吉沢 早速ですが、院長が医療の道に進まれたきっかけからお聞かせ下さい。
井田 親が薬剤師として病院に勤務していたこともあり、医療の道へ進む将来を自然と意識していました。
吉沢 独立以前は、どちらかに?
井田 ええ。熊本大学付属病院、故郷の北九州市の関連病院で2年間研修。終末期医療を福岡県の病院で学び、ハワイで在宅ホスピスについて3ヵ月間研修しました。ホスピス緩和ケアの施設を準備するイエズスの聖心(みこころ)病院より招聘を受け、約12年間勤務しました。
吉沢 院長は、勉強熱心でいらっしゃるのですね。今でこそ、ホスピスという言葉も浸透していますが、当時はまだ終末期医療の創世紀だったのでは。
井田 そうですね。現在は全国にホスピス緩和ケア病棟は約150ヵ所あります。熊本市の聖心病院は九州で2番目、全国で15番目に専門病棟を開設した病院でした。私の専攻は、もともとは産婦人科でした。患者さんの中には、悪性腫瘍でつらい思いをして、亡くなられた方々がいました。担当医として、苦しみを和らげ、いのちを支える医療を学びたいとの考えに至りました。そこで、産婦人科で7年間研鑽した後、ホスピス緩和ケア(終末期医療)の医師をめざしました。
吉沢 なるほど。終末期医療とは、患者さんはもちろんご家族の方々に対して、気遣いが必要ですよね。
井田 ええ。病室でもご自宅でも、患者さんの傍らには、ご家族がおられます。患者さんとご家族、両者のケアや気配りが必要になります。症状が進むにつれ、患者さんはもちろんご家族の心労や不安も大きくなるからです。当事者の本当の気持ちは当事者にしか分かりませんが、一人ひとりの患者さんと向き合うことが大切だと思います。今後に活かせるものを学ばせて頂く機会でもあります。
吉沢 自宅療養を在宅ホスピス緩和ケアで積極的にサポートされているとか。
井田 はい。熊本県で初の在宅ホスピス緩和ケアに専従する診療所です。近頃は自宅療養の希望者が多くなっています。入院中と同じ症状緩和が提供できるよう態勢を整えています。医療チームは医師2名、看護師3名です。24時間いつでも訪問は可能で、緊急時は連携医療機関に入院できます。患者さんの希望する生き方が家族と医療者に支えられると自宅の生活には大きな安心感があるようです。
吉沢 最後に今後の抱負を。
井田 患者さんは十人十色。正しい答えは1つではありません。患者さんが何を願っていらっしゃるかを汲み取り、ご家族とも意思疎通を図って信頼関係を築いていきたいですね。また我々の仕事は、いつの時代も必要とされる仕事。後進の育成にも力を注ぎたいと考えています。
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