佐藤 御社は電気通信工事を手掛けていらっしゃるそうですが、まずは社長の足跡からお聞かせ願えますか。
廣中 生まれも育ちもこちら福岡です。20歳のときに通信業界に進み、クエートや中国などの外国で通信網の整備に当たったこともあるのですよ。通信網が整備されていない国は政情が不安定で、クエートに行った際は湾岸戦争の1週間前に帰国しましたし、ヨルダンで作業に当たっているときは戒厳令が敷かれていたため装甲車に銃口を向けられたこともありました。元々独立したいという思いを持っていましたので、33歳のときに退社して起業。1人でスタートを切り、徐々に人員を増やしてきました。現在、社員15名、契約スタッフ約55名で作業に当たっています。
佐藤 通信業界は、光ファイバーが登場するなどここ数年で目覚ましい進歩を遂げているだけに、新しい技術を習得しなければならないなど大変ですね。
廣中 通信業界は身に付けなければならない技術がたくさんありますし、それぞれ覚えるのに時間がかかります。ですが、覚えなければ何もできず、業界で生きていけません。ただし、本人のやる気さえあれば誰でもやっていけます。若い子の多くは夢を持っていませんが、我々大人が夢を与えてあげなければならないと思うのです。1日に1個ずつ技術や知識を覚えれば1年間で300個。しかし、そのうち100個ぐらいは忘れるでしょう。ですが、それを5年間続ければ1000個は覚えられます。20歳で通信業界に進んだ子が、5年経って25歳になったときには立派な技術者に成長しているのです。漠然と働いてきた子とは雲泥の差。そのことを分かりやすく教えてやるのも私どもの務めだと思います。40年間働くとして、最初の5年間に苦労すれば一生その技術で食っていける、そう考えればやる気も出てくるでしょう。
佐藤 なるほど、ものは考えようですね。
廣中 最近は若者の犯罪が多発していますが、最も吸収できる時期を無駄に過ごすのはもったいないことです。一生懸命何かに打ち込んでいれば、悪いことをしようなどと考える暇はないはず。そういった話を若い子にすると、「もっと早く社長と知り合っていれば、無駄な時間を過ごさずにすんだのに」と言ってくれます。若手スタッフのモチベーションを高めるためにも、こういった話をしているのですよ。
佐藤 やはり働くうえで目標を設定し、それに向けてやる気を喚起させることが大事なのでしょうね。
廣中 そうですね。やらされていてはだめで、やはり自主的に動くことが大切です。嫌々しても伸びません。好きだと思うから伸びるのだし、前向きに取り組めるのです。
佐藤 となると、人材育成にも力を入れていらっしゃるのでしょうね。
廣中 ええ。通信業界は工事を手掛ける「人」が商品。人材ではなく、「人財」なんです。安全かつ迅速・丁寧に工事を手掛ける人財を1人でも多く有することが必要不可欠ですから、人財育成には力を入れています。
佐藤 今後の展望についてはいかがお考えでしょうか?
廣中 当社は某通信大手企業の仕事も手掛けているのですが、そちらはグループ会社が約800社あるそうです。それほどの数とはいかないまでも、規模は小さくても構わないのでグループ会社をたくさん立ち上げたいと考えています。そうすれば優秀なスタッフに経営者として頑張ってもらえるでしょう。具体的な目標があればモチベーションは高まりますし、経営者となった後はそれぞれが責任を持って必死に頑張ってくれるはずですからね。
佐藤 本日は熱いお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。これからもますます頑張ってください。
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