことはありませんが、息子たちを含め従業員には誠意を持って仕事に臨んでほしいと話しています。

大沢 ご子息もご一緒に働かれているのですか。では後継者問題もなく将来も安泰ですね。

横山 嬉しいことに、私と違って自ら「家業に入る」と言ってくれましてね。娘も含め、4人のうち3人が当社で働いてくれており、大変嬉しく思っています。後継者がいないと嘆く経営者が多い中、本当に幸せなことだと感じます。

利益を出し続けるのを企業の使命とし
時代のニーズに応え続ける

大沢 では最後に、今後の抱負をお願いします。

横山 今後も安定した経営を続けていきたいと思います。納税や従業員達の生活を守るためにも、企業である限り利益を出し続けることが義務だと考えていますから。もちろん無茶な儲け話に走るつもりはなく、ただこれまで通り、誠実に完璧な仕事を全うしていく所存です。そしてお客様の要望に細かく応えていきながら、時代のニーズを追いかけていくつもりです。

業界の歴史と共に…

▼『明和印刷』が創業以来、得意としてきたグラビア印刷。これは凹版印刷の一種で、原版のインクの付く部分が彫り込まれているタイプの印刷方式であり、写真画像の印刷に適している。同社はまだこの技術が世に出始めたころから着眼し、その発展と共に成長してきたのだ。そう言われても一般の人にはイメージが湧かないかもしれないが、よく手にするペットボトルに付けられたラベルには馴染みがあるだろう。それらの印刷を、同社が手掛けているのだ。その他ビニール袋や様々な販促物の印刷も手掛けており、同社の仕事ぶりは色々なところで目にすることができる。
▼技術力に定評があるだけでなく、業界内でも信頼の篤い『明和印刷』。それは、横山社長をはじめ、従業員全員が誠実な姿勢で仕事に臨んでいるからだ。社長は、仕事におけるモットーを「目に見える結果を急いで望むのではなく、一度決めた信念を貫いて継続していくことが大事」だと語る。その精神は社内に浸透し、一つひとつの作業が丁寧、かつ確実に行われているからこそ、同業者からの評価も高いのだろう。
▼創業から約60年の歴史をもつ同社だが、今後は社長のご子息たちをはじめとする後進育成にも励み、新たな歴史を紡いでいくという。社会ではデジタル化が進んでいるが、紙媒体などの印刷物がなくなることはない。今後も同社は、印刷技術の発展と共に着実な足取りで成長し続けていくことだろう。

対談を終えて

「『もともとは仕方なく始めた仕事だったのですよ』と笑いながら語って下さった横山社長。けれど、お仕事のことを話されている口調からは、この道のプロとしての誇りが窺えましたよ。今の若い人たちは仕事にすぐ飽き、職場を変えることを何とも思わないそうですが、社長の言葉通り『継続は力なり』。続けているからこそ見えるものがあると思います。私も心機一転、身を引き締めて頑張ろうと思いました。(大沢逸美さん・談)」


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