立山ケース 株式会社
代表取締役 加門 昇る

数十社で得た経験をもとに、2002年『立山成工』を立ちあげ、独立。さらに翌年に『富山ケース』を設立し、2004年に両社を合併し社名を『立山ケース』に変更。常に積極性を忘れず、逆転の発想で新たなスタイルを提案しており、その斬新な企画力には定評がある。

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半導体工場向けのICトレイ、チップトレイの設計製造販売を手掛ける『立山ケース』。新設した工場では、クリーンな環境で作業を行うことで、製品の無洗浄化を実現。コスト削減、納期短縮という大きなメリットを生み出し、顧客からも好評を博している。業界のトップを目指す加門社長にお話を伺った。

村野 まずはこれまでの経緯から。

加門 40社以上の製造会社で経験を積んだ後、2002年に独立。最初は50坪程度の工場で事業を開始しました。その後、大手メーカーとのつながりが生まれ、それをきっかけに多数の半導体メーカーと取り引きさせていただくように。2004年には社名を変更して『立山ケース』として再スタートを果たし、翌年には新工場を設けることができました。

村野 それでは、具体的な事業内容を。

加門 プラスチック製容器製造業を手掛けており、半導体工場向けのICトレイやチップトレイ、つまりチップの容器を設計製造販売しています。一般的には、チップトレイは成形した後、洗浄メーカーに委託し、洗浄してから使用します。しかし、当社では、工場内を常にクリーンな状態に保つシステムを確立しているため、出来上がった製品には洗浄の必要がないんですよ。

村野 洗浄の工程が省けるため、大きなコスト削減になりますね。

加門 コスト削減だけでなく、納品までの期間を短縮できるのも大きなメリットですね。この無洗浄システムは当社独自の取り組みなんですよ。

村野 新しいことに挑戦するという、社長のものづくりへの熱意を感じます。

加門 単に設備投資をするだけでは他社との差別化は図れないと考えています。必要なのは、「究極を追求すること」。常に完璧を目指すことで、多くの人から求められるものづくりができるのです。

村野 その他にも、御社ならではの取り組みがあれば教えてください。

加門 当社では、残業をしないようにしています。残業中は集中力を保つのが難しくなりますからね。そもそも残業が必要ということは、人が足りないからだと考えており、それならばスタッフを増員し、また設備投資を積極的に行うなど、環境整備に力を入れることを優先すべきなんです。その他にも、原価計算表などの数字を元に、どの工程に負担がかかっているのかを分析し、そこから改善策を検討するという方法を創業当初から採用しています。

村野 現場の状況を把握した上で工場の改善を図っていらっしゃるのですね。

加門 無駄を省き、コストを削減するのは簡単なことではありません。それを可能にするには、現場の声が不可欠になります。ですから当社では、よりよい工場を造り出すために、管理職からではなく、まずは現場からの声を第一としています。当社のカギを握っているのは、検査員や仕上工など、現場で働くスタッフたちなんですよ。

村野 現場の意見が反映されることが、スタッフの方たちの大きな意欲につながっているのでしょうね。それでは今後の展望については、どのようにお考えですか。

加門 これからは全国展開していきたいと考えています。無洗浄システムを採用している会社はすでに何社かありますが、当社はその中でもナンバーワンの技術を持っているという自負があります。今後もさらに究極を追求し、全国展開という目標を達成させたいですね。

村野 後継者はすでに決まっているのですか。

加門 現在、息子が常務として頑張ってくれており、若い世代も意欲的に業務に取り組んでくれています。次世代に会社を引き継ぐためにも、経営状態を安定させておくことが課題です。ただし、会社が安定しているからといって、ぬるま湯につかっていては会社としての成長は望めません。「やるからには一番になる」という意欲を忘れないで欲しい。一番を目指す気持ちがなければ、業界のトップクラスに入ることはできませんからね。

村野 更なるご活躍が期待できますね。

加門 ありがとうございます。しかし、いくら売上が高くても、利益を上げなければ会社として継続することができず、地域に貢献することもできません。売上や会社の規模拡大に重点を置くのではなく、効率的な体制を整えることで利益を上げることに尽力し、地域に貢献できる会社を目指していきます。

村野 私も応援しています。

普遍的な技術を生み出す

▼『立山ケース』の代表取締役として活躍する加門氏。氏は製造業に携わる前は、料理人として修業を積んでいたという。全くの異業種であるが、「料理の世界に終わりはなく、常に完璧を目指している。究極を追求することで成長していく過程は、製造業に共通しています」と氏は語る。「一口食べておいしい料理というのは、意外にたくさん食べられない。逆にたくさん食べられる料理とは、かみしめるほどに徐々に味わいが広がっていくものです」とも。製造業でも同様に、一部で必要とされる特殊な技術と、全国的に広がり、普遍的に求められる技術があると加門氏は考えている。飽きのこない、長く親しまれるものづくりを実現させるには何が必要か──。それを追求することが、氏のものづくりの姿勢なのだ。
▼氏は設備投資を行う際も、常に新しいことに取り組んできた。その結果、クリーンな環境から製品を生み出す、無洗浄システムを確立させ、多くの半導体メーカーとの取り引きを実現。全国展開の目標も、きっと実現してくれることだろう。

対談を終えて

「かつて料理人として活躍されていたという加門社長。常に上を目指す姿勢は、製造業にも共通しているという考えに、ものづくりに携わる、“職人”としての意気込みを感じました。さらに、製造業で40社以上におよぶ企業で経験を重ね、そこで培ってきた技術を駆使し、『立山ケース』を創業。無洗浄システムを確立させるなど、社長の手腕には、感服いたします。これからは全国展開に取り組まれるとか。さらなるご活躍を期待しています(村野 武範さん・談)」


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