有限会社不動衛生サービス/オリジナルニットLAPLASS
代表取締役 岩井 松巳

  

埼玉県春日部市出身。法政大学卒業後、春日部市役所に勤める。7年間の公務員生活を経て、平成7年に妻の実家が経営する「(有)不動衛生社」に転職、し尿汲み取りや浄化槽の洗浄サービスなどを手掛けることに。その後、「(有)不動衛生サービス」に改称し、社長職に就任。

●仕事に対する誇りを継承する

現在、岩井社長は娘婿と一緒に働いているそうだが、まだ入社したばかりの娘婿に教えなければならないことは山ほどあるという。「我々が働く姿を見て、多くのことを学んでほしい。そして何よりもお客様あっての商売であり、基本となるサービス精神を忘れずに日々の業務に臨んでほしい」とメッセージを投げ掛ける岩井社長。仕事のやり甲斐、そして誇りを次世代に伝えていく構えだ。

……………………………………………………………………………

し尿汲み取りや浄化槽の洗浄サービスを提供している「(有)不動衛生サービス」。華やかな仕事ではないが、市民生活においてなくてはならない大切な仕事を担っている。本日は俳優の佐藤蛾次郎氏が同社を訪れ、岩井社長にお話を伺った。

佐藤 ご出身はどちらですか?

岩井 埼玉県春日部市です。大学進学を機に上京しましたが、卒業して再び戻ってきました。建築学を専攻していたので大手ゼネコンに就職して何か建物を造りたいと志していた時もありましたが、本当にやりたいものが分からず、春日部市役所に入りました。基本的には地元で市民のために働くことが一番私に向いていると思ったのですよ。

佐藤 卒業後、最初に就いたご職業は公務員だったのですね。

岩井 ええ。ただ働いているうちに、将来について疑問を持つようになったのですよ。確かにやりがいのある仕事ですし、安定もしています。ですがこのまま定年まで勤めてどうなるのか? このまま終ってしまって良いのか? という気持ちが湧いてきたのです。そんな時に家内と出会いました。

岩井(万) 私は保険の外交員をしていて市役所に出入りをしていたのですよ。そんな時に主人と出会って結婚することにしました。

佐藤 こちらの会社は奥様のお父様が創業されたそうですね。

岩井(万) ええ、40年ほど前に祖父が事業を興し、父が当社を創立して約10年になります。この地域では古参のし尿汲み取り業者で、皆さんからの信頼も篤いのですよ。

岩井 先代社長である家内の父が体調を崩したことから、私に声が掛かったのです。先代社長には後継者がいなかったため、娘婿の私に会社を任せようと思われたみたいですね。

佐藤 それはいつ頃ですか?

岩井 平成7年から正式にこちらの社員として働くようになりました。当時はまだ「(有)不動衛生社」という社名でしたが、私が移ってから「(有)不動衛生サービス」と改称しました。

佐藤 地元でも老舗の会社として有名ですから、2代目を引き継ぐことに対してプレッシャーもあったでしょう。

岩井 ええ、この辺りで知らない人はいないぐらい有名な会社ですから、変なことはできないぞ、という緊張感がありました。ですが家内が後押しをしてくれたので、思い切ることができたのですよ。

佐藤 公務員から全く畑違いのこの業種へ移り、戸惑いはなかったですか?

岩井 右も左も分からないまま現場に出ていたというのが正直なところですね。ですが、先代は体調を崩していたにもかかわらず、私が入社した頃は助手席に乗って色々なことを指示してくださったのですよ。義父がこの仕事の面白さを教えてくれました。

佐藤 大変なお仕事だと思うのですが、充実した日々を送っておられるご様子で。

岩井 ええ、し尿汲み取りと言えば誰もあまりやりたくないでしょう。しかし、だからこそこの仕事の奥深さを感じます。非常に面白いですよ。

佐藤 最近は下水道が完備され水洗トイレが普及してきましたが、いかがです?

岩井 市場としては年々減ってきているのが現状です。水洗トイレが普及しつつあったため、私がこの会社に入った頃にはし尿汲み取りから徐々に浄化槽の洗浄サービスにシフトしていました。ですから現在は浄化槽の洗浄をメインに行っているのです。方法としては、し尿や汚泥をバキュームカーで汲み取って、浄化します。し尿汲み取りなどに比べて浄化槽の洗浄にはかなり高度な技術が必要なのですよ。ですからこの技術を活かして生き残りを図っていきたいと考えています。

佐藤 では、奥様からご覧になって岩井社長はどのような人物ですか?

岩井(万) 本当に腰が低くて物腰の柔らかい人なのですよ。常にお客様のことを考えていましてね。マンホールの蓋まで美しくするのですから、頭が下がります。

佐藤 汚い場所を美しくできるという人は本当に偉いですよね。家が一軒建つと7人の神様が住みつくそうです。最後に来る神様がトイレの神様で、トイレを美しくしておくとその家は繁盛するのだとか。うちでは家長である私がトイレ掃除を率先してやっています。そういう心がけが大切だと思いましてね。それでは、お仕事をされていく上での心構えを教えてください。

岩井 何よりも現場が大事。きれいにした現場を見られた方から次の仕事を戴けるよう心がけています。

佐藤 今後は何か新しい事業展開を考えておられるのですか?

岩井 下水道も完備され、市場は減っていますが、水処理に対する皆さんの意識は非常に高まっています。ですから市場が減っていく中でどのような水処理技術を提供できるかがこれからの課題になってくるでしょう。例えば、トイレなどの排水トラブルがあればすぐに駆けつけるサービスも必要でしょうし、ビルやマンションの配水管のメンテナンスもこれからは増えていくでしょう。そういった仕事についても視野に入れて、仕事の幅を広げていきたいですね。技術的にはこの地域で一番だと自負していますから、技術力を活かしてより良いサービスを提供していくつもりです。

佐藤 最後に夢を聞かせて下さい。

岩井(万) 主人が、頭の中にある構想を実現していくうえで、できる限りサポートをしていきたいと思っています。その中で自分の余暇も大切にし、充実した生活を送りたいですね。

岩井 世代交代をした際にお客様から「今まで来てくれた人にお願いしたい」という声をよく聞きます。それだけうちのスタッフが丁寧な応対をしているということでしょう。嬉しいことですね。お客様の期待を裏切ることのないよう、これからも社員一同力を合わせて頑張っていきたいです。

「誰かのために働きたい」という熱い思い

▼大学を卒業して岩井社長が最初に勤めたのは春日部市役所でした。公僕として市民の役に立ちたいという思いが市役所に勤めた動機だったとおっしゃいます。そんな岩井社長が第2の職業としてし尿汲み取り業、浄化槽洗浄業に就いたのは9年前のこと。腰が低くて非常に思いやりがあると社長を評価する奥様。「いつもニコニコ笑っていますし、素直に『ありがとうございます』という言葉が出てきます。こんな人でなければこの仕事は務まらないでしょう」と話してくださいました。一生懸命お仕事に打ち込まれている岩井社長を陰からサポートしていらっしゃる奥様。社長のお仕事を手伝いながら、ご自分でもオリジナルニット商品を販売するネットショップを運営していらっしゃいます。「手編みが好きで編んでいるうちに商売になってしまいました。このネットショップが成功してくれると嬉しいです」とのこと。
▼現在は後継者候補である娘婿も入社し、地盤を固めつつあるそうです。これからも市民生活を支えるために頑張ってくださいね。

本記事及び掲載企業に関する紹介記事の著作権は国際通信社グループに帰属し、記事、画像等の無断転載を固くお断りします。Copyright (C) 2005, Kokusai-Tsushin Co., Ltd.